《コドモるこ》 うさぎのぼうし
「るこちゃん。あそぼう。」
扉のむこうから、
コドモるこを呼ぶ声が。
「ひろしくんだ!」
ひろしくんは、
コドモるこのおともだち。
「ひろしくん、おまたせ。」と、コドモるこは、
頭には、うさぎの耳をかたどったぼうしをかぶっています。
「あ、うさぎさんのぼうし。
かわいいね。」
「おかあさんに、買ってもらったの。うさこちゃん
みたいでしょ?」
「うさこちゃん」は、
オランダの絵本作家、
ディック・ブルーナが描いた
うさぎの女の子が、
主人公の絵本。ミッフィーで
おなじみですが、
日本の絵本では、
「うさこちゃん」と
呼ばれています。
コドモるこの家にも、
「うさこちゃん」の
絵本がありました。
お気に入りの1冊で、
何度も何度もくりかえし読んでいました。
そして、じぶんも
「うさこちゃん」になりたいと思うようになり、おかあさんに、うさぎの耳のぼうしを
買ってもらったのです。
「きょうは、
公園であそぼうね。」
公園に着いたところで、
ひろしくんが言うのです。
「あ、やっぱりぼくもぼうしをかぶってくるね。るこちゃんまっててね。」
ひろしくんは、ぼうしをとりに、走っていきました。
《ひろしくんは、どういう
ぼうしかな?》
コドモるこは、公園のベンチに座っていましたが
だんだんとまぶたが重たくなってきました。
「るこちゃん。るこちゃん。」
そう呼ばれ、声の方向をみると、「うさこちゃん」が
立っているではありませんか。
「あっ、うさこちゃん。」
絵本の中と同じ、赤い洋服を着ている「うさこちゃん」。
「るこちゃん。いつも絵本を読んでくれて、ありがとう。
うさぎのぼうしも、すごくにあっているわ。」
「うさこちゃん」は、
あいかわらずちいさい目で、
口はばってん。
でも、とてもやさしい声で、
話しかけてくれたのです。
「うさこちゃん。ブランコに乗ろうよ。」
と、コドモるこが言うと、
「うさこちゃん」は、
「ごめんね。るこちゃんとあそびたいけれど、わたし、
もう行かないと。」と
言います。
「⋯⋯。いっしょに
あそべないの?」
「うん。るこちゃんのように、わたしの絵本をよんで
くれている
おともだちに、お礼をいうために、会いにいくの。
もう行くね。」
そういうと、「うさこちゃん」は、去りかけましたが、
立ち止まり、
「あっ。るこちゃん。」
と、言い
「ねえ。るこちゃん。」
「なあに。うさこちゃん。」
「るこちゃん。笑ってね。
淋しくなっても、
きっと良いことがあるから
⋯⋯ね。」
と、言うのです。
「うん。るこ、淋しくないよ。バイバイ。またね。
うさこちゃん。」
笑顔で、手をふりました。
うさこちゃんも手をふり
ながら、走っていきました。
「ばいば~い。またね~。」
「るこちゃん。るこちゃん。」
またしても、
コドモるこをよぶ声がします。戻ってきたひろしくんでした。野球帽をかぶっています。
「わあ。ひろしくんのぼ
うし、かっこいいね。
いまね、うさこちゃんが
会いにきてくれたの。」
「え~。いいなあ。ぼくも会いたかったな。うさこちゃん。」
ふたりは、ブランコや、
すべり台、回転ジャングルジムなどで、なかよく
あそびました。
「きょうは、
とっても楽しかった。
おうちへ帰ろうか。」
別れぎわ、ひろしくんが
「ねえ。るこちゃん。」
と、なにか言いかけました。「なあに?ひろしくん。」
「やっぱり、なんでもないや。 ばいばい。またね。
るこちゃん」
「ばいば~い。またね~。」
手をふって、ふたりは
別れました。
それが、ひろしくんとあそんだ最後の日になりました。
ひろしくん一家は
遠い町へと、引越して
いったのです。
うさぎのぼうしを
かぶった日、
公園に、うさこちゃんが
現れた。
うさぎのぼうしを
かぶった日、
公園で、ひろしくんと遊んだ。最後の日⋯⋯。
《淋しくないよ。》
「ばいば~い。またね~。」
