深部感覚をADLに活かす|位置覚・運動覚・振動覚の評価と臨床のコツ
はじめに
みなさんこんにちは。作業療法士の仲田です。今回は、前回の続きとして「深部感覚編」をお伝えします。実際にZoomのナイトセミナー「OTしゃべり場」で盛り上がった、目には見えないけれど生活に直結する感覚のお話です。
この記事の3つのポイント
- 深部感覚は筋肉・関節・腱から生じる感覚で、位置覚・運動覚・振動覚などが代表的な分類とされている
- 障害されると「見えない部分のADL(袖通し・トイレ動作など)」が困難になる
- 評価時は触圧覚がヒントにならないよう、指の「側面」を持つなど工夫が必要
深部感覚とは?「目をつぶっても身体が分かる力」
さくら「先生!前回、『深部への圧覚は深部感覚に入る』って言ってましたよね。今回はその深部感覚について教えてください!」
仲田「よく覚えていましたね!素晴らしいです。深部感覚は、皮膚の表面ではなく、筋肉や関節、腱などで感じる感覚のことです。」
さくら「筋肉や関節ですか…表在感覚よりもイメージが湧きにくいです。」
仲田「そうですよね。簡単に言うと『目をつぶっていても、自分の身体がどうなっているか分かる力』です。代表的なものとして、位置覚、運動覚、振動覚などがあります。なお、重量覚(重さの感知)や深部圧覚(筋肉の奥への圧迫感)なども関連する感覚として挙げられることがあります。」
位置覚:「今、手がどこにあるか」を感じる力
さくら「なるほど!まずは、位置覚から教えてもらえますか?」
仲田「いいですよ。位置覚は『関節が今どのくらいの角度に曲がっていて、空間のどの位置にあるか』を感じる感覚です。障害されると、目で手足を見ないと動かせなくなります。」
さくら「ADLだと、どんなことで困りますか?」
仲田「背中に手を回す動作や、服の袖に手を通す動作ですね。目で確認できないお尻を拭く動作なんかも、手が上手く届かなくなったりします。」
位置覚が障害される場面のADL例
背中に手を回す(更衣動作)
服の袖に手を通す(更衣動作)
お尻を拭く(トイレ動作)
→「目で見えない部分」の動作に影響が出やすいです。
さくら「見えない場所のADLに直結するんですね!」
仲田「その通りです。評価としては、閉眼で『母指探し試験(片方の手で、反対の手の親指をつかみにいく)』や『模倣試験(片方の手と同じポーズをもう片方の手で作る)』などを行います。」
臨床メモ
模倣試験は「どのくらいのズレがあるか」を定性的に観察するのがコツ。角度のズレが大きいほど、更衣やトイレ動作での代償戦略(目で手を追う)が必要になるとみていいです。ベテランはここで「何度くらいズレているか」を感覚的に評価しています。
運動覚:「動きの方向・スピード」を感じる力
さくら「すぐに現場で使えそうです!次は運動覚ですか?」
仲田「はい。運動覚は『関節がどの方向に、どのくらいのスピードで動いているか』を感じる感覚です。障害されると、歩く時に足がどれくらい上がっているか分からずつまずいたり、コップに手を伸ばす時に距離感が狂ったりします。」
さくら「位置覚と似ていますが、こちらは『動き』を感じるんですね。評価はどうやりますか?」
仲田「閉眼で、患者さんの指を上下に動かして『上ですか?下ですか?』と当ててもらいます。この時の超重要ポイントなんですが、指の腹や背中を触って動かすと、皮膚の感覚(触圧覚)がヒントになってしまうので、必ず指の『側面』を持って動かしてくださいね。」
さくら「あ!たしかに!皮膚の感覚で分かっちゃいますね。気をつけます!」
⚠️ 評価の落とし穴
指の腹・背中を持って動かすと、触圧覚の影響で「感覚がある」と誤判定しやすい。必ず指の側面を持つこと。これ、意外と見逃されています。
重量覚・深部圧覚:「力のコントロール」に関わる感覚
仲田「次は、重量覚と深部圧覚です。重さや、筋肉の奥の方への圧迫を感じる力です。これが障害されると、力のコントロールが難しくなります。」
さくら「力のコントロールというと、握力とかですか?」
仲田「そうです。例えば、紙コップを強く握りすぎてグシャッと潰してしまったり、逆にペットボトルを落としてしまったりします。立っている時に足の裏にかかる体重が分かりにくくて、バランスを崩す原因にもなります。」
さくら「なるほど!物を持たせて比較したりして評価できそうですね。」
臨床メモ
「潰しちゃいけない」紙コップを持ってもらう簡易評価が現場では使いやすいです。指示なしに軽く持ってもらって、どれくらい潰れるか/落とすかを観察する。道具がなくてもベッドサイドで即実施できます。
振動覚:リスク管理に欠かせない感覚
仲田「最後は振動覚ですね。臨床では音叉(おんさ)を足首などの骨の出っ張りに当てて、ブルブルする振動を感じるか確認します。」
さくら「振動ってADLに関係あるんですか?」
仲田「直接的な動作というより、リスク管理として重要なんです。振動覚は、糖尿病性神経障害などで『一番最初に鈍くなりやすい感覚』と言われています。これが落ちていると、足のケガに気づかないリスクがあるなど、予測が立てられます。」
さくら「感覚って奥が深いですね!今日も頭が整理されました!」
仲田「他にも質問等あれば療活の時に実際の物をみせますね。」
さくら「ありがとうございます。」
臨床アクションプラン|今日から使える評価の手順
位置覚の評価:閉眼で母指探し試験(片手でもう片方の親指をつかみにいく)を実施する
位置覚の評価:閉眼で模倣試験(片手のポーズを反対の手で再現させる)のズレ量を記録する
運動覚の評価:指の側面を持ち、閉眼で「上か下か」を当ててもらう
重量覚の評価:紙コップや軽い物を持たせ、力のコントロールを観察する
振動覚の評価:音叉を内踝など骨の突出部に当て、振動の感知を確認する
糖尿病のある患者には必ず振動覚を確認し、足部リスクを記録する
評価チェックリスト|深部感覚スクリーニング
更衣動作で「袖に手が通せない」「背中に手が届かない」という訴えがあるか
歩行中につまずきやすい・足が上がっているか分からないと訴えるか
物を持つ際に「強すぎる・弱すぎる」力加減のムラがあるか
立位でバランスを崩しやすい・足底感覚の訴えがあるか
糖尿病の既往があり、足部の傷に気づいていない可能性があるか
評価時、指の腹・背ではなく側面を持って実施できているか
まとめ
1. 深部感覚の代表的な分類は「位置覚・運動覚・振動覚」。重量覚・深部圧覚なども関連する感覚として挙げられます。
2. 深部感覚は「見えない部分のADL(更衣・トイレなど)」を直接支えている。
3. 評価時は触圧覚がヒントにならないよう、指の「側面」を持つなど細かい工夫が命。
いかがだったでしょうか。視野が広がり少しでも役に立てたのなら幸いです。次回は〇〇についてを予定しています。
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