掌編「同じ穴」#536
「おむすびが転がっていく、みたいな童話、あったよな」
「おむすびころりんね」
「そんな直截なタイトルだったっけ。ここ左折か」
「凝ったタイトルの童話の方が珍しいよ」
「あれ、本当に欲深いのは隣じゃなくて、主人公のおじいさんの方だよな」
「なんで」
「穴に落ちたおむすびを、それでも追いかけてる」
「それは、確かにね」
「うん」
「……」
しばらく黙ったのち、井折が助手席で声を上げた。
「で、ほんとにこんな森の中にあるの? 洞穴の中のレストランってのは」
おわり
振り返りのコーナー(#535)
ダジャレの出来はさておいて、会話と地の文の織り込み方がいいですね。スムーズ、スマート、シームレス。
