「なんとなく変だ」が言葉にならない。仮説が出てこない本当の理由【あなたの仮説が会議で通らない本当の理由#2】
会議中、こんな経験はありませんか。
「この提案、何か違う気がする」
そう感じているのに、言葉が出てこない。
「どこが、どう違うのか」を聞かれると、途端に黙ってしまう。
あるいは、部下が持ってきた資料を見て「これじゃない感」がある。
でも何がどう違うのか、うまく説明できない。
結局「もう少し考えて」とだけ言って、返してしまう。
これは、あなたの語彙が少ないわけでも、頭の回転が遅いわけでもありません。
プロセスが一つ、抜けているだけです。
「言語化できない」の正体
多くの人が、こう思っています。
「言葉を知らないから、言語化できない」
「ボキャブラリーが足りないから、うまく説明できない」
だから、本を読んだり、フレームワークを覚えたりしようとする。
でも、それで解決しない。
なぜか。
言語化できない本当の理由は、語彙ではなく「観察が足りないから」です。
言葉は、観察の後にしか生まれません。
「この線が太すぎる」という言葉は、細い線と太い線を見比べた後に出てくる。
「この提案は目的がずれている」という言葉は、本来の目的と提案を見比べた後に出てくる。
比較する前に言葉は出てきません。これは語彙の問題ではなく、順番の問題です。
なぜ「観察」が足りなくなるのか
では、なぜ観察が足りなくなるのか。
答えはシンプルです。
「比較対象」がないからです。
書道の練習を思い出してください。
手本があります。自分の書いた作品があります。
この二つを並べて見るから、差が見えます。
「ここの払いが短い」
「この文字だけ重心が右に寄っている」
「墨の濃さが手本より薄い」
手本という「あるべき姿」があるから、現状との差が見える。差が見えるから、言葉が出てくる。
ビジネスでも全く同じことが起きています。
「あるべき姿」が曖昧なまま、目の前の資料や提案を見ても、何と比べればいいかわからない。比べられないから、差が見えない。差が見えないから、言葉が出てこない。
「なんとなく変だ」で止まってしまうのは、この状態です。
「差が見えない」から「仮説が立たない」
ここで、仮説思考の話につながります。
仮説とは何か。
一言で言えば、「差の原因の説明」です。
「手本より払いが短くなっている(差)。筆を抜くタイミングが早いからではないか(原因の仮説)」
「この提案はトラフィックは増えるが購買につながらない(差)。ターゲットのニーズと商品がずれているからではないか(原因の仮説)」
差が見えていなければ、仮説は立てようがありません。
多くのビジネス書が「仮説を立てろ」と言います。でも「どうやって」の部分が抜けている。仮説を立てるためには、まず差を見なければならない。差を見るためには、あるべき姿と現状を比較しなければならない。比較するためには、あるべき姿を明確に持っていなければならない。
この順番を飛ばして、いきなり「仮説を立てろ」と言われても、出てくるわけがないのです。
訓練で補えるもの
ここまで読んで、こう思った方がいるかもしれません。
「あるべき姿を明確にする、というのが難しいんだよ」と。
その通りです。これは才能ではなく、訓練の問題です。
書道が優れているのはここです。
手本が必ず存在します。あるべき姿が、紙の上にはっきりと見えます。だから迷わない。「この字の、このハネと、自分のハネを比べる」という訓練が、毎回確実にできます。
これを繰り返すうちに、「あるべき姿と現状を比較する」という思考の動きが、身体に染み込んでいきます。
書道の練習で身につくのは、きれいな字を書く技術だけではありません。「差を見つけて言語化する」という思考のクセです。
これが、仕事の場面でも自然に動くようになる。会議で「なんとなく変だ」と感じたとき、「あるべき姿は何か」「現状は何か」「どこがどう違うか」という問いが、意識しなくても頭の中で動き始めます。
次回予告
次の記事では、観差思考の6ステップを具体的に解説します。
書道の練習プロセスをそのままビジネスに転用する方法を、実際に手を動かしながら体験できる形でお届けします。書道をやったことがない方でも、今すぐ使えるように書きます。
「考える力は、訓練でつく」——その具体的なやり方を、次回お伝えします。
翠kei(書道師範×WEBディレクター・PM)
💡この記事は、マガジン「観差思考・実践編|仮説を言語化する技術」にまとめています。続きはこちら→
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