過去のデート中の会話を反芻する
今は昔、私が25、6歳という年齢だった頃の話だ。
私はその日、年上の人からデートのお誘いを受け、新宿駅東口にいた。
さえない中年リーマンが私に「年上が好きなの?」と質問する。来たか。
自分がまだ若いから年上とデートする確率が上がっただけだし、仮に年上の人が好きだったとして私がその人を好むかは別問題なのだが、要はホテルにシケこむ前の「期待値を上げる」前戯的な会話だ。約30パターンあるうちの何とも100パターンが(返しを含め)興ざめするつまらなさだ。
「年上が好きなの?」
「まあ、嫌いじゃないですよね」
「残念だな。なら、俺じゃなくてもよかったね」
「えっ」
「年上嫌いなら、今夜で変えてみせられるから」
みたいなエロい会話運びには絶対ならない。経験上ここでの「YES」はただ安全パイに当たったとホクホク喜ばせるだけである。なんでそれだけの確認事項で安心できんだよ。現時点でもまだまだ不特定多数の内じゃねえか。
(……つまんねえ)
もう解散でもいいやと思った私は本性を出し、一撃を送り込んだ。
「っつーかガキ嫌いなんスよ。自分がガキなもんで」
(※二度目の【ガキ】を吐き捨てる口調で発声するのがコツです)
見ろこの返しセンス。ただの年下じゃねえぞ。さあどう対応するよ年上。
しかし、意外なことが起こった。おっさんは私のセリフにいたく感心したのだ。「いや、その表現は、本当にいいねえ~、すごくいいよ」と。すごいすごい、とお褒めいただいた。新宿東口で。つられた群衆がスタンディングオベーション始めそうなイキオイで。
(ちょっといいなあ)
そのデートは解散にはならなかった。
(文中の「ガキ」とは必ずしも若年層を意味しません。←つまんねえ蛇足)
