じげもんちゃんぽん練馬店
「ちゃんぽん食べたい病」は、おれの場合ならタンメンで一時的な措置ができる。しかしパートナー氏にはタンメンでの代用では効かないし、ちゃんぽんに強い情熱をもっている。その日は出先で焼肉屋を探していたのだが、道すがらちゃんぽんの店を見つけてしまったら仕方ない。焼肉はまたの機会に譲るしかない。おれの焼肉……バイバイ。

この店は同オーナーの二毛作。夕方から「かわ焼き まいける」になる。

パートナーいわく、「東京で食った中で一番うまい」らしい。しかしジャンキーの「これは上物だ」という言葉を信用していいものだろうか。でも満足しているようだし、リンガーハットも行こうとして探すと意外とないものだから、焼肉を諦めてよかった。ここのちゃんぽんには海老は入っていないけれど、確かにとてもうまい。卵かけごはん(200円)も頼んだのだが、そちらは来店時に白米を炊いてから時間が経っていたのか、冷めかけているわ塊になっていて卵も混ざらないわで、次回は頼まないだろうと思った。きっと炊飯のタイミング次第かな。卵もおいしかったし、魚粉もかかっていて期待させる要素はあるのだ。
ちゃんぽんは非常に美味しかった。うん、ちゃんぽんだけでいいしね。
練馬の喫茶店といえば「タッチ」の作者あだち充が通ったとされる「アンデス」だったが、コロナの爪痕はここにも、閉店してしまった。店が入っていたビルは更地になっていた。仕方なく適当にチェーンのコーヒーショップを探したが、どこも混んでいた。頼みはドトール。見渡せる範囲に数軒ドトールがあるって戦略的だよなあ。


長いネーミングやタイトルを見ると「そういえば論文タイトルってどうしてあんなに長いのか」と考え始める。本当に長い。お前ら本当はアタマ悪いんじゃねえのかくらい長い。あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らないのだろうか。それでもあの頃はまだアニメのタイトルも「あれでも短い方だった」と今なら思える。学者論文にも流行があるのか、近年は「〇〇〇〇を手がかりに」と結ぶタイトルが多い。頼むから「手がかりにするのか/しないのか」書いてくれ。まあ「手がかりにしない」ルートはないか……
「仕事のこと考えてた?」
「うん。ちょっと」
考えていたのは悪口だけどね。
でかいダイソーを見つける。何となく店内を歩き回って、飽きない。おもちゃのコーナーで出来のよいパンダを見つける。これが100円……?


これまで上野のパンダショップも覗いたが、あまり欲しいのはなかったのだ。まさか出会いは100円ショップにあったとは。
ふたり地元のスーパーで買い出しをする。ゲイカップルがいて、パートナーに合図すると「見るな見るな」と言う。それで気づいた。ひとりはよく見かける初老の人だ。ただし……短いスパンで毎回パートナーがちがうのだ。
「相手が変わるの、5回くらい見てるよ」
「おれは4回かな」
「俺が見た5人とお前が見た4人が被っている保証もないしな」
「こわいこわいこわい。ヤメて」
「すごくモテるんだろうなあ」
「どした。でもまあ、そうなんだろうねえ」
「おれには遊びの相手をテリトリーに入れる神経が信じられない」
「うーん。その都度その都度、遊びのつもりはないのかもよ」
……そっちの方が、当たっている気がする。いつも最初は夢があるのだ。ただし思い込みの激しい夢が。ずっと続く未来を思っているのだが、数ヶ月の蜜月の後、相手が自分の理想そのままではなかったことに気づく。それだけ。ふたたび「理想の相手」「運命の出会い」を探し始める――同じ演出、同じ食事、同じ言葉、同じ愛撫……別れを告げる顔も、同じなんだろう。
「なんかしんどい」
そう言い捨てて話題を切り上げる以外なかった。彼と連れ立っている恋人は毎回それなりに良い男なのだが、いずれも若いのに若さがない。ふてくされていたり、傲慢そうだったり。今回の恋人は歴代の面々では特に良い男だが、ビクビクしていた。ただ好きでいてもらうために、そんな顔で生きることねえだろう、しっかりしろ、と思う。
(でもまあ、好きになっちゃったか)
「お前はいつもニカニカ笑ってた」
「そーだろね」
「今でもいつも笑ってる」
「そっか」
若い頃にはあの子のように怯えていた日もあった、とは言わなかった。
2頭のパンダは1頭ずつ、それぞれの家に連れて帰った。
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