見出し画像

シュガーロードから羽ばたいた和洋折衷菓子【ひよ子:飯塚編】福岡県飯塚市

2026年3月上旬に目にしたのは、ちょっと気になるニュース(地域限定)。
「千鳥屋本家が民事再生法の適用を申請」
千鳥屋は九州では名の知れたお菓子屋さん。調べてみるとゆるやかなグループを形成してきた会社で、その歴史には興味深いポイントがあります。


筑豊地方の中心・飯塚市の人口は123,000人(福岡県第4位)。
江戸時代には地域を長崎街道が貫き、明治期には筑豊炭田の産出石炭が、日本近代化のエネルギー需要を支えています。

シュガーロード:実は長崎街道

長崎街道とは福岡の小倉と海外の玄関口・長崎を結んだ約230kmの道。
西洋や大陸の文化(ヒト・コト・モノ)を日本国内へと伝播させた九州の重要な街道の1つでした。
室町末期に日本へ伝来した重要なモノの1つが砂糖。そして街道沿いに今も文化(コト)として継承されているのが南蛮由来のお菓子たち。
江戸時代になると菓子職人は長崎へと足を運び、南蛮菓子を学びました。
ちなみに南蛮菓子の代表格はカステラや、ポルトガル語のボーロ(お菓子)を語源とする丸ぼうろ。

シュガーロード パンフ2023年版

シュガーロードは日本に砂糖文化を広めた長崎街道を、現代にアピールするために編み出されたブランド。2020年には日本遺産に認定。
協議会を構成するのは長崎県、佐賀県、福岡県と長崎、諫早、大村、嬉野、小城、佐賀、飯塚、北九州の7市。

明治期になると北九州では八幡製鉄所が操業、筑豊地方では炭鉱開発が進み、そこで働く人々に好まれたのが甘いお菓子。
そして筑豊・飯塚では、炭鉱景気を背景にした菓子文化が花開きます。

その代表格は千鳥ちどり饅頭とひよ子(個人的イメージ)。

千鳥屋:旧松月堂

千鳥屋の看板商品は、千鳥の焼き印が押された千鳥饅頭。
白餡を薄いカステラ生地で包んだ饅頭のルーツは、カステラと丸ぼうろ。 

千鳥屋の前身は、1630年に原田氏が佐賀県久保田町で創業した菓子店:松月堂。原田氏はかつて肥前の地を治めていた龍造寺政家りゅうぞうじ まさいえの家臣でしたが、政家から鍋島家への権力移譲に伴って菓子作りを始めます。
創業時は南蛮菓子(カステラや丸ぼうろ)を手掛けていたそうです。

千鳥屋旧店舗 @佐賀市久保田

昭和期になると店主・原田政雄は飯塚へと進出し、千鳥屋としてスタート。
戦後には政雄の息子たちは独立し、各エリアで千鳥屋を展開していきます。

長崎街道沿い

創業の地にはいつ頃の建物かは分かりませんが、かつての店舗が現存(もちろんの長崎街道沿い、ただ外から見る限りは放置状態のよう)。
看板には文字がうっすら残っている程度。

佐賀から飯塚へ本拠を移した千鳥屋は、
・千鳥屋本家:福岡県飯塚が本拠
・千鳥屋総本舗:福岡市が本拠
・千鳥屋宗家:関西
・千鳥屋総本家:東京
と地元以外の人でも非常に分かりにくい屋号で展開しました。
ちなみに「総本家」は2016年に民事再生法の適用を受け、事業譲渡そして解散しています。

そして今回のニュース対象になったのは「千鳥屋本家」

本家は飯塚市内に本店を構え、2014年には大河ドラマがらみ?の歴史資料展が開催されました。

官兵衛系展示 チラシ 2014年

展示会場となったのは、店舗兼住宅?のような歴史ある重厚な建物。
ただ現在はその建物は取り壊されているようです(老朽化のためとか)。
旅のお供にとバラ売りされたお菓子をかなりの個数買いましたが、リーズナブルな価格設定から合計が1,000円を超えなかった事を記憶しています。

福岡市を中心に展開しているのは「総本舗」
総本舗は千鳥饅頭以外にもチロリアンが看板商品。

関西エリアで展開しているのは「千鳥屋宗家」
看板商品は他社とビミョーに異なる本千鳥饅頭。

大阪で千鳥屋の結構な数の店舗を見かけた時は少し驚きましたが、調べてみるとそれぞれが別会社と知りました。ただ世代が変わるといろいろと面倒を抱えたようです。

歴史あるお菓子屋でも、事業規模の拡大や分家・独立していくと存続には苦労が増えていくのが現実。

ひよ子本舗吉野堂

飯塚から福岡市へと拠点を移し、大きく飛躍したお菓子屋をもう1軒。

空飛ぶひよ子ファミリー

福岡の会社にも関わらず、東京土産の印象も強いのが「ひよ子」。
九州人には常識レベルの福岡ブランドです。

吉野堂の創業は、明治期の飯塚。丸や四角しかなかった饅頭の世界に、大正期に「ひよこ」のフォルムを持ち込んで評判となります。
そして昭和期には福岡市へと進出して、福岡のお土産としての地位を確立。
現在でもスタンダードなお菓子として知られています。

そして福岡空港には面白いひよ子があると聞き、知人に買ってきてもらったのがこのファミリー。

ファミリー

スタンダードな家族セットもあるようですが、空港限定品はその名も「空飛ぶひよ子ファミリー」

そもそも「ひよ子の親子」とか「空飛ぶひよ子」と禅問答のようなネーミングが秀逸です。家族を構成しているのは、
父 ひよ子:レギュラーの3倍
母 ひよ子:レギュラーの2倍
兄 ひよ子:レギュラーサイズ
妹 ひよ子:ミニ

パッケージデザインも秀逸。

お菓子そのものは、兄ひよ子の拡大版&縮小版。
正直、父ひよ子(にわとり?)のボリューム感は、なかなかのサイズ。

興味深いのはサイズによって賞味期限が異なる点。
デカいのとカワいいのは、お早めに!

バリエーション展開や限定商品も多く、お菓子作りのクオリティだけでなくそのビジネスセンスからも目が離せません。

チョコバージョン
チョコ漬け
黒糖バージョン

かつての炭鉱のイメージが強い飯塚ですが、昔からその名前を知るお菓子屋の発祥の地だったというのは目からウロコ。

機会があれば、シュガーロードの別エリアについても!

いいなと思ったら応援しよう!