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ワイドパンツの流行は終わってしまうのか

ファッションには、不思議な法則があって
「もう終わる。」と言われたものほど、案外しぶとく生き残る。

デニムもそう。
スニーカーもそう。
ロゴブームもそうだった。

そして今、その矢印はワイドパンツへ向いている。


ここ最近、パリやミラノのコレクションを見ていると、確かに空気が変わってきた。

数年前までは「とりあえず太くしておけばいい」と言わんばかりに、どのブランドもワイドシルエットを打ち出していた。

パンツは太いほど良い。
細身は時代遅れ。

そんな空気さえあったが、今季は違う。

少しずつ裾幅は細くなり
ついにはスキニーがランウェイに戻ってきた。

「あのスキニーが?」

そう思った人も少なくないだろう。男の嫌いな服装ランキングの四天王に君臨する絶対的破壊神のスキニー君が、ランウェイで暴れ散らかしていればびっくりするのも無理はない。

「足のラインが出るから嫌。」
「ピチピチで恥ずかしい。」

そんな声を何度聞いてきただろう。
だからこそ面白い。

ファッションは、誰も予想しない方向へ進む。流行とは、「みんなが飽きたもの」を終わらせることではなく、「みんなが見慣れた景色」を壊すことだと思うのだ。


じゃあ、ワイドパンツは終わるのか。

僕の答えは、「終わらない」だ。
というより、「終われない」んだと思う。

実は僕自身も変化を感じていて、去年くらいまでは「パンツなんて太ければ太いほど格好いい」と本気で思っていた。

パンツを買うときは股下よりも、もも周りや裾幅を見て買うことが多く、太さを求めてジャングルの奥地まで出向くこともあった。

でも今年に入って、細身を履きたい気分になり、ストレートパンツを探すことが多くなった。鏡の前で、「今はこのくらいがちょうどええなぁ」と思うようになった。

だからといって、ワイドパンツを捨てたわけじゃない。今でも普通に履くし、その度「シルエットは、ほ〜んとにグンバツ(抜群)だわ〜♡」と思う。

ただ、僕の気分が少し変わっただけ。あと、街を歩けばみんなワイドを履いているから、差別化したかったってのも正直な意見かな。


そもそも、ワイドパンツは
一本のトレンドだけでは終われない理由がある。

ワイドパンツは、僕たちを救ってしまったからだ。

脚が太くてもいい。短足でもいい。
体型に自信がなくても、それっぽく見える。

ワイドパンツは、そんな胴長短足の僕たちに救いの手を差し伸べてくれた。

「体型を隠しながら、おしゃれを楽しめる」

その価値を知ってしまった僕たちが、いとも簡単にワイドパンツを手放すことができるだろうか。

一度覚えた便利さは、なかなか忘れられない。

スマホがガラケーに戻らないように。
キャッシュレスを知った人が現金生活に戻れないように。

ワイドパンツもまた
ファッションの「便利」になってしまった。

だから今後も消えることはないと思う。


ファッションはいつだって振り子だ。

太くなれば、細くなる。
細くなれば、また太くなる。

ずっと同じ景色では、誰もワクワクしないし周りと違うコーディネートこそ脳汁ドバドバのエクスタシーを感じるのだ。

でも、その振り子は昔ほど極端には振れない気がしている。

実際、コレクションを見ても細身を提案するブランドが増えた一方で、変わらず美しいワイドパンツを作り続けるブランドもある。

どちらかを否定しているわけではない。
どちらも提案している。

つまり、「正解が一つではなくなった」ということだ。

細身が主流になるかもしれない。
でも、ワイドが間違いになるわけではない。

その違いは、とても大きい。


思えば、昔のファッションは少し窮屈だった。

スキニー全盛期は、細くなければ格好悪いと言われ、ワイド全盛期は、太くなければ古いと言われた。

でも、本来ファッションは、そんなに不自由なものじゃない気がしている。

今日はストレート。
明日はワイド。
バチバチしたい日はスキニー。

そのくらい自由でいいと思う。

僕もワイドを履くし、細身も履く。スキニーはちょっと怖いからフレアパンツに手を出してみる。流行に敏感で恵まれた体型の人はどんどんスキニーを履けば良いと思う。

選択肢が増えるって良いことだ。


……とは言ったものの、一つだけ現実に戻ろう。
ワイドパンツに慣れきった僕たちにとって、スキニーはなかなか残酷だ。

脚のラインは全部見えるし甘やかし続けたお腹はもう誤魔化せない。

ワイドパンツの中で何年も平和に暮らしてきた脚やお腹たちは、突然、厳しい戦場に送り出される。

想像しただけで半泣き

公開処刑とは、まさにこのことだ。

しかも、日本の夏は容赦がない。

35度を超える炎天下でスキニーを履けば、もはやファッションではなく修行である。焼豚になる未来しか見えない。いっそのこと行列の絶えないラーメン店の名物として一斉を風靡する手もあるな。

そう考えると、日本という気候そのものが、ワイドパンツを履き続ける理由になっているかもしれない。


「ワイドパンツは終わるのか。」
この問いに、まだ誰も正解は持っていない。

でも、一つだけ言えることがある。

流行は、終わるものではない。
流行は、「当たり前」を終わらせるものだ。

だから次の時代は、「ワイドしか履かない人」と「スキニーしか履かない人」に分かれるのではなく、その日の気分で選ぶ人が増えていくのだと思う。

だから、ワイドかスキニーかを決める必要なんて、本当はない。どちらを履くかではなく、どちらを履きたいか。

そんな楽な気持ちでいることが、きっと次の時代のおしゃれを心の底から楽しめるのだろう。

僕は痩せるところからスタートだな。

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