太平記 現代語訳 5-3 延暦寺・根本中堂の新常灯、消える
太平記 現代語訳 インデックス 3 へ
-----
この現代語訳は、原文に忠実なものではありません。様々な脚色等が施されています。
太平記に記述されている事は、史実であるのかどうか、よく分かりません。太平記に書かれていることを、綿密な検証を経ることなく、史実であると考えるのは、危険な行為であろうと思われます。
-----
そのころ、京都とその周辺には、世にも奇怪な事件が頻発(ひんぱつ)していた。
延暦寺(えんりゃくじ:滋賀県大津市)・根本中堂(こんぽんちゅうどう)の内陣(ないじん)の中に、一つがいの山鳩が飛び来たり、仏前の「新常灯(しんじょうとう)」の油皿の中に入ってしまった。
あわてふためき、バタバタとやるものだから、たちまち、灯明が消えてしまった。
その後、暗い堂中ゆえに方向を見失い、山鳩は、仏壇の上に翼をたたんで止っていた。
するとそこに、長押(なげし)の方から、朱色のイタチが躍り出てきた。
イタチは、鳩を二匹とも食い殺し、逃げ去った。
そもそも、この「常灯」が点じられたのは、後醍醐天皇(ごだいごてんのう)が延暦寺へ行幸された時に遡(さかのぼ)るものである。
その昔、桓武天皇(かんむてんのう:注1)が自らの手にて燈を献ぜられた事跡にならって、後醍醐天皇もおん自ら、120筋の灯芯を束ねられ、油を満たした銀製の皿にひたした後、それに火を灯されたのである。
-----
(訳者注1)平安時代の最初の天皇。平城京(奈良)から平安京(京都)への遷都を行った。桓武天皇が最澄(さいちょう)を強力にバックアップした結果、彼が開いた延暦寺は、有力寺院となった。
-----
後醍醐天皇 どうか、この燈の火とともに、皇統(こうとう)が、永遠の未来まで輝きわたりますように。
後醍醐天皇 あわせて、六道(ろくどう)に苦しむ者たちの暗闇を照らし出す、明らかなる慧光(えこう)の法燈(ほうとう)と、なりますように。
世間の声A このようになぁ、陛下が祈願込められてともしはった常灯なんやからな、それが消えてしまうっちゅうような事は、未来永劫、起こってはならんのや。
世間の声B そやのになぁ、山鳩が飛んできて、それを消してしまいよったんや。
世間の声C まことに、キッカイ(奇怪)な事としか、言いようがないわなぁ。
世間の声D しかもやでぇ、それをまた、イタチが出てきて食い殺してしまいよったと、いうんやから。
世間の声E これいったい、どぉいう事なぁん?
世間の声F まことにもって不可思議。いくら考えても、ワケわかりまへーん!
-----
太平記 現代語訳 インデックス 3 へ
