アランペ・プニヨン
午前八時、三年四組の教室には既にざわめきが満ちていた。机の間を飛び交う噂と、目に見えない期待の緊張感。
廊下に張り出された紙に記されたひとつの名前──「アランペ・プニヨン」。それは、今日からこのクラスに転校してくる生徒の名前だった。
「なんだよ、アランペって。外国人か?」
「ていうか“プニヨン”って名前、絶対いじられるだろ」
男子たちは半笑い、女子たちは興味津々。だが誰ひとりとして、まさかこの日が彼らの学校生活を一変させる“始まりの日”だとは思っていなかった。
チャイムが鳴る。担任の西村が入ってきて、短く咳払いした。
「じゃあ、紹介する。今日からこのクラスに入る生徒だ。……入れ」
ドアが開き、ゆっくりと一人の生徒が現れた。
色素の薄い栗色の髪、透明感のある白い肌、瞳の色は淡い灰青。背は高く、制服の着こなしもどこか異国風に見える。そしてなにより、彼の持つ空気が、教室の時間を止めた。
「ボクは、アランペ・プニヨン。よろしく」
柔らかな声だった。どこか中性的で、響きに魔法のような余韻が残った。
数秒の沈黙。次の瞬間、爆発するように教室が騒ぎ出す。
「ハーフじゃなくてフル外国人か!?」
「男? 女? どっち?」
そんな中、唯一、ただ一人だけ、無言で彼を見つめる少女がいた。
三年四組の古谷ゆら。地味で目立たない女子生徒、成績は中の上、部活も入っておらず、友達も少ない。ただ、やたらと“視る”目をしていた。
アランペが、ふと彼女の方を向いた。
そして、小さく微笑んだ。
転校初日から、アランペは完全にクラスの中心人物になった。完璧な容姿、気さくな性格、そしてなぜか教室の小さな“事件”を次々に解決していくのだ。
数学の答案用紙が全員分なくなった日、アランペはたった数秒でそれを机の隙間に見つけた。
屋上の扉がなぜか開かず、誰も行けなかった週、彼が手を触れた途端、扉は重々しく開いた。
誰も気づかないうちに、壊れていた水道が直っていた。図書室で消えていた本が戻っていた。忘れられたロッカーの中の財布が持ち主の元に戻った。
まるで、彼の存在が“世界の歪み”を修復しているようだった。
「なんなの……あの人」
ゆらは、言いようのない胸騒ぎを感じていた。誰もが彼に夢中になる中、彼女だけが違和感を抱いていた。
ある日、放課後の図書室で、アランペと二人きりになった。
「キミは、気づいてるんだね」
「……何に?」
アランペは静かに言った。
「ボクは人間じゃない。厳密には、“アランペ・プニヨン”という記号が、この学校に必要とされた“歪みの補正装置”なんだ」
彼の瞳が、不意に光を帯びた。だがそれは恐ろしい輝きではなく、慈しみに近い光だった。
「でも、キミだけが唯一、記号としてでなく、“個”としてボクを見てくれた。だから、ボクは君に惹かれた」
ゆらの胸が、締めつけられる。
「人間じゃないって、どういう……」
「時間が来れば、ボクはこの学校から消える。すべての“ズレ”を正したら、ここに居る理由がなくなるから」
ゆらは叫んだ。
「そんなの、ズルいよ! あんなにみんなと仲良くなって、あんなに、あんなに……!」
アランペは静かにゆらの手を握った。温かかった。
「ボクは、消えた後も、君の中に残るよ。“記憶”という名前のデータに」
その翌週、アランペ・プニヨンは姿を消した。転校生としての履歴も抹消され、彼の席には最初から誰もいなかったことになっていた。
ただ一人、ゆらだけが覚えていた。
アランペ・プニヨンという名の、美しく奇妙な“歪みの精霊”。
彼が消えたあと、教室の空気は少しだけ明るくなった。いじめがなくなり、恋が芽生え、誰もが小さな善意を持ち寄るようになった。
ゆらは、廊下を歩きながら、ふとつぶやいた。
「たぶんまだ、あちこちの学校に現れてるんだよね。今日もどこかで、誰かの“歪み”を直してる」
そして、笑った。
遠い空の向こう、青い風が吹いた気がした。
まるで、彼が微笑んだように──。

この作品は、画像、文章とも、すべてChatGPT Plusの生成によるものです。また、以下の企画への投稿作品です。
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