会計・経理でAIを使う時の留意点


生成AIはこれまでは考えられない速さで実務の有効なツールになっています
しかし現場に取り入れようとしたとき、
思わぬ落とし穴に足を取られる場面も多々あります。
だからと言って
AIと距離を置いたり排除したりするのもリスクがあります。
私自身、
マネーフォワードとClaudeのMCP連携で
管理会計の自動化を自社データで構築しています。
その実務経験と照らし合わせながら、
現時点でのAIを使う時の留意点を整理してみます。
あくまでも現時点での判断です。
生成AIや自立型AIのこれからの進化によっては
判断が大きく変わっていくものです。
AIは自動化計算機として使うものではない

AIの本質理解です。
生成AIは、
電卓やスプレッドシートのような計算ツールではありません。
膨大なデータから
「次に来る言葉の確率」を
統計的に予測している装置です。
「100 − 2 =」の後には
「98」が来る確率が高い、
と学習しているから「98」と回答してきます。
そこには算術のルールに基づく推論はありません。
最近はこのような事象は減ってきていますが
AIに計算を頼むと、
もっともらしい嘘の数字が返ってくることがあります。
(ハルシネーションと呼ばれています)
私の経験では、
予算と当期実績、前期実績をAIに投入して分析をさせたところ、
数字が合わない失敗が多々あります。
(何度も言いますが失敗は段々減っていますがゼロではありません)
これはAIが欠陥なのではなく、
ふさわしい場面で使うべきということです。
計算は既存の基幹システム、スプレッドシート、データベースに任せ、
AIには「計算済みの結果」だけを渡すというのが実務での使い分けです。
定量と定性の両方を掛け合わせる

計算済みの定量データ(数字など)だけでなく、
定性データ(社内レポート、各種資料、アジェンダなど)を抱き合わせでAIに読み込ませることで
数字の羅列ではない、言葉も充実したレポートにすることが可能です。
▶ なぜこの数字になったのか
▶ 事業環境のどの動きが影響したのか
▶ 今後どの方向に向かうのか
数字の背景にある物語(ナラティブ)が、
レポートに深みを与えます。
経営層への報告資料が、
財務確定の後、手早く作ることができます。
これまでは考えられない速さで、
しかも事業への理解が深いと評価される品質が期待できます。
定量と定性の掛け合わせは、
AIの真価を引き出すためには重要なテクニックです。
役割分担をすること

AIを活かすためには、
既存のツールとの明確な使い分けが必要です。
▶ 構造化データ(数字、表計算):Excel、スプレッドシート、基幹システム、データベースで処理
▶ 非構造化データ(文章、契約書、画像、動画。音源)はAIで処理
▶ 既存のツールは正確なベースを作るため
▶ AIはそのベースをわかりやすく解説したり、ビジュアル化する、壁打ち相手にする
AIは自動計算機ではなく
「人間がデータをを理解するパートナーでです。
この定義によれば、
経理業務は無味無臭な「集計作業」であったものが
彩のある「意味の抽出」へと進化するものです。
私は管理会計について、この考え方を定義しました。
数値そのものは
会計システム(基幹システム)から正確に取り出し、
AIには「特異点は何か?」「なぜこの数字になったのか?」を抽出してもらいます。
役割分担を定義すれば、
AIは驚くほど頼れるビジネスパートナーになります。
AIにはプロセスを細かく分けて情報を渡す

実装上の作法として、
まるっとAIに問いかけるのではなく
必要に応じて「プロセスを細かく分ける」ことがコツです。
データを丸ごと投入して
「何か気づいたことあったら教えて!」というような
大雑把な問いかけでは思ったような結果が得られません。
私が実際にやっているプロセスは
▶ 第1段階:Geminiなど対話型AIで壁打ちやDeep Research、インフォグラフィック化
▶ 第2段階:NotebookLMで要約(総論の理解)、音声・動画・スライドの解説を作成
▶ 第3段階:言葉編、音声編、動画編、インフォグラフィックのどれがアウトプットにふさわしいか選別
このように処理を段階的に分けることで、
ハルシネーションを見つけ出すこともできます。
プロセスを細かく分け、AIに対してフィードバックもする。
このことで自分に合ったAIツール(ビジネスパートナー)に育て上げることもできます。
アウトプットの「素晴らしい見た目」を疑うこと

AIのアウトプットは、
速いだけではなく、
自分がコツコツ作ったドキュメントやスライドより
何倍も素晴らしい見た目の完成度です。
議事録、要約、レポート。
見た目が整いすぎているために、
内容が正しいものと思い込んでしまいます。
ハルシネーション(もっともらしい嘘)が
実務で最も危険だと思います
数字の羅列が美しく整い、
言葉が滑らかに流れている。
その完璧なフォーマットの中に、
事実と異なる数字がひとつ紛れ込んでいたとしても、
気づかないものです。
対外発表や経営判断に使われるレポートであれば、
この一つの間違いが致命傷になります。
AIのアウトプットは、
見た目が完璧であるほど、
中身を疑ってチェックすることが必要です。
アシスタントからエージェントへ、ハーネスの設計

最後に、
これから避けて通れないテーマとして
「AIエージェント」の話です。
現在の多くの人のAI活用法は、
人間が指示を出し、
AIが応答する「アシスタント」の段階です。
しかし、
AI自身がブラウザを操作し、
複数のシステムを横断して業務を完結させる
「エージェント」としての使い方がすでに始っています。

エージェント化が進むほど、
必要になるのがハーネス設計です。
ハーネスとは、
AIが勝手に暴走しないための安全制御の仕掛けです。
▶ どこまで自律的に動かすか
▶ どの段階で人間の判断を挟むか
▶ 失敗した時にどこで止めるか
この設計思想がなければ、
エージェント化は経営そのものを揺るがす事態を引き起こすかもしれません。
技術の進化は日進月歩ですが、
進化のスピードに合わせて、
ガバナンスも進化させる必要があります。
おわりに

生成AIの活用は、単なる効率化の手段ではありません。
「人間がやるべき仕事は何か」を問い直すプロセスそのものです。
AI活用の成否を分ける分水嶺だと感じています。
加茂明夫 琉球ビジネスクリエート合同会社
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