鍼灸と漢方、どっちが効くの?(1)
鍼灸や漢方を紹介するTV番組がふえているようで患者さんからいろいろ質問がきます。
昨日、こういう質問が来ました。
「鍼灸と漢方はどっちが効くの?」
今回は鍼灸と漢方の違いについて、私なりの考えを述べたいと思います。
結論から言うと、どっちも効きます!(笑)
併用すると、なお効果アップ
じつは鍼灸と漢方は同じ理論からスタートしています。
治療に生薬を使うか、はり灸を使うかの違いだけなのです。
近年は薬膳とか食養生とかもいろいろ紹介されますが、これらも根本は同じ考え方です。
これらの治療方法の源流はインド医学であり、そこから中医学(中国伝統医学)へと形を変え発展し、さらに日本に渡ってきた中医学が日本バージョンに進化、熟成したのが漢方です。
そして漢方をベースにした食事療法が食養生、中医学をベースにした食事療法が薬膳とざっくり考えていただければいいと思います。
鍼灸と漢方の違いは
鍼灸はツボ(経穴:けいけつ)に刺激を与えるのに対し
漢方は薬効のある自然界の草木、生物、鉱物を配合した薬を体内に服用する
という違いがあります。
と聞くと、全然違う治療じゃないかと思ってしまいますが、ツボの選定根拠、薬の選定根拠が共通理論で成り立っているのですよ。
なんか、少しめんどくさい話になってきましたね。(笑)

ツボや漢方薬の選定基準、根拠となるのが
「証:しょう」
です。
西洋医学での「診断」に相当します。
ところで、腰痛治療で鍼に行ったのに腕や足にも鍼をされて、「なんで?」と思った経験ありませんか?
腰痛なのだから、腰の近くのツボだけでよいと思いませんか?
腰痛治療のツボは共通するものが大体決まっていて、腰を中心として特につらいエリアのツボを選んで行うことが多いです。
市販のツボ療法の本とかを見ると、腰痛にはこのツボ、肩こりにはこのツボ、というような紹介がなされていると思います。
そこに紹介されているツボは特に重要な、基本的な共通ツボであることが多いので当然外せません。
しかし、「証」をもとにしたツボ選定をした場合には不十分です。
つまり腰回りのツボに加え、離れた部位にもハリやお灸をするのは、その方の「証」に合わせたツボも加えているのです。

砕いた言い方をしますと、痛みが出ている局所の治療に加え、その方の体の大元の異常やバランスの崩れなどを修正するために、全身の状況改善も図ってツボを追加しているとお考え下さいね。
西洋医学的な腰痛の診断、治療との比較で考えてみましょう。
画像検査や血液検査などで原因が特定される腰痛は15%程度といわれます。たとえば坐骨神経痛からの腰痛、椎間板ヘルニアや椎間板すべり症、腰部脊柱管狭窄症などと病名がつくものは画像診断等で原因が特定される腰痛です。
残り85%は原因不明の非特異性腰痛と呼ばれる、ギックリ腰とか慢性腰痛症とかはこれに入ります。
病名なしですから、治療としては痛み止めの注射や湿布を貼って安静に、という対症療法になります。
まぁ、様子を見てまた来てください、のパターンですね。(笑)
東洋医学での腰痛診断では、西洋医学的な病名(診断名)の有無にかかわらず4つの「証」に分類してしまいます。
そしてその「証」をもとに治療方針が具体的に決められます。
様子見ではないんですね。
4つの「証」とは
①風寒(ふうかん)の腰痛
②風寒湿痺(ふうかんしつひ)の腰痛
③腎虚(じんきょ)の腰痛
④瘀血(おけつ)の腰痛
各々についての解説していると、今日中には終わりませんので今回は省略します。(笑)
4つの「証」からは、それをもとにした治療法が決まります。
鍼灸ではツボ、漢方では漢方薬が選定されます。
証からツボの場所や漢方薬を決めるのを「治則(ちそく)」を立てるといいます。
「証」からの「治則」はひとつとは限りません。さらにその方の状態によって治則の細分化が行われます。
こうした作業を「弁証論治(べんしょうろんち)」といいます。ここまできて初めて東洋医学的な処方が具体的に決まるわけです。
たとえば腰痛で最も多い③の腎虚の腰痛を例にとりますね。
腎虚の腰痛にもいろいろなタイプがあります。
①腎気虚(じんききょ):ハリを使う場合は補腎益精のツボ、
漢方薬を使う場合は地黄丸や牛車腎気丸など
②腎陽虚(じんようきょ):ハリを使う場合は温補腎陽のツボ、
漢方薬を使う場合は八味地黄丸や右帰丸など
③腎陰虚(じんいんきょ):ハリを使う場合は滋補腎陰のツボ、
漢方薬を使う場合は六味地黄丸や左帰丸など
各々についての解説はこれも省略します。(笑)
腰痛ひとつをとっても、その方の体質や体の状況、生活面での体への影響因子などを総合判断して「証」を考え、「治則」を立ててツボを選んだり、漢方薬を決めるわけです。
つまり証を立てるまでは鍼灸も漢方も同じ理論で考えています。同じ理論ですから治則も同じです。
その治則にのっとって、鍼灸ですとツボの選定、漢方ですと薬の選定をするわけですね。
「証を立てる」(東洋医学的診断)ための手段、方法
そこからの漢方薬やツボの選定については次回にしましょう。
今回のまとめ
①ツボを使って治す鍼灸治療も、漢方薬治療も治すための道具・手段が違うだけで基本的考えは共通。
②ツボの選定、漢方薬の選定は「証」という東洋医学的診断がベースになる。
