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20年後の研究報告「展覧会カタログの愉しみ」:東京大学駒場博物館 東京都目黒区

展覧会カタログ。それはミュージアムでの特別展や企画展で展示品や論考をまとめあげた、一般にはあまり流通していない書籍。図録とも。
時々「図録、買うのか買わないのか問題!」的な記事を見かけますが、そのような命題には結論などあるはずもなく・・・
価値を見い出せる人は買う。ただそれだけです。


学問の世界には「よくこんな事研究するな?」と思える分野があります。
東京大学の駒場キャンパスでは、そんな研究がひっそりと続けられていたようです(たぶん)。そして2026年けっこうピンポイントな日程ながら、その研究成果が地味に一般公開されました(会期は終了)。
今回の主役はカタログ(図録)。

立て看はウクレレ&マッチョ

東京大学駒場キャンパスは初見参。行ってみて驚いたのは、京王井の頭線の駅直結で前田侯爵邸や日本民芸館のすぐそばという立地。
駅の脇にあるバイク駐車場(有料)もありがたい。

大学構内には多くのシュールな立て看板が。昭和か!

多様な主張

駒場博物館

駒場博物館は、2003年に美術博物館と自然科学博物館が統合されスタート。
併設されている資料室は2007年の開室です。
所蔵するのは、展覧会カタログ(図録)を中心に20,000冊オーバー。

東京大学 教養学部

博物館の建物は、1935年に建てられた旧制第一高校の図書館が起源。
東京大学教養学部の図書閲覧室を経て、2003年に全面改修されています。

駒場博物館

東京都目黒区駒場3-8-1

お目当ての特別展は、歴史を感じさせる建物で。

HP上での館の紹介には、

ここには、日本全国の美術館・博物館で開かれている企画展および常設展のカタログ(図録)のうち、特に専門性と学際性に優れているものが、多数所蔵されています。美術の分野はもちろんのこと、歴史、文学等のカタログも同時に収蔵しているのが特徴と言えます。
 東京大学の学内では質量とも随一の充実を誇っています。100を超える全国の美術館・博物館から寄贈された資料を中心に、今後とも積極的な収集を続けていく予定です。駒場の芸術文化研究の一端を担う資料室として、積極的な利用をお待ちしています。

駒場博物館 HP

とあります。今回の特別展は、20年ほど前に出版された書籍を出発点とした「図録研究の現在地」的な企画。

チラシはどういう訳かA3サイズのカラーコピー。
ポスターもご自由にどうぞ!という不思議なノリ。
公立ミュージアムではよく見かけるチープ感です。いや手作り感か。

展覧会カタログの愉しみ チラシ
2026年6月 @駒場博物館 

実はこの展覧会タイトルを見た時には、軽い衝撃が。
デジャヴではなく、ずいぶん昔に見た記憶・・・

主催者は、展覧会カタログを

「人文研究」と「博物館・美術館の学芸」と「美術鑑賞者」を結ぶ存在。

「1回限りのイベントで会期終了と共に消え去ってしまう展覧会というメディアを、後世に伝える存在」

と定義しています。

そんな展覧会カタログを、比較文化の視点から面白さや問題点を批評したのが、「展覧会カタログの愉しみ」(東京大学出版会:2003年)という書籍。その内容をざっくりと説明すると、展覧会&展示カタログの評価集。
そして当時の編者:今橋映子(現総合文化研究科:教授)さんは、この展示を企画した人(2026年で退官予定)。

蘇る記憶

入口には原本が1冊だけ、バイブルのように鎮座していました。
今回の展示では、図録コレクションから1,100冊が選抜され展示。

大学系

ネット上に情報があふれる以前の図録は、貴重な情報源の1つでした。
特別展・企画展の内容を見返すだけでなく、作品所蔵先のミュージアムや論考の参考とされた図録等々、関連する情報を芋づる式に得るために最適。
今考えれば、恐ろしくアナログな世界。ただそのプロセスは意外に重要。

各地のミュージアムへと頻繁に足を運べるほどの時間もお金もなかった頃は、興味のある図録があれば通販で取り寄せるのが定番。
しかも入金は振込ではなく現金書留を郵送するという、手間とコスト(送料&手数料)を要するやり取りが必要でした。

特別展は4つの章で構成され、各章でチョイスされた図録は展示室中央部に設けられたデスクで閲覧できる仕様。図録は美術系寄りが多い印象。

デスクのそばには、なぜかの現代アート。
マルセル・デュシャン(フランス:1887-1968)の通称「大ガラス」。

作品は未完成の状態で制作が中止され、そして運搬中に破損。
その後に作家本人による修復を経て、現在はフィラデルフィア美術館に所蔵されているという、よく分からない系な作品。

大ガラス

オリジナル以外に4つのヴァージョン(レプリカの意味?)が存在し、駒場博物館蔵はその中の1つ。おまけに4ヴァージョンは作家以外の人によって作成されたヒストリーを持っています(しかも作家没後の制作品も)。
どういう事?と考え始めた時点で、作家の罠にはまっているヤツ?

この作品に関連する図録や書籍は、第3部で展示。

デュシャン系

ミニ展示コーナーは2017年に駒場博物館へと寄贈された「上甲・池田文庫」。カタログだけではなく、全国のパンフやチラシを含む1,400点を収集、分類、整理されている点が特徴。
無料の印刷物を集める姿勢は、非常にオタク的。

上甲・池田文庫

こちらは2024・2025年に収集された展覧会カタログとチラシのコーナー。
チラシはファイルに納められています。
そして東京大学では「フライヤー」とは呼ばないようです。

直近の資料室系

チラシを網羅的に収集、そして整理するのはかなりの苦行。
ただ長いスパンでその成果を眺めれば色々と見えてきます(なんとなく)。

チラシ ファイル

展示を見る限り図録の現在地は、昔とあまり変わっていないような印象。
バイブル本の帯には、図録は「隠れたベストセラー」とのコピーがありましたが、現状も相変わらず「隠れたまま」。
デザインや写真のクオリティ、また論考・コラム等の情報量は飛躍的に上がっているんですけど。

出入口の壁に掛かっているのは、アート作品がもう1点。
宇佐美圭司の「作品1964年6月5日」。やっぱりよく分からん。

作品1964年6月5日

規模が大きなミュージアムでは、図録を閲覧可能なスペース(図書室)が大体あります。ただ駒場博物館での利用は東京大学関係者に限定。

それでは一般人が、過去発行分を含めた図録を気軽に閲覧できる公共施設といえば・・・

東京都内ではトーハクや江戸東京博物館が個人的ツートップ。
ここではトーハクの資料室をサクッと紹介しておきます。

東京国立博物館:資料室

トーハク 表慶館

資料室があるのは本館ではなく、表慶館の裏側あたり。
表慶館から平成館へ向かうあたりに入口があります。

表慶館の北側を通り抜けると、資料館はすぐに姿を現します。

なんと資料館用パンフもあります。

資料館パンフ 2013年版

建物に入ると入口の表示がありますが、このドアは一方通行の設定。

ドアを通過すると、資料室内を経由しないと表慶館側には戻れません。
実は資料館への入館は、国際こども図書館側にある門からも可能。
つまりそのルート(資料室利用のみ)で入館すれば無料なのです。

この存在を知るきっかけは「展覧会カタログの愉しみ」。
そうです。実は読んでいました。
しかも新品同様の状態で、今もストック。読み込んでいたとは言えません。

利用は無料ですが、土日は基本的に開館していないので要注意。

新作の図録は受付カウンター周辺に並べられており、自由に手に取る事ができます。ただほとんどの図録は閉架での保管。館内の端末で閲覧希望の図録を指定して、カウンターでスタッフから図録を受け取る方式。
見たい図録が多い時には何度もスタッフの手を煩わせる事になるので、何だか申し訳なくなってきます(一度に5冊が限度だったような)。
ちなみに本館とは違い、資料室が混雑していた記憶はありません。

資料室が所蔵する図書資料は280,000冊、展覧会カタログは42,000冊!
所蔵タイトルはweb上でも確認可能、ワード検索であたりをつける事も。

加えてトーハクを含め、いくつかの館を横断検索できるサイトもあります。

トーハクが所蔵していなくても、他館が所蔵しているケースもあるのかも。

トーハク:ミュージアムショップ

また最近発行された図録は、ミュージアムショップにも並べられています。
トーハクに限らず他道府県のミュージアムが発行した図録も扱っているので、運が良ければ購入可能。

最近のミュージアムにはパンフが簡略化される流れもありますが、ミュージアムショップ用パンフまであるというトーハクのヤバさ。

ショップ パンフ 2019年版

ちなみにトーハクのショップに初めて行ったのは、地下の時代。
現在は封鎖されていますが、本館玄関脇にはその入口の痕跡が。
館内からの入口は、2階への大きな階段の裏側から。

かつてのショップ入口

古いパンフには「ミュージアムショップは本館地下1階!」と力強く。
また東洋館のショップは「分店」と表記。

ショップ パンフ 2004年版

全国の図録が充実したショップは、トーハクと千葉県の歴博が双璧です。

最近ではISBNのある図録も割と見かけます。以前よりも書店やアマゾンで、いわゆる図書としての流通機会は増加しているという事です。
ただ図録が電子化されるほどの進化?は、あまり見かけません。
web上での露出が増えたとはいえ、その中身はまだまだアナログな世界にどっぷりなのです。

意外と入手の手間や紙媒体である事(ペーパーレス化への抵抗?)に、図録の価値はあるのかもしれません。
音楽の世界でもストリーミングに収束していくかと思えば、レコードやCDの価値が再認識されているように、図録もそういう存在なのかもしれません。

「重いから買わない」というのは論外ですが、自分の感覚で都度買う買わないを見極められる価値観は養っておくべきかも。

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