鳥貴族
昨夜、パートナーと外食することになっていた。
最近「鰻の成瀬」が比較的近所だと知ったから。
浮かんでは大抵そのまま立ち消える山ほどの計画を、ひとつくらい消化しておこうというわけだ。
日頃ふたりとも鰻を食べない。大好きなのだが、乱獲問題に与したくないのだ。だから10年以上も鰻は食べていない。しかし年に一度の楽しみにする程度なら許容範囲かと、パートナーがやっと譲歩したのだ。そういう堅さがパートナーにはある。その辺りの感覚が合うのだろう。
約束していた時間に留守電を入れると、20分過ぎて着信があった。床屋に行くとは聞いていたが、なんと4時間待たされたのだという。細菌の本が店に置いてあったから読んでいたという。たしかに一冊読み終えるのに充分な待ち時間だ。腸炎ビブリオ感染症について、ひと下り聞かされる。床屋が腸炎ビブリオについて詳述する本を置いているのも可笑しいし、「腸炎ビブリオ」という音の響きがよくて笑わされる。
ともあれそろそろ出かけますかと電話を切り、落ち合った。
しかし「鰻の成瀬」に到着すれば、灯りも消えた店の扉に「準備中」とある。年末年始の休業について知らせる文言もない。昨夜インターネットで調べた時も記載は何もなかったのだ。それでも店頭には何か掲示されていてよいものだろうと思ったが、当世そういう感覚は何ひとつ「常識」じゃない。
当ては外れ立て直しを余儀なくされて、鳥貴族に行くことになった。


ピーマンの肉詰めは3個。余る1個をこちらに寄越すので、半分食べて残りをパートナーの白米に乗せる。こういうのは無断で。強引にする。

別居だが最寄りのスーパーは同じだ。そのスーパーに連れ立つ。めいめいカゴに品物を入れて行く。大晦日の蕎麦用に天ぷら。正月のなますや松前漬け、ハムにかまぼこ、野菜の肉巻き、……今年はパートナーのスケジュールに余裕があって、一緒にゆっくりと年を越せる。
「一食カレーチャーハンするからね」と宣言すると、パートナーが喜色満面となった。一回くらいドライブに行きたい。何か映画も観よう。ふたりで過ごす正月休みなど何年振りだろう。サッカー台で並び自分が持ち帰る分とは別に、パートナーに押し付ける袋を準備する。どうせ向こうも同じことをしている。そして抗議され「お店の人がパートナーさんにってくれたよ」とか、くだらない言い訳をするのだ。こっちにも文句はある。なんでおれの分を細々買ってるんだよ。
「いや、落ちてたから」
「落ちてたもん寄越すな」
家に着いて落ち着いた頃に電話する、とパートナーが手を振る。
また明日。一緒に蕎麦を食べて、「悪魔の手毬唄」でも観よう。
皆様に感謝を。本年もお世話になりました。
よい年を迎えられますことを、心からお祈りしております。
