私のひだりをかえして・・・ 第七話 「完結長編小説」
燃える木枯らし
2014年10月5日
この1カ月足らずで男子生徒が3人も一気に亡くなったと事実は日本各地に報道され、「呪われし学校」とか「死神に取りつかれた生徒たち」なんてマスコミから酷い書き方をされた。人の気も知らず、何が報道の自由だ。女の子の辛い思いやオトコの汚さをきちんと取り上げて社会問題にしてくれれば未然に防げる犯罪もあったのに。それに、事件を掘り返されたくない私としては目の上のたん瘤のような苛立つ存在でしかない。下校途中に
『呪われた学校なんて言われていますが、どういう気持ちですか?』
なんて話し掛けるデリカシーのかけらも無いクズテレビ局のリポーターまで現れ、精神的なショックから登校できなくなる生徒が増えたため、事件から10日ほど経った今日から学校は1カ月間の臨時休校を決めた。
私は大切で可憐で愛おしい美並への粛清がなされれば、他はどうでもいい。美並とは毎日電話で会話をし、彼女の心がこれ以上傷つかないように精一杯配慮しながら、最後の粛清計画を考えていた。
(葵の家は一軒家で父、母、祖母、兄、葵の5人暮らし、葵を先に片づけるか、兄を先に片づけるか。兄は高校を出て就職もせずバイトに行ったり行かなかったりでフラフラしているのでターゲットとして絞りにくいし、葵も葵でこの臨時休校時に何かしら接点を持つにしろ、日頃からあまり絡みの無い相手なので動きにくい、どうする・・・)
今までの人生で「ここまで考えたことはない」というくらい、食べている時もお風呂に入っている時もひたすら考えに考え抜いた・・・が、一向に策は出てこない。あまりに考えすぎて頭痛がしてきたので「気分転換にテレビでも見ながらお菓子をつまもうか」と立ち上がったその時、スマホが鳴った。美並からの着信だ! 私はなんだか嬉しくて精一杯明るい声で
『みーなみー! 元気?』
と出たのだが、電話の向こうの声は驚くほど沈んでおり
『私、死んじゃおうかな・・・』
という言葉を私の耳ははっきりと聞いた。
『待って待って、なに? どうしたの? 何でも相談に乗るから言ってみて!』
泣いている声が聞こえる・・・私は居てもたってもいられなくなって
『今から美並の家に行っていい?』
咄嗟に口に出た。
『うん、ありがとう』
言葉を聞くが早いか、私はパーカーを羽織って彼女の家に向かった。なんだか「自分が絶対にそこに行かなくてはならない」という変な使命感でものすごく走った記憶がある。息を切らしてインターホンを押すと玄関の扉から彼女が暗い表情で出てきた。
『いらっしゃい・・・上がって』
心ここにあらずな口調で私にそう言った彼女の後をついて階段を昇り部屋に着くと、そこは可愛らしい「これぞ女の子のお部屋」という教科書の様な場所で、すごくいい匂いがした。部屋に入って彼女が扉を閉めた瞬間に私はなんだか堪らなくなり、彼女を後ろから抱きしめた。
『美並、ダメだよ・・・美並が死んだら嫌だよぅ・・・』
俯いて両腕をだらんと垂らし、振り返ることもなく彼女は言う。
『だって、私に関わった人たちがどんどん死んでるんだもん、自分が生きていると死神が取り付いてしまうんじゃないかって思っちゃって。だから生きてちゃいけないんじゃないかって思ったの・・・』
『そんな事ない、美並は被害者じゃん! 私も女だし被害に遭ったことあるから分かるけど、心の傷は消えなくても自分のせいだなんて思っちゃ絶対ダメ! 私もそうやって勇気づけられて生きてきたんだもん』
『次は私の番かもしれない、私が狙われているかもしれない・・・』
(美並はイモたちの急逝が私の犯行である事を知らないから、自分もターゲットになってしまうのではないか、という点で怖がっていたのか)
『美並、大丈夫。あなたは絶対に死なせやしないわ、私が守ってみせる! だってほら、私だって元気に目の前に居るじゃない? 大丈夫よ!』
その何の裏付けもない言葉に共感してくれたのか、彼女は振り向きざまに私に抱き着いて泣いた。
『大丈夫、大丈夫だから・・・』
私は彼女が落ち着くまで優しく愛おしい髪を何度も何度もゆっくりと撫で、お母様が用意してくれたカレーライスを彼女の部屋で一緒に食べて帰路に就いた。
(美並があんなに不安になっている・・・もう終わらせなきゃいけない!)
私の中に使命感と焦燥感の入り混じった感情が、まるで木枯らしの様に冷たく吹きすさみ心の温度は一気に下がり別人のように冷静に、目的を果たす決心が付いた。もうあれこれ考えている暇はない、粛清を迅速に終わらせてその後誰も被害者が出ないという図式を早く作り出さなければ彼女はずっと怯え傷ついたまま生きなければならない。
(こんなバカげた茶番は今夜で終わりにしよう)
帰り道にある古びた居酒屋さんの前に置いてあるビール瓶に目を付けた私は
『すみません、理科の実験に使いたいので外にある瓶を2本譲っていただけないでしょうか?』
気難しそうな顔をした店主に麗スマイルで尋ねてみた。
『学生さんかい? いいよ、好きなだけ持っていきな!』
渋みがかった表情が一変して穏やかニコニコ顔になり、快く答えてくれた。ずいぶん昔に「ビール瓶はお金になる」と聞いた事があったのでお支払いするつもりだったのだが、ここはご厚意に甘えさせてもらって
『ありがとうございます、すっごく助かります。店長さん優しい方ですね!』
お世辞を1つ言い、気持ちよく譲ってもらったビール瓶を持ち帰ると準備に取り掛かった。
作るものは火炎瓶、中身はガソリンと灯油を8:2の割合で合成する。当初はガソリンだけにしようと思ったのだがネットで調べてみたところ、「ガソリン100パーセントでは揮発性が高すぎて、ライターで火をつけた瞬間に手の中で爆発する可能性が高い」という記事を見つけたのですこし揮発性の低い灯油を混ぜる事にしたのだ。
そしてもう1本、こちらは爆発的に燃えて逃げる間もなくすために作った特製爆薬。ガソリンの中に発泡スチロールを染み込ませてグルグルかき混ぜると、ドロドロとした粘着性の液体になる。これを火が着いた建物の中に投げ込めば、爆弾の様に一気に燃え広がるという仕組みだ。ガソリンは母親の車から灯油用のポンプで抜き取り、その匂いに頭がガンガンするのをこらえながらも無事に2本作り上げた。
それに縦20センチ横5センチほどの布を用意して上から3センチぐらいの所で結び目を作る。それの長い方を瓶に入れ、瓶の口に結び目を作って機械栓をして上からビニールテープを巻く。さらに割れやすい様にビール瓶の表面に釘で細かく傷をつけておくことが必要だとも書いてあったので、念には念を入れて時間を掛けて細かい傷を入れていった。
(決行は深夜2時、葵のご両親とおばあちゃんには申し訳ないが一緒に旅立ってもらおう)
もの凄く恐ろしい事を考えているはずなのに、もはや私の思考回路はマヒしているらしい。何とも思わないどころか、「どのように燃え広がり炎はどこに向かって進むのか」などを無料でアップされている実験動画などを見ながらシミュレーションし、楽しみにさえしているような自分がいた。
深夜2時、葵の家の前に到着するとまだ明かりがついている部屋があり、私は念を入れて電気が消えるまで待った。待つこと1時間半、時刻にして午前3時半頃、ようやく家中の電気が消えたのを確認した私は更に念を入れてそこから15分待ち、持ってきた粘着性のない火炎瓶の布の部分にライターで火をつけ、1階の窓に目掛けて思いっきり投げつけた。
『ガシャン!』
という音と共にビール瓶は窓からガラスを突き破って入り、真っ黒な煙と共に叫び声が聞こえた。そして炎はガソリンの力を借りて瞬く間に2階へと駆け上る、誰かが2階のベランダの大きな窓を開けて黒煙と共にベランダに出て来るまでほんの数秒、その瞬間に粘着性のビール瓶爆弾を2階に向かって投げる。
『バン!』
爆発音と共に瞬く間に大火災となった。「計画通り」となるはずだったのだが準備の段階で私の服に垂れていたのかもしれないガソリンに、引火をするというまさかのハプニングが起こった。左腕の先の部分で、慌てて消そうとブンブン振るも火の勢いは消えることなく肩の方まで昇ってきて、熱くてたまらず地面にゴロゴロと転げまわった。隣近所からあっという間に人が集まり、左腕が激しく燃えている私に誰かが消火器を掛けて鎮火させてくれたものの、葵の家からは誰も出てくる隙間もないほど炎が噴き出してすさまじい熱風が吹き荒れている。
程なくして数台の消防車が消火活動に駆け付け、左腕に大火傷を負った私は時を同じくして駆けつけた警察官によって地面に押さえつけられる。
その時私の目に入ったもの、それは男子の学級委員としてクラスを束ねている宮下と美並が手を繋いで急ぎ貼られた規制線の外から私を見降ろしている姿。
(なんで、美並と宮下が・・・)
大声で叫びたかったが私もかなり高温の煙を吸い込んだせいか、喉が焼けるようで声が出ない。頭の中に一気に湧き出した疑問符をどこにもやれないままに運ばれる途中で気を失ってしまった。
2014年10月7日
どれくらいの間意識が戻らなかったのか全く分からないが、目を開けるとそこはドラマなどでよく見る「集中治療室」と呼ばれる場所であろうことは何となく分かった。体中いたるところに管が着いており、身体が全く動かせない。たまたま見回りに来た看護師が私の目が開いている事に気づき、ナースコールを押した途端に医師やら他の看護師やらが何人も部屋に押し寄せて、目を無理やり開いて光を当てたり血圧計の数値をメモしたりと辺りは騒然となった。
その翌日、ある程度回復し集中治療室から警察病院へと移されるにあたり、私は残酷な自分の姿に絶句する。
(左腕が無い、左胸も無い)
リハビリを受け、医師から「長期の拘留に耐えられる状態」と判断を受けた私は正式に放火殺人の容疑で逮捕、起訴される事となる。
警察からの取り調べの際に犯行動機を聞かれたが、
(腕と胸を無くしながらも粛清を行った自分が正義として報われないのはおかしい、世の中の男どもはみんなイモだ。粛清されるべき人間が粛清されて何がおかしい!)
と何度聞かれても同じ答えを返した。調書にもそのように記載され、その後検事が取り調べ調書を持って私の所にやってくる。
『調書には自分は粛清を行ったまでで、周囲が自分の事を褒め称えるべきだ。自分は女性全般の味方であり、性の対象としてしか女性を見る事の出来ないイモどもは粛清されて当然。と書かれているが、間違っていないかね?』
と訊かれるも、
『しつこいわね! 乱暴されて被害を訴える事の出来ない女性が世の中にどれだけいると思っているのよ! 訴えたところで思い出したくもない事をベラベラ喋らされて心に深い傷を負って、暫くしたらイモは平然とシャバに出てくるのよ? 考えただけで吐き気がするわ、そんな奴らが同じ過ちを起こさない為にも私がきれいさっぱり粛清してやったまでの事でしょ、そんな騒ぎ立てるほどの事でもないわ! どうせ家庭裁判所行って少年院入って保護観察処分でしょ? 出てきたら性犯罪リストを作って、片っ端から正義の鉄槌を下してやるわ、右腕1本でも十分よ!』
と高笑いして検事を睨みつけた。担当検事は冷静に
『そうですか、全く反省の色は見えないですね。それに私が聞いているのは今回の放火殺人事件の事なのですが、貴女の言葉からは男性に対する酷い嫌悪感と、それ以外にも何かしらの犯行を隠しているようにも聞こえるのですがいかがなのでしょう?』
と返してきた。
『あれだけ用意周到にやったのに、この私がミスをしてこんな身体になって。高木・杉原・大竹の時だってバレずにうまい事通り過ぎてきたのに小さなミスが大きな代償だったわ、そう考えると負傷しながら戦った女神、ジャンヌダルクも大変だったでしょうね。もしも私のやったことが罪だというなら、ちゃんと少年院で罪は償うから出所後に他のイモどもを粛清できるように私の左腕を用意してちょうだい。今の技術ならそれくらい出来るでしょう? 警察が変態どもをのうのうとのさばらせておくのなら、私が裁いてやるわ』
などと、余罪まで自分の犯行であると吐露し、退所後の殺害決意も自信満々に述べているのだ。そして検事から最後の質問として
『全く反省はしていないのですね?』
と訊かれたのに対し、
『うるさいわね、反省なんかするわけないじゃない! さっさと弁護士と交代しなさいよ。私は怪我人なの、あんたが私の腕を返してくれるわけ? 2人殺すも3人殺すも一緒じゃない、人間どうせみんな死ぬんだからそれがちょっと早かったか遅かったかの違いでしょ? でもそうね、1つだけ反省すべき点があるとするならば、次回は今回みたいなヘマはしないわね。両腕無くなっちゃったら粛清も出来ないものね』
と、左肩の痛みをこらえながらも笑わずにはいられなかった。
2014年12月1日
そして地方裁判所での被告人質問。
『被告人は同校の男子生徒3名と葵家の5名、類焼による7名も含めると15名という命を奪った。そして調書によると全く反省の意思は見られず、退所後は更なる粛清という名のもとの殺害予告をほのめかしていると。そして2人殺すも3人殺すも一緒、人間どうせみんな死ぬんだからそれがちょっと早かったか遅かったかの違いだと述べていますが、この事実に間違いありませんか?』
これに対し、
『私は未成年だから少年法で守られるわけ! だから出所したら今度は捕まらない様に粛清してやるわ、腕と胸を失いながらも女性の味方として活躍しているのだから世論やメディアも、この正義のヒーローにもっと注目して欲しいわね。もう今回の目的は果たしたんだから放っておいて!』
という身勝手極まりない態度を取った。
(今回の様な無差別放火殺人は通常死刑、でも私はまだ18歳の高校生だから少年法で守られる。イモ3人も葵たちの粛清も美並の為にやったのに、日本の法律は弱者の味方じゃないの? 正義の為の粛清なのになんで私がこんな目に)
国選弁護人が付いてくれたのだが、私は弁護士の話すことに一切耳を貸さず、学級委員の宮下と美並が手を繋いで私を見降ろしていた姿ばかりが思い出され、やり場のない怒りに震えていた。
その後私は殺人を犯した事により身柄を家庭裁判所から地方裁判所に送検され、殺人罪に加えて放火による無差別殺人の罪で起訴される。
こちらでも被告人質問が行われたが、
「いつどこでどの様に計画して犯行に及んだのか」まで洗いざらいまるで武勇伝の様に語ってみせた。
『被告人は自分が犯した罪についてどのように考えていますか?』
と問われ、
『は? 何とも思ってねーよ、美並の仇を取ったまででしょう? 女の子の身体が性欲という興味本位で傷つけられて、男がどう責任とれるっていうのよ? 女性はね、心の傷も身体の傷も一生背負っていかなければいけないわけ! あんたら男に分かるもんですか、命を持って償って当たり前でしょ? というより、あんたら警察の人間が甘いからこういう性犯罪で女の子が泣き寝入りしなければならない世の中なんでしょう? ふざけんじゃないわよ! あー、くだらないくだらない! 私は未成年だから少年法で守られるわけ。こんな退屈な裁判とっとと終わらせてくれない? これでもまだ怪我人なんですけど!』
これを聞いた検察側の言い分。
『裁判長! 見ての通り被告人に反省の色が無いどころか、出所後の殺害計画まで企てており、責任能力が十分に認められます。また動機や残虐性等を考慮するに、極刑が妥当だと思われます。以上の理由により、被告人に死刑を求刑します!』
閉廷後、「死刑」という言葉を聞いた私は今にも担当弁護士に襲い掛かりそうな勢いで訊いた。
『ちょっとどういうことよ! 私は未成年なのよ? せいぜい少年院が妥当でしょう、それに私は美並を傷つけたイモどもを粛清しただけ。それが何で死刑なのよ!』
『何度も話をしてきたけれど耳に届いていなかったみたいね。「永山基準」というものがあって、昔未成年凶悪犯罪において死刑判決が下された基準となるものがあるの。今回の事件は同級生を3名殺害し、更に葵家を含む住宅3棟の住人が焼死、あわせて15名を殺害させた非常に凶悪な犯罪なの。控訴してみるけれど、恐らく死刑判決は覆らないと思うわ』
担当弁護士から更に追い打ちを掛ける一言。
『調査しましたが、美並さんが複数の男性から暴行を受けたという事実はないという報告が上がっているわ。これについて話してくれませんか?』
この言葉を聞いて固まった、しかし
『そ、そんな馬鹿な! 美並は葵の「パジャマパーティー女子会をしよう」という誘いによって高木・杉原・大竹に暴行され、さらに葵の兄がそれをスマホで録画して「口外したら動画を公開する」って脅されて・・・だって私、一緒に婦人科に行って処置するのについて行ってあげたのよ? その証拠があるのに何でそんな訳の分からないことを言われなくちゃいけないわけ? そうだ、美並は繊細な女の子なの! 検察の人たちがそういう風に仕向けてるのよ、だって思い出したくない過去を聞きまわっているんでしょ? あの子はそんなこと話したがらないに決まってる! 女の子の気持ちも考えずに言われた事だけ取り上げるなんて検察もたいがい頭悪いわね、全くバカげた推測でものを喋らないで欲しいわ!』
と声を荒げて捲し立てた。
『確かに本人への聞き取り調査から「容疑者には婦人科に付き添ってもらいました」と調書は取れているわ。でもそれは「彼氏である宮下君の子どもさんを身籠ってしまった為、まだ在学中という事でしかるべく処置された」と調書には書いてある。貴女、本当に彼女が暴行されるところを見たの? 若しくはその録画されたと言われる動画を見たの?』
『そんな・・・美並が私を騙す理由が分からない、だってあの時「ごめんね」って何度も謝られてお金も無いからって私が出してあげて、じゃあ私の粛清は何だったの? 葵の家にまで火をつけたのは何の為だったの?』
『だから、そこが分からないから最初から「何のために無差別殺人を犯したの?」って聞いているじゃない。葵家を火炎瓶で放火して家族全員焼死させてしまうなんて凶悪極まりない、しかも私は検察側から男子生徒3名の死にあなたが関与している事を聞いたの。もう1度言うわね、つまりあなたは8名の全く罪のない人間を自分の思い込みで無差別に殺害した、そして葵家の両隣りに住む3人の家族と4人の家族も巻き添えにした。合計で15人、警察や検事の聞き取り捜査にも全く反省の色は見られないという事で、判決はまず間違いなく「死刑」となるでしょうね・・・』
私は愕然とし、弁護士に呟いた。
『控訴しなくていいわ、もう・・・死刑でいい』
聞き込みや調査は当然いろいろな人に行われるわけで、私の母親は1度も病院や面会に来なかった。
『知りません、あんなの娘でも何でもありません』
と言っているらしい、私は弁護側からその言葉を聞いた時に腹を抱えて大笑いしたのを覚えている。
その数日後に、
『お母様が自ら命を絶たれました・・・』
と沈痛な面持ちで担当弁護士から告げられた時も、
『ああ、そう。娘がこれだけ闘っているというのに根性の無い母親ね!』
と私は切って捨てた。「知りません」なんて言われたのだからその瞬間から私の中で親子の縁は切っているつもりだし、どうして欲しいとも思ってはいない、だから彼女が死のうが生きようが別にどうでも良かったのだ。
考えれば考えるほど頭がおかしくなりそうだ、なぜ美並は私を頼ってきたのか、なぜ美並は私を陥れたのか、なぜ美並は・・・
(美並をぶっ殺してやりたい・・・)
『主文、被告人を死刑に処す』
判決は求刑通り死刑、控訴しなかったので私の身柄は死刑囚として拘置所に移される事となった。
