掌編「お見舞いラフランス」#544
「全治六ヶ月」に対して「あれま」ならわかるが、「会社の人がお見舞いにラフランスを持ってきてくれた」ことに対して「お気の毒に」と顔をしかめるのはどういうことか。
「まだ一個残ってるんだ」
食べようか、といいかけたのを遮って、
「その人、こんな顔して差し出したでしょ」
彼はさらに眉間に皺を寄せる。
「そういえば」腹でも壊したのかな、とは思ったものだが。
「気の毒に」また繰り返す。「まあそんだけ休まれると、ね」
ラフランスかあ、と呟きながら、納得がいかないぼくの顔を見やり、いった。
「用無し、ってことだよ」
おわり
振り返りのコーナー(#543)
少し前に思いついたものの上手く固まらなかったネタ。ふと思い立って書いてみたら、嘘みたいにすんなり行くこともあるみたいです。
