「経理歴10年」の私が、ただの入力作業者だと絶望した日。マニュアルの罠と本当の成長
「派遣スタッフとして、経理を10年やってきました」
以前の私は、経験年数を自信にしていました。
どの現場に行っても、渡されたマニュアル通りに素早く正確に処理をこなせる。
それが私の強みだと思い込んでいたのです。
しかし、その自信はあっけなく崩れました。
ある日、派遣先の企業に新しい会計システムが導入され、私が毎日行っていた「経理作業」が自動仕訳に置き換わったのです。
「自動化によって業務がなくなりました」と告げられ、私の派遣契約は終了しました。
「私の10年間のスキルは、システムであっさり代替されるものだったのか」
大きなショックを受けました。
次の現場を探す中で、私はRSTANDARDのスタッフとして新しい就業先で働くことになりました。
そこで初めて、自分がなぜシステムに代替されるスキルしか持っていなかったのか、その理由に気づかされたのです。
「数字のチェック」と「仕訳のチェック」は全く違う
以前の職場では、常に分厚い作業マニュアルが用意されていました。
「この請求書が来たら、システムを開いて、この勘定科目を選んで、金額を入力する」
私はその手順に従い、一心不乱にキーボードを叩いていました。入力後のチェックも欠かしません。
請求書の金額と入力した金額が合っているか、桁間違いはないか。
勘定科目はあっているか。
私は完璧に仕事をしているつもりでした。
しかし、新しい現場で業務の全体像(フロー)を教えられたとき、自分の過去が単なる「タイピングの答え合わせ」に過ぎなかったことを思い知らされました。
私は取引の背景やお金の流れを全く理解していませんでした。
だからこそ、「なぜその勘定科目になるのか」「なぜその消費税区分になるのか」という、仕訳そのものの妥当性をチェックすることは、一度もできていなかったのです。
例えば、システムの保守契約で1年分の保守料を前払いしたとします。
マニュアル通りに「前払費用」として計上し、金額が合っているかを確認するだけなら、それは「数字のチェック」に過ぎません。
しかし、実際には毎月一定額を「修繕費」や「保守料」として費用計上していく必要があります。
この費用化のタイミングで、消費税の控除時期や区分を正しく判断しなければなりません。
単に前払いした時点で処理を終わらせてしまうと、誤った会計処理につながる可能性があるのです。
私がやっていたのは、機械でもできる「文字の転記と一致確認」だけでした。
「点」の作業者から、「線」の実務家へ
マニュアルという「点」しか見えていなければ、数字の異常値やイレギュラーな事象に気づくことはできません。
言われるがまま入力するだけの作業者だったからこそ、システムが導入された瞬間に不要になってしまったのです。
新しい現場で私は、初めて「フロー(線)を理解することの重要性」を実感しました。
前工程で営業がどんな意図でこの数字を上げているのか。
後工程でこの仕訳がどう決算書に影響するのか。
点と点が繋がり、取引の全体像が見えた瞬間、初めて「この処理の消費税区分はおかしい」と、根拠を持って仕訳をチェックできるようになったのです。
経験年数を捨てて手に入れたもの
「システムに負けた10年間」という事実を受け入れ、作業者としてのプライドを捨てるのは、簡単なことではありませんでした。
それでも、マニュアルに依存せず、自らフローを理解し、自分の頭で判断する訓練を繰り返した結果、私は単なる入力作業を卒業しました。
現在では、月次決算における試算表の作成までを任せてもらえるようになっています。
作業マニュアルだけで完結する仕事では、決して辿り着けなかった場所です。
曖昧な経験年数をただ重ねるのではなく、自分の現在地を正しく見つめながら、確かな実装力を手に入れていく。
不器用な私の挑戦は、ここからが本当のスタートです。
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