「以心伝心」は在宅ワークの敵か - 日本型コミュニケーションの新たな挑戦について考えてみる
以心伝心 / 一を聞いて十を知る / 察し / 空気を読む / 和 / 同じ釜の飯を食う
在宅ワーク、社会的距離でこの以心伝心の日本の文化、日本の美徳が今後どうなるのかを問われているような気がしています。
愛する人が自分のコーヒーの好みを知っていて、何も言わずに持ってきてくれること、同僚と顧客ミーティングに出て、自分が困ったときに手を差し伸べてくれる阿吽の呼吸、悩んでいる大切な人がいたときに、敢えて何も言わずに時間を共有すること。相手をよく知っていて、相手を思うが故にできる先回りだと思います。
日本人のコミュニケーションは本当に高尚だと思います。外国人が日本語を学ぶことが非常に難しいのはここにあるのではないかと思います。コミュニケーションが日本語という言語に依存していない部分が多いからかもしれません。アメリカの人類文化学者のEdward T. Hallによると、日本は高脈文化 (ハイコンテクスト文化) に分類されるそうです。
ハイコンテクスト文化:
人種・文化的な多様性があまりない日本の場合、話し手と聞き手との間に共通項が多く、言葉を尽くさずとも何となくわかりあえる、暗黙知がある、という考え方
(↔︎ ローコンテクスト文化: ドイツ、アメリカ、イギリス等)
海に囲まれた島国で、場や空気を共有してコミュニケーションをしてきた日本でも、在宅ワークや社会的距離が当たり前になりつつあり、新しいコミュニケーションへの挑戦に直面しているような気がしています。
今日は少し大きなトピックではありますが、今後も日本型コミュニケーションで課題になりそうな、以心伝心の文化について考えていきたいと思います。決してこれが正しいというものではなく、私が勝手に考えた要素ということで見ていただければ幸いです。
1. 以心伝心のメカニズムを考える
まず、以心伝心が起こる仕組みについて考えてみました。日本語で察しや以心伝心のコミュニケーションは、以下を元に行われているような気がします。
1. 日本的な文化、ビジネス作法をお互いに知っていて当たり前というの前提があっての会話 (察し、空気を読む、場をわきまえる、和、謙遜 etc.)
2. 相手の過去の行動パターン、習慣
3. 過去の事象に対して、相手が感じた気持ち
4. 相手が望んでいるゴール、結果
1を当たり前として、2と3を過去のコミュニケーションの中で記憶をしておいて、なるべく4を目指すように進めるという形ではないかと思います。相手の事を思い、相手本位で和 (harmony)を保ち、波風を立てることなく、事が無いように (無事に)、円滑にコミュニケーションを進めるところがあるように思います。
このコミュニケーションを繰り返す事で、「ここまでは相手はわかっているだろう」というラインを作っていき、そこを言わなくてもわかるという「信頼」として繋がって行くような形かと思います。
2. どこまで言語化するのかという線引き
教員時代に勉強が苦手な生徒がいました。勉強ができなくてやりたくないのはもちろんあるけれども、やらなければいけないことはわかっている、と話していました。しっかり話してみると、親に「勉強しなさい」と言われること自体が嫌だと話していました。勉強をやろうと思った時に、親に「勉強しなさい」と言われてやる気がなくなるということは、よく聞く話ではないでしょうか。この生徒の場合、私は本人と親を含めた3者面談をしました。7時になったら勉強すると約束を決めて、お母さんと生徒と一緒に署名しました。その時間以外はお母さんが「勉強しなさい」というのを我慢してもらいました。
お母さんの気持ちもわかります。勉強していない姿を見ると不安になり、ついつい不安が言語化してしまって言ってしまうということがあるかと思います。何も言わなくても自律的に行動を目指すには、習慣や内的なモチベーションが鍵になるような気がします。
3. 言わないでもわかる vs 言わないとわからない: 言語化の背景の気持ちに向き合う
在宅ワークだと、見えない分どうしても言語化することが増えるかと思います。役割分担をすればするほど、メール、チャット、Slack、電話、Zoom等で確認作業としての言語化が進むと思います。言語化の背景で起こる気持ちを少し考えてみました。
言う側の気持ち:
「ここまで細かく言わないとわからないのか、言わないでもわかってくれよ」
↓
お互いのゴール達成のための歩み寄り、相互理解
↓
面倒くさがらずに言語化した確認、信頼しているけれども念のために言う
言われる側の気持ち:
「おせっかいだな、言わなくてもわかるのに、信頼されていないのか」
↓
お互いのゴール達成のための歩み寄り、学びに対する謙虚な姿勢
↓
言語化してくれたことへの感謝
そもそもオフィスにいない中でのタスクをするのが当たり前のWithコロナ時代なので、意識と習慣の変革も必要になるのではないかと思います。スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』に「成功者は感情を目的意識に服従させる」とありましたが、以心伝心を当たり前と思わず、共通ゴールを見据えて課題に取り組むという姿勢が必要になってきているかもしれません。
4. 海外とのコミュニケーションに「以心伝心」を持ち込まない
海外とのコミュニケーションも増えてきていると思いますが、ここで日本型コミュニケーションを持ち込むとうまくいかないこともありそうです。以前に外資系IT企業で働いているアジアパシフィックを統括するイギリス人の方が、日本人との会話で困った経験があるという話について書かせていただきました。英語では尚更言語化されないと伝わらない可能性があるので、共通のゴール達成に向けて、英語でも細かく言語化をしていく必要があるかもしれません。
5. 現在の段階で私が考える解決策
・共通の明確なゴール設定
・ゴール達成に向けて計画を立て、達成までのプロセスを可視化する
・言語化を面倒くさがらない
・ダイレクトなコミュニケーションに感謝する:直接的な表現は攻撃的に感じる事があるかもしれないが、それをゴールに向けたショートカットと受け取れるようにする。
・相手が言語化してくれたことに感謝する:言語化されるということは自分の習慣があいてに伝わっていない可能性があると考えてみる。あるいは、ここまではわかっているから言わなくてもいいと相手に伝える。
・学びに対する謙虚な姿勢:在宅の方はオフィスに比べて、周りから学ぶ機会が少ないのは確か。言語化された指摘に感謝できると自分のリフレクションになる。
・自分の行動や思考の習慣を意識する:言わなくてもいい事を他人に言われるのは、自分の習慣が相手に伝わっていない可能性がある。理解度や仕事における到達度を行動で示し、言葉でも「ここまではわかっている」と相手に伝える。
・他人の行動や思考の習慣を意識する:人の習慣を見て自分は何をするべきかを決める。
・信頼関係の再考:自分と相手の習慣や行動パターンを知る事で、それが関係の間の信頼につながる。
・内的モチベーションの強さを意識
・自律的な行動に感謝
最後に
今後もこの奥ゆかしさや文化は残っていくと思いますし、言わなくても伝わる文化は私は好きです。ただ、仕事やタスクでバーチャルにコラボレーションをする場合は、今までの当たり前を再考し、日本人の精神構造のパラダイムシフトや、気持ちや心構えの変革、いわゆるEmotional Transformation (EX)(感情のトランスフォーメーション、勝手に作りました)のようなものが必要になっているような気がします。まだまだ結論とは程遠い状態ですが、今後も再考しながら実践していきたいところです。
今日はトピックが大きなところであることもあり、いつもより少し長くなってしまいました。あくまで現在の段階で自分が考えたことに過ぎませんが、何かの参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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