【育児】子どもは毎日「初めて」を生きている
夜中の静かな部屋。
小さな寝息だけが聞こえる。
腕の中で眠る娘の顔を見つめながら
「今日も一日終わったな」と、
そっと息をつく。
頬はまだ赤ちゃんらしくふっくらしていて、
小さな手は僕の服をぎゅっと握ったまま。
この手は、いつまでこうして
僕を頼ってくれるんだろう。
そんなことを考えるようになった。
生まれる前は、
子どもの成長が楽しみで仕方なかった。
早く笑う姿が見たい。
早く寝返りしてほしい。
早く歩く姿を見てみたい。
「早く、早く。」
そんな未来ばかり見ていた。
でも、親になって初めて気づいた。
子どもの成長は、
「できること」が増えることだけじゃない。
「もう見られなくなる景色」が
増えていくことでもある。
昨日まで着ていた小さなロンパース。
気づけば袖が短くなっていた。
何気なく引き出しにしまおうとして、
ふと手が止まる。
「あれ、この服、こんなに小さかったっけ。」
たった数か月前までぴったりだった服なのに。
それだけで、胸の奥が少しだけ締めつけられる。
抱っこをすると、前より少し重くなった体。
腕は疲れるようになったのに、
不思議と「重たくなったなあ」とうれしくなる。
そのうれしさのすぐ隣で、
「この重さも、いつか恋しくなるんだろうな」
と思う自分がいる。
子どもは毎日、「初めて」を生きている。
初めて笑った日。
初めて寝返りができた日。
初めて僕の顔を見て、
声を出して笑ってくれた日。
そのどれもが、一度きり。
「また見たい」と思っても、
同じ初めては二度とやってこない。
だから、うれしいのに少し寂しい。
でも、ある日ふと気づいた。
初めてを生きているのは、
子どもだけじゃなかった。
僕も毎日、「初めて」を生きていた。
初めて我が子を抱っこした日。
あまりにも小さくて、
落としてしまわないように腕に力が入った。
初めてオムツを替えた日。
テープの位置さえ分からなくて、
何度も説明を見返した。
夜中に泣き止まない日。
抱っこして、歩いて、歌って。
それでも泣き止まなくて、
「どうしたらいいんだろう」と
部屋を何度も往復した。
親になれば自然と
できるようになると思っていた。
でも実際は違った。
分からないことばかりで、不安ばかりで。
「これで合ってるのかな。」
その答えを探しながら、今日まで歩いてきた。
きっと、親も毎日「初めて」の連続なんだ。
子どもが初めて立ち上がろうとして転ぶように。
親も初めての育児で何度もつまずく。
それでも、また立ち上がる。
子どもの笑顔に励まされながら。
気づけば、子どもに
育てられているのは僕のほうだった。
そして、いつか。
この子は僕より先に玄関を飛び出していく。
「行ってきます」と
ランドセルを背負う日がきて。
友達と遊ぶほうが楽しくなって。
手をつなぐことも少なくなって。
「パパ、見て!」と呼ぶ声も、
いつしか聞こえなくなるのかもしれない。
そう思うだけで、胸がぎゅっと痛くなる。
だから今、この小さな手を握れること。
眠る前に抱っこできること。
目が合うだけで笑ってくれること。
その全部が、奇跡みたいな時間なんだと思う。
完璧な親にはなれなくていい。
家事が終わらない日があってもいい。
思うように笑えない日があってもいい。
それでも今日、この子を抱きしめた。
「大好きだよ」と心の中で何度も思った。
それだけで、この一日は十分なんだ。
子どもは今日も、
新しい「初めて」を生きている。
そして親もまた、
一度きりの今日を生きている。
この何気ない一日が、
いつか「あの頃に戻りたい」と思う日になる。
だから今日くらいは、少しだけ手を止めて
目の前にいる、
この小さな命を
ゆっくり見つめていたい。

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