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【創作】「しずく」の旋律にのって

今回も、こちら ↑↑ 片桐みかん様のお題に挑戦させていただきました。
今回のお話は
紫陽花駅の終電
透明な長靴
雨宿り喫茶店「しずく」

の3つのお題を使わせていただきました。
前回のものと全く違う世界観で描いてみました。合わせて読んでいただけましたら幸いです。


カタンカタン カタンカタン
薄暗い空の中、静かに走る紫色の電車に乗った私は、今からどこへ行くのか知らない。
気がついたら、何日もこの電車に乗っていた。

「紫陽花駅 紫陽花駅 ご乗車ありがとうございます。こちらは最終電車となりますので、お降りいただきますよう、お願いします。」

車内にアナウンスが流れた。

え?これが最終ですって?

私はびっくりして、切符の確認に来たおじさんに聞いた。
「おじさん、これ最後なの?この続きは?」

おじさんは最初は少し驚いた顔をしたが、すぐに優しい笑顔で、私の顔を見ながら、
「お嬢ちゃん、これは最後の電車だよ。だから、降りてくださいね。」
「え?でも、私ママの所に帰らないと。」
そう言うと、おじさんは簡単な地図を渡しながら、
「お嬢ちゃん、えらいねぇ。ちゃんとママの事を覚えているんだね。ママの所に帰る方法は、この地図にあるお店に行ったらわかるよ。1人で行けるかい?」
と言いながら、右手で優しく頭を撫でてくれた。

私は、渡された地図を見てみた。

えき→きっさてん

わかりやすく矢印が引っ張られていた。途中に、一度だけ三つに道が分かれていたけど、真ん中に矢印は続いていて、「きっさてん」までの行き方はわかりやすかった。

「この『きっさてん』て所に行けばいいの?」
「そうだよ。かしこいお嬢ちゃんなら、きっと行けるよ。」

私は、まだピンっとはきてないけれど、かしこいと言われて、嬉しくなって思わず 「うん!」 と答えた。

その時だ。
頭を撫でてくれていた、おじさんの右手が紫色になってるのを見た。

「おじさん、おてて、痛いの?」
「え?あぁ、これかい?昔は少し痛かったけど、もう大丈夫だよ。優しいね、お嬢ちゃんは。」
「ううん。ママがね、どこかが痛い時はおまじないが効くよ、て。いたいのいたいの悪い人のところに飛んでいけー!」
「あはは、ありがとう。今頃きっと、悪い人が頭痛ーいとか言ってそうだね。」
おじさんは優しくもう一度笑ってくれた。

私はおじさんにお礼を言って手を振ったら、電車を降りた。

駅は、お花がたくさん咲いていて、とてもきれいな駅だった。
しかも、すごく不思議なお花だった。同じお花なのに、紫色もあれば、青色も、ピンク色もある。

今は止んでいるけど、雨でも降っていたのかしら?駅やお花はいっぱい濡れていた。特に、お花はたくさん濡れていて、キラキラしていて、まるで宝箱の中にいるみたいだった。

お花をずっと見ていたかったけど、おじさんからもらった地図を思い出して、私は歩き出した。お花に囲まれた道を抜けると、駅の出口があったので、そこから駅を出た私は、もう一度地図を見た。

道は一本道。

目の前を見ると、確かに道が一本だけあって、周りはやっぱり紫や青のお花がいっぱい咲いていた。少し寂しくも感じたけど、お花たちが風に合わせて踊っているのを見ていると、とても楽しくなって、私はスキップをした。

ふと、いつもお母さんが歌ってくれていた歌のメロディーを、私も歌ってみたくなって思い出してみた。

「ぴっちぴっち……ちゃっぷちゃっぷ……?」

たしか、こんなんだった気がする。
お歌は忘れたけど、ここの部分が楽しくて、私は何度も口ずさみながら道をスキップした。

何回も「ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ」を繰り返していたら、分かれ道にやって来た。

おじさんの地図の通り、道は三つに分かれていた。
私は、少し怖くなって地図を見直した。地図は、真ん中の道に→と書いている。

もう一度前を見てみると、真ん中の道にはお花がたくさん咲いていた。他の道は、どちらも少し暗くて怖そうだった。
「お花さんと一緒に行けばいいんだね!」
私は、なんだか嬉しくなって、走った。
少し走ったら、看板とお店みたいなものが見えてきた。



雨宿り喫茶「しずく」

「しずく」……しか読めなかった。でも、ここまでしか道はない。

私は、とりあえず「きっさてん」という所がどこにあるか聞きたくて、そのお店のドアを押した。

「いらっしゃいませー。」
お月さまみたいにキラキラした笑顔のお姉ちゃんが、元気な声でごあいさつしていた。

「あれ?お嬢ちゃん、一人なの?」
「うん。」
「紫陽花駅から来たの?」
「うん。紫色の電車に乗って来たよ。」
「そうかそうか。そこのおじさんに、ここを教えてもらったの?」
「うん、そうだよ!私ね、ママの所に帰りたいの!そしたら、おじさんがここを教えてくれたの。これ、地図だよ!」

そう言って、私はお姉ちゃんに地図を見せた。お姉ちゃんは地図を見ると、ぱっと顔をあげて、近くのいすに座っている男の人に声をかけた。

「いらっしゃいましたよ。待っていて良かったですね。」
「あぁ。」
男の人は、何となくおじいさんみたいに髪の毛が白く、細くて背中が少し丸かった。

「あのあじいさんが帰り方を知ってるの?」
私は、お姉ちゃんに聞いた。お姉ちゃんはにこっと笑って
「まずはお話してごらん。」
とだけ言って、隣のいすに座らせてくれた。

「お嬢ちゃん、一人で来たのかい?」
おじいさんは、とっても優しい声をしていた。私の目を見て、ゆっくりとお話をしてくれた。
「うん、紫の電車できたんだよ。」
「そうかい。遠くから来たのかい?」
「うーん、よくわからないけど、たぶん何日か乗ってたと思う。おひさまが何回かいなくなったから。お月さまも見たよ。」
「そうかいそうかい。それはよく頑張ったね。」
おじいさんは、優しく頭をなでてくれた。

「お嬢ちゃんのお名前は?」
そう聞かれて、私は止まった。私の名前?なんだっけ??
「うーん、わかんない!」
「そうか、わかんないか…」

おじいさんは、少し寂しそうだった。
「あ!でも、ようちゃん、て呼ばれてるよ。」

そうだ、いつもママは「ようちゃん、ようちゃん」て声をかけてくれて、優しくトントンしてくれている。

「ママが、そう呼んでいるのかい?」
「そうだよー!おじいさんは?お名前は?」
「僕かい?僕はようすけって言うんだよ。」
「へぇ!じゃあ、同じようちゃんだ!」
私はつい嬉しくておじいさんの事を何回か「ようちゃん」と呼んだ。おじいさんも、笑ってくれた。

「そうだ、お嬢ちゃん、何か食べるかい?ここはプリンが美味しいよ。」
「そういえば…」
すごくお腹が空いていた。
「うん!食べたい!!」
しばらくすると、プリンが出てきた。一口食べると、何だか懐かしい味がした。


「そうだ、知りたい事があって来たんだろ?」
プリンを半分ぐらい食べた頃、おじいさんは、急に聞いてきた。さっきまでと違い、笑っていない。
「あ、そうそう!私、ママの所に帰りたいの。ママ、きっと心配してるから。」
「ママとはぐれたの?」
「うーん…何かね、急にママが遠くに行っちゃったの。私は、ママに会いたいよ、て思っていたら、いつの間にか電車に乗ってた。最初は怖かったんだけど、何となくママに会えると思って。」

おじいさんは何も言ってくれなかった。
その代わりに、何か困ったような顔で私を見た。
私のほっぺに手を当てて、笑った……ううん、泣いてた。

「おじいさん?」
「ごめんごめん、大人が急に泣いたら困るよね。」

そう言うと、手を下ろした。

「プリンはきっと、ママの大好きなおやつだったんじゃないかい?」
おじいさんは、また急にそんなことを聞いてきた。
でも、たしかに…
「うん!ママ、よくプリン食べてた!!おじいさん、よくわかったね!」
「僕ね、少し前まで君のママに会っていたんだ。小さいころからプリンが大好きだったんだよ。」
「え!そうなの!てか、おじいさん、ママを知ってるの!?」
おじいさんは、返事の代わりに笑ってくれた。
「君のママは、このプリンを作ってくれって、よく僕に言っていたんだ。君も好きになってくれたら嬉しいな。」
「うん!このプリン、大好き!!おじいさん、プリン作れるんだね!ねぇ、ママに会ったら、このプリン食べに来て良い?」
「うーん、どうだろう。また、どこかでこのプリンとは出会えるよ。」
それだけ、おじいさんは言うと、一つ箱を出してきた。
ピンクの箱に、紫色のリボンがついていた。
「これは、僕から君へのプレゼントだ。開けてくれるかい?」
「え?もらっていいの?」
「もちろん。」
おじいさんは笑顔でこちらを見ていた。私は、リボンをほどいて箱をあけた。

「うわぁ!!!すごーい!!」
そこには、一足の長靴が入っていた。それは透明な長靴だった。
「これを履いて、お店を出てごらん。そうしたら、虹色の橋があるから、そこを渡ってごらん。そうしたら、橋の向こうでママが待っているよ。」
「え!ママが!!本当!!!!」
私は嬉しくて、いすから降りておじいさんに飛びついた!

「おじいさん、ありがとう!!これで、ママに会えるのね!!」
おじいさんを見ると、また泣いていた。
「ごめんな……うん、会えるよ。ちゃんと会えるから。」
「ねぇ、おじいさんもママを知っているんでしょ?一緒に行こう。」
「ありがとうね。でもね、僕はここのお店にいないとダメなんだ。ようちゃんとお話するのも楽しいし、また一緒にプリンを食べたいけど、ダメなんだ。だから、ここからはようちゃん一人で帰るんだよ。」

そう言われると、急に寂しくなった。

私は、おじいさんにもう一度抱き着くとぎゅーってした。
おじいさんも、ぎゅーっと返してくれた。でも、すぐにやめて、いすから降りたら私の顔を覗き込み、
「ようちゃんに会えて良かった。本当だよ?でも、ここからは一人で行くんだよ?」
「どうしても?もう会えないの?」
「うーん、そうだね…じゃあ、僕と一つだけ約束をしよう。君がもう少しお姉さんになって、ママと一緒にたくさん歩けるようになったら、僕のいるところに来てね。僕はそこで寝てると思うから、会いに来たよー!て元気よく声をかけてね。」
「え?寝てるの?」
「うん、寝てるよ。だから、元気よく来たよー!て言ってね。」
「うーん、よくわかんないけど……わかった!!」
そう言うと、約束のゆびきりをした。

そのあと、私は長靴をはいた。そして、お店を出ようとしたとき、おじいさんは私に
「いいかい、このお店を出たら、後ろを振り返っちゃだめだよ。前だけを見て、ママに会いに行くんだ。約束だよ。」
「うーん…うん!わかった。」
私は、そう言うとドアに手をかけて、開ける前に振り返って
「またねー!!!!!」
と言った。

ドアを開けると、おじいさんが言っていたみたいに大きな虹色の橋があった。私は、少しドキドキしてきた。
と、虹色の橋の所にかわいいお地蔵さんがいた。
私は、何となく「こんにちは」とだけ言って、虹色の橋を渡った。
もちろん、透明の長靴をはいて、前だけを見て。

「ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ」



「お母さん、もうすぐですからねー!」
「ゔーぅー!!!!!!っっっ!!!」
「ほら、出てきましたよー!」
その声と共に、大きな大きな泣き声が部屋中に響いた。

「お母さん、元気な女の子ですよー!!」
紫(ゆかり)は、肩で大きく呼吸をしながらも、力がどんどん抜けていくのがわかった。少しボーッとする意識の中、今まさに自分のお腹から出てきた我が子の泣き声を聞いて、自然と涙が出た。

「良かった……良かった……」

夫の敏志と、紫の母親は何度も何度も同じ言葉を繰り返しながら、その場にへたり込んだ。


しばらくして、きれいにしてもらった赤ちゃんは、紫の元に連れられてきた。

「ほーら、お母さんですよー。お母さん、抱っこできますかー?」
そう言われて、紫は赤ちゃんをそっと抱いた。

その後、医師がやって来ると、
「お母さんも赤ちゃんも、よく頑張ったね。数日前は、赤ちゃんの心拍が弱まったし、陣痛も長かったから、かなり危なかったんだけど、本当に2人ともよく頑張ったね。」
と告げ、敏志に紫の状況を説明していた。

母親は、紫と赤ちゃんの近くに来ると、
「お父さんにもね、いっぱいお願いしたの。天国から力貸してね、て。まだ、そっちに呼んじゃダメよ、て。」
「お父さん、会いたがってたもんね、初孫に。きっと、こっちじゃないよ、て教えてくれたんだろうね。ねー、ようちゃん。」
「あら、結局ようちゃんにするの?」
「うん、敏志と相談したの。女の子なら、陽花て名前にしようね、て。ねー、ようちゃん。」
陽花は、紫に呼ばれてにこっとした。
「あら、ようちゃん。笑った顔、目元がおじいちゃんにそっくりねー。」
紫と母親は、陽介を思い出して、クスッと笑い合った。


数年後…

「マーマー!!!早くー!!!」
陽花は、紫陽花の咲く小道を走っていった。紫は、手に持っている花束やお水を持ちながら陽花を追いかけた。
小道を進んだ、その先には陽介が眠っている。

「おじいちゃーん、来たよー!!」

陽花は、出せる限りの声で陽介を呼んだ。


#3つのお題に空想のひらめきを

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