管理職が「感情を扱う」のが苦手なのは、職場の文化のせい?それとも…?

先日、管理職研修に関するオンラインセミナーに参加してきました。

人材育成に関わる方々が多く集まる場で、とても興味深いテーマが話題に上りました。それは、「管理職は『感情を扱うこと』に難しさを感じている」というもの。

これを聞いて、私も思わず画面の向こうで「うーん、確かに!」と深く頷いていました。日々マネジメントに奮闘する中で、感情との付き合い方に悩む場面は多いですよね。

でも、他の方々の意見を聞き進めるうちに、私の中で「あれ?」という小さな疑問が湧いてきたんです。

「感情を出せない」理由はなんだろう?

参加者の皆さんの多くは、感情を扱う難しさの背景を「そもそも会社には、感情を出してはいけないという文化があるからだ」と分析されていました。

なるほど、確かに「仕事中はクールに、ロジカルに」という空気はあります。

でも、よくよく考えてみると、私たちって職場でも結構「感情」を出しているはずなんです。仕事がうまくいけば「やった!」と喜びますし、「もー、あの件どうなってるの?」なんて日常的に愚痴をこぼすことだってありますよね。

「じゃあ、怒りなどのネガティブな感情はどうだろう?」と考えてみると……。もし職場で「怒り」の感情が完全に封じ込められているのだとしたら、世の中から「パワハラ」という言葉はとっくに消え去っているはずですよね(苦笑)。

私自身が日頃感じていた難しさは、「出してはいけない」からではなく、「『感情を言語化すること』に慣れていないから、うまく扱えないのでは?」ということでした。

言葉にならないほど「深く感じられる」ことの尊さ

ここで少し立ち止まって、お伝えしておきたいことがあります。

それは、「言語化できない=ダメなこと」では決してない、ということです。

むしろ私は、言葉になる前のモヤモヤやザワザワを「深く感じ取っている」という感性そのものが、とても素晴らしい才能だと思っています。

言語能力の高さが、必ずしも感性の豊かさとイコールとは限りません。言葉にならないほどの複雑な思いを抱えたり、葛藤したりできること自体が、人間としてとても魅力的で奥深いこと。だからこそ、「感情をうまく扱えない」と悩む人は、それだけ職場で色々なことを深く感じ取れる素敵な感性の持ち主だと言えます。

伝わらないのは「もったいない」。まずは気づくことから

ただ、その豊かに「感じていること」をそのままにしておくのは、すごく「もったいない」と私は思うのです。言語化されないままだと、自分でも自分の心が迷子になり、周りの人もあなたの思いを理解できず、すれ違ってしまいます。

だからこそ、まずは自分の内側にある感情に「あ、今こういう気持ちなんだな」と気づき、認識し、それを受け入れること。それがすべての最初の一歩になります。

感情を「隠す」のでも「ぶつける」のでもなく、自分の内側にある豊かな感情を観察し、自分と他者をつなぐための「言語化」という輪郭を与えてあげるプロセスが大切なのです。

習っていないのだから、できなくて当然!

とはいえ、「今日から感情を言語化しましょう!」と言われても、すぐにできるものではありません。実はこれ、個人のセンスの問題というより、日本のビジネス教育の盲点でもあるのです。

グローバルなリーダーシップ研修では、ほぼ間違いなく「EQ(心の知能指数:感情をうまく管理し利用する能力)」を扱うセッションが組み込まれています。しかし、日本の管理職研修では、感情を扱う練習をする機会がほとんどありません。そもそも教育プログラムに入っていないのですから、できなくて当然なのです。

会社として「EQ」を教育に取り入れるメリット

では、なぜグローバルの企業はこぞってEQを学ぶのでしょうか?

それは、リーダーが感情を扱うスキル(EQ)が、社員との関係性構築やチームのパフォーマンスに直結するからです。

例えば、EQの提唱者の一人であるダニエル・ゴールマンらの研究によると、優れたリーダーシップを発揮する要素において、専門的なスキルやIQよりも「EQ」の方がはるかに重要であり、トップパフォーマーの業績の差の約90%はEQに起因すると指摘されています。

近年注目されている「心理的安全性」も同じです。リーダー自身が自分の感情(焦りや不安など)を適切に自己開示し、メンバーの感情も受け止めることができて初めて、チーム内に安全な関係性が築かれ、高いパフォーマンスを発揮できるようになります。

つまり、会社として管理職に「感情を扱う(EQ)教育」を取り入れることは、単なるメンタルケアではなく、れっきとした業績向上のための投資なのです。

自分自身の豊かな感性を大切にしながら、少しずつ「感情に気づき、言葉にする」技術を身につけていく。そんな新しいマネジメントの形が、日本の職場にももっと広がっていくといいなと思っています。



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