永平寺から無一文で歩いて帰るもん。vol.30 涙のおむすび
これは私、深澤亮道が2015年10月に福井から岩手まで、約700kmを無一文で歩いて帰った物語です。
この体験については2019年にブログにまとめていましたが、あれからさらに年月が経ちました。
今回noteでは、その内容を加筆修正してお届けしていきたいと思います。
前回までのあらすじ
永平寺を出発して17日目。
約500km歩き、山形県は鶴岡市のあつみ温泉駅近くまで来ました。
前回は、この旅で初めて旅館に泊まったお話でした。
今回は、鶴岡駅までの道のりとその先で出会ったお兄さんのお話をしたいと思います。
18日目の目的地
18日目、8時。
一泊お世話になった清水屋旅館を出発します。
本日の目的地は、鶴岡駅あたりまでの30kmの道のりを目指します。
また泊まる場所は見つけておらず、野宿の予定で出発しました。

だいたい30kmの行程ですと、朝8時に出発して、お昼に少し休憩を入れて夕方5時〜6時くらいには到着する予定です。
ただこの日は、少し早めに歩みを進めます。
というのも、鶴岡駅での目的があるからです。
それは「托鉢」です。
如何せん、残金がほぼ底をつき始めています。
食べ物はおろか、飲み物さえ買えないくらいです。
それに今後の行程は、宮城県に向けて山道を通るルートなので、托鉢をできるのは鶴岡駅くらいしかないのでは、と思ったのです。
鶴岡駅で托鉢をしなければ、死活問題になりかねません。
一縷の望みをかけて、痛む足を引きずりながら、少し早めに歩きます。
涙のおむすび
18日目、11時。
清水屋旅館を出発して3時間。
国道7号線を北上してきましたが、地図を見ると鶴岡市内に向けて内陸へと道路が進んでいます。
おそらくこれがこの旅で日本海は見納めとなるでしょう。
「三瀬海水浴場」というところで、海を眺めながら、少し早めの休憩と昼食をとることにしました。
清水屋旅館の女将さんからいただいたおむすびを開くと、その中には封筒も一緒に入っていました。
その中には

5000円が入っているではありませんか。
一瞬理解できませんでしたが、玄関先でお経を読んだ後、女将さんに「お経をあげてもらったお布施だよ。いいから持って行きなさい」と言われたのを思い出しました。
(あれ…おむすびじゃなくてこのことを言っていたんだ)
私はずっとお布施として、おむすびをもらったのだと思っていました。
5000円で一泊させてもらったのに、5000円のお布施をいただくなんて。
どう考えても女将さんのポケットマネーでしょう。
女将さんの優しさに、ただただ涙がこみ上げてきました。
おむすびは「お結び」と書いて、良い縁を結ぶというのは、よく言われていることですが、本当にこんなにありがたいご縁を結びながら旅を続けることができることを切に感じます。
正直にお伝えすると、旅館に泊まった時点で心がくじけかけていました。
しかし、女将さんに対する感謝と同時に、この旅を最後まで続けようと、いただいたお布施を見つめながら強く思ったのでした。
そして、涙で良い塩梅になったおむすびを食べ終え、鶴岡駅を目指し出発します。
※清水屋旅館にいつかまた訪れたいと思っていましたが、今回記事を書く上で検索したところ、現在は廃館しているようでした。
お釈迦様荒倉口
18日目、13時。
国道7号線を、鶴岡市内に向かってひたすら歩きます。
その途中にこんなバス停が。
「お釈迦様荒倉口」

なんとも不思議な名前のバス停じゃないですか?
登山口の入り口でもなければ、お釈迦様の生涯にも荒倉口なんてエピソードは登場しません。
気になって調べてみたのですが、なぜこんな名前なのかわかりませんでした。
もしこの記事を読んでくださった読者の中で、このバス停について知っている人がいましたら、是非情報いただけると嬉しいです。
それまでずっとモヤモヤして待っていますので、よろしくお願いします。
鶴岡駅に到着
「お釈迦様荒倉口」を過ぎ、小さい峠を超えると、目の前には庄内平野が広がります。

新潟平野と景色はそんなに変わりませんが、なんというか「東北に入ったぞー!」という気持ちがここで一気に強くなりました。
といっても、山形県に来たのはこの時が初めてだったと思います。
18日目、17時30分。
無事、鶴岡駅に到着しました。
托鉢をしようと決意して出発しましたが、やはり30km歩くとそこから托鉢しようという気力が湧きません。
おそらく疲れもありますが、女将さんからいただいたお布施で少し安心したのでしょう。
すぐさま野宿場所を探して、歩き始めました。
すると、すぐ近くにとても野宿に適している場所を見つけました。
この日は、鶴岡駅から程近い、赤川にかかる三川橋の下で、ヤンキーが来ないことを祈りながら寝床につくのでした。

19日目
19日目、7時。
感想から言いますと、今までの野宿で一番寝心地がよかったかもしれません。
橋の下なので車の通る音は気になりますが、それ以外の風や気温などは特に支障なく眠ることができました。
さて本日は、山形県新庄市までの道のり、行けるところまでを目指します。
というのも、ここから120km先の宮城県大崎市までは基本的に野宿を予定しています。
なにせこの旅で一番懸念していたのが、これから通る山形県から宮城県への奥羽山脈超えです。
一応、19日目の今日は新庄市手前の戸沢村あたりまでを目指して出発しました。

途中、鶴岡市内にあった「薬王堂」で切れかかっていたテーピングを追加購入しました。
ちなみに薬王堂は東北を中心に展開しているドラッグストアです。
こうして地元ならではの店舗があるだけでも、徐々に近づいていることを実感します。
香田の運ちゃん
そして、庄内平野真っ只中の国道345号線を迷うことなく、まっすぐ歩きます。
「山形県」そして「庄内平野」といえば、やはり映画「おくりびと」で、本木雅弘演じる小林大悟が鳥海山をバックにチェロを弾くシーンが思い出されます。
同じ平野でも、新潟平野とは違った様相が楽しめます。
19日目、12時。
国道345号線から国道47号線に道を切り替え、新庄市内に向かって歩きます。
左手に最上川、行く手は山と森一色の景色になってきました。
道も歩道という歩道がなくなってきました。

「これは流石にまずいかな…」
これからの道のりを考え、焦りと恐怖から背中にスーッと汗が流れ始めた時です。
「すみません!これからどこ行くんですか!?この先めっちゃ危ないですよ!?」
私の横に一台の中型トラックが止まり、中から40代前半と見られる、爽やかなトラック運転手が話しかけてきたのでした。
次回予告
次回は、この旅で一番の急展開を迎えます。
何が起きるのか
是非、次回をお楽しみください。
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