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エリック・ロメール「緑の光線」


繊細で地味で、映画好きを唸らせるようなユニークなこの映画が、1986年ヴェネツィアで金獅子賞受賞したとは、なんとも意外が気がする。ちょっと変わった女の子デルフィーヌを演じた、マリー・リヴィエールとかも晴れやかな受賞の舞台にあがったのかしらん。

この映画も、夏のバカンスものではあるのだけど、時々背後にながれる不穏なメロディといい、主人公がひろう不吉なカード、まったく関係ない老人たちが話すジュールヴェルヌの小説「緑の光線」の話。夏休みの楽しみとは無縁な何かが起こりそう。いろんな伏線が、最後の瞬間をめざして緊張感をゆっくり高めてゆく。そうして最後に、ほんの一瞬だけ垣間見える光ーそれはまさに映画の恩寵だった。

ジュールベルヌの小説「緑の光線」

バカンスシーズン。パリっ子にとっては、夏に町に残っているなんて屈辱的なことらしい。友人にギリシャ行をドタキャンされたデルフィーヌは、仕方なく一人で海に行ったり山に行ったりするが、寂しいばかり。でも友人たちは皆やさしい。私の親せきの別荘はどう?おじいちゃんがスペインの海辺にいるわ!家族もアイルランド行を誘ってくれる。でも、どれもデルフィーヌが過ごしたいバカンスとは違ってた。でかけた先で出会う男たちは、本当に変な奴らばかり(ロメール映画に登場する女性はみなとても魅力的だけど、男性は変な人が多い。イケメンは『冬物語』くらい)。

Ah,que le temps vienne...Où les cœurs s'éprennent (ランボー)
そんな夏はどこにあるだろう、デルフィーヌのバカンスは?と、だれもの不安が高まったところで、最後の最後に王子様が登場。この方もやや怪しい系の雰囲気がなくはないが、それでも最後に奇跡はおきる!
ロメールの策略にはまりながらも、映画の愉悦を心から噛みしめる作品。

マリー・リヴィエールはそのあと『秋物語』で再び登場。素敵な大人の女性になってました。人生は味わい深い。


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