制度だけでは届かない若者たちへ。福祉と社会教育で育てる、安心してつながれる地域
私が関わっているNPO法人スマイルリングの活動の中で、胸が締めつけられるような若者たちの姿があります。
夜、遠い道のりを歩いて、その日初めての食事を食べに来る青年。
「昨日は何を食べたの」と聞かれ、「豆腐を焼いて食べました」と答える青年。
孤独な時間がつらく、食事をとるよりも、つい酒を飲んでしまうと話す青年。
そこには、単に「食べるものがない」ということだけでは語れない、深い孤独や生きづらさがあります。
貧困、虐待、家庭環境、孤立、頼れる大人の不在、制度や支援につながることの難しさ。
さまざまな事情が重なり、若者が一人では抱えきれない状況に置かれていることがあります。
それは決して、本人の甘えや努力不足として片づけてよいものではありません。
ご飯を食べられる場所は、心を休められる場所でもある
若者たちが「遊びに行っていいですか」「ご飯を食べに行っていいですか」と連絡をくれることがあります。
用意した食事を嬉しそうに食べる姿。
ほっとした表情で、目の前のご飯を真剣に食べる姿。
そうした姿を目の前にすると、食事を提供することの意味は、空腹を満たすことだけではないと感じます。
「自分を気にかけてくれる人がいる」
「ここに来てもいいと思える場所がある」
「一人で抱えなくてもいい」
温かい食事を囲む時間は、若者たちにとって、人とのつながりを感じ、少しだけ安心を取り戻す時間でもあります。
今日を生きるための食事。
今夜を一人で抱え込まなくてよいと思える居場所。
困った時に声をかけられる大人や仲間。
それらは、若者たちが再び自分の人生を歩んでいくための、大切な土台になるのだと思います。
制度は必要。でも、制度は万能ではない
福祉制度や行政による支援は、子どもや若者を守るうえで欠かすことのできないものです。
困窮や虐待、孤立といった課題に対して、公的な支援の仕組みが果たす役割は非常に大きいものがあります。
しかし、制度には対象や条件、手続きがあります。
必要な支援につながるまでに時間がかかることもあります。
また、制度につながっていたとしても、
「今日、ご飯を食べられているか」
「今夜、一人でつらさを抱えていないか」
「安心して立ち寄れる場所があるか」
という、日々の暮らしの中にある孤独や不安まで、制度だけですべて受け止めきれるとは限りません。
制度は大切です。
けれど、制度は万能ではありません。
だからこそ、制度による支援とともに、地域の中にある人とのつながりや、安心して関われる居場所を育てていく必要があります。
社会教育士として考える、若者と地域のつながり
私は、福祉に関わる立場であると同時に、社会教育士としても地域と関わっています。
社会教育というと、講座や学習会、公民館活動などを思い浮かべる方も多いかもしれません。
もちろん、それらも大切な社会教育の営みです。
しかし、社会教育には、人が地域の中で誰かと出会い、関係を結び、自分の居場所や役割を見つけていくこと。
そして、地域に暮らす人たちが、目の前にある社会的課題を知り、考え、自分たちにできることを行動に移していくことも含まれていると私は考えています。
若者たちが困難を抱えた時、専門的な支援につなぐことはもちろん必要です。
それと同時に、日頃から地域の中に、
「今日どうだった?」
「ご飯を食べていく?」
「また来ていいよ」
と声をかけてくれる大人がいること。
否定せず、一緒に過ごしてくれる仲間がいること。
困りごとが大きくなる前から、安心して関われる場所があること。
そうした地域の関係性が、若者の孤立を防ぎ、生きる力を支えていくのだと思います。
福祉が、目の前にある困りごとを受け止め、必要な支援につなぐ営みであるとすれば、社会教育は、孤立を生みにくい地域の関係性や、共に支え合える土壌を育てていく営みでもあります。
どちらか一方だけではなく、福祉と社会教育がつながり、地域の中で支え合う関係が広がっていくことが必要です。
若者は、支援されるだけの存在ではない
子どもや若者は、困った時に支援されるだけの存在ではありません。
一人ひとりに思いや願いがあり、誰かと笑い合ったり、好きなことを見つけたり、地域の中で役割を持ったりしながら、自分らしい人生を歩んでいく存在です。
けれど、お腹が空いたままでは、安心して未来を考えることは難しい。
孤独の中に置かれたままでは、誰かとつながろうとする力さえ失われてしまうことがあります。
だからこそ、まずは今日を安心して過ごせること。
温かいご飯を食べられること。
身を寄せられる場所があること。
自分のことを気にかけてくれる人がいること。
そのうえで、若者たちが少しずつ人とつながり、自信を取り戻し、自分の人生や地域との関わりを築いていけるように支えていくことが大切なのだと思います。
地域の皆さんと一緒に考えたいこと
貧困や虐待、孤独、生きづらさを抱える子どもや若者の問題は、本人や家庭、支援団体だけの問題ではありません。
行政や議員の皆さんにも、若者たちの置かれている現実を知り、具体的な支援や仕組みづくりにつなげていただきたいと思います。
同時に、地域に暮らす私たち一人ひとりにも、できることがあります。
活動を知ること。
関心を持つこと。
若者を偏見で見ないこと。
必要な物資や食料を届けること。
支援活動を応援すること。
地域の中で、若者が安心して関われる場所や機会を増やしていくこと。
大きなことを一人ですべて担う必要はありません。
理解のある安心・安全な大人や仲間が、一人、また一人と地域の中に増えていくこと。
それが、孤立の中にいる若者にとって、人生を支える大きな力になるはずです。
福祉と社会教育、地域づくりをつなぎながら
NPO法人スマイルリングでは、目の前にいる子どもや若者を大切にしながら、必要な支援やつながりをつくる活動を続けています。

相談は増えています。
若者たちとのつながりも増えています。
だからこそ、支援に関わる人だけが抱えるのではなく、地域全体でこの課題を知り、考え、支え合える関係を育てていく必要があります。
子どもや若者たちは、地域の大切な存在です。
その一人ひとりが、ご飯を食べ、安心して眠り、信頼できる誰かと出会い、自分らしく生きていけるように。
私はこれからも、福祉と社会教育、地域づくりをつなぐ立場から、制度だけでは届きにくい声を受け止め、若者たちの人生の応援団であり続けたいと思います。
そして、理解のある安心・安全な大人や仲間が、地域の中にもっと広がっていくことを願っています。
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