ハートはV2から直4へ:続ピンズと鈴鹿8時間耐久【ホンダVTR1000SPW&CBR1000RR-R :ホンダ青山7】東京都港区
ホンダファンのオアシスだったウェルカムプラザ青山が、今年の3月末をもって一時休館となりました。気がつけばホンダのレガシーが展示されていたりと、都内では貴重なスポットでした。
まあ茂木のコレクションホールか鈴鹿のレーシングギャラリーがあるので、それほど悲しいという訳ではありません(そこそこ遠いけど)。
人混みを恐れて最終イベントには足を運ばず。これからは自ら情報を取りに行かねばなりません。当面は3ヶ月後の鈴鹿8時間耐久レース(以下8耐)。
その前に2024年の偉大な足跡を、無敵時代のあのマシンとともに。



20年前のホンダレディの制服とアシモが地味に展示。
時代の変化はホンダレディからホンダスマイルへとジェンダーフリー化。
メンズスタッフも常駐に。
またアシモの姿勢制御技術は、現在のホンダテクノロジーの基礎にも。
ここ20年近くの鈴鹿8時間耐久レース(以下、8耐)では、CBRブランドがホンダの市販車改造レースでの主役。
Force V4でレースのイメージが強かったRVF750(V型4気筒エンジン搭載の市販車VFRを改造)が、絶対王者として君臨していたのは20世紀の話。
そしてスプリントレース(SBK)においてその王者を脅かし、遂には完全に凌駕したのがイタリアのドゥカティ。
Lツインと呼ばれたオリジナリティあふれる2気筒エンジンに、これまた独自のトレリスフレームで武装。
4ストローク4気筒750cc以下、3気筒900cc以下、2気筒1000cc以下というレギュレーション(車重も優遇)をうまく利用し、エンジン(2気筒)のパワー&トルク特性を生かして4気筒勢(日本車勢)を駆逐。

イタリアンデザインの当時のファクトリーマシン(996R:998cc)は美しく、また総合カタログもアーティスティック。
カタログはドゥカティのコラージュ写真によって996R(たぶん)を表現。

SBKでのドゥカティの猛威に屈したホンダは、2000年にはプライドを捨て去り同じエンジン形式(V型2気筒)を選択します。
オリジナリティを追求するホンダが、他社に追従するのはかなりレア。
ホンダVTR1000SPW '00 8耐優勝車

VTR1000SPW ‘00は、2000年の鈴鹿8時間耐久レース優勝車。
ライダーはホンダのファクトリーライダーとして活躍した
宇川徹(1973- :現在は本田技研の社員)と
加藤大治郎(1976-2003:2001年WGP250クラスチャンピオン)
のチーム高武の先輩・後輩コンビ。
打倒ドゥカティのために制作されたVTRのスペックは、
エンジン:4ストローク水冷V型2気筒
排気量:999cc
最高出力:180PS以上(実質195PS前後)
重量:162kg以上
エンジン形式こそドゥカティと同じになりましたが、フレームはホンダ伝統のアルミ製ツインスパーを継承。

ライダーが共に250ccクラスでリザルトを残していた事も好影響。
特に大治郎は、他ライダーの平均燃費が7.2km/Lのところを8.2km/Lと速さと効率を両立。

ライダーからは、無理をしない方がタイムが出るという評価だったVTR。
マシンに慣れてきて、エンジンの高回転域を多用したりアグレッシブにアクセルを大きく開けてもタイムに結び付きにくいという性格。
結果、ライダーには疲れにくさと走行ラインの自由度の高さ(かなり重要)が耐久レースに見事フィット。
有効なパワーとトルクが出るのは4,000から10,000回転と市販車的。
4気筒750cc勢はもっと狭くて高いエンジン回転域で走行。



キャリパーの表現も変えています
スーパーバイク世界選手権(SBK)では2000年と2002年にコーリン・エドワーズ(アメリカ)が世界チャンピオンを獲得。
参考書その1は、レーサーズ VTR1000SPW(三栄書房)。
豊富な写真に当時のエンジニア(雑誌取材時はHRC社長に)や8耐ファクトリーライダーのインタビューが掲載された1冊。
また、発刊翌年に交通事故死してしまったGPチャンピオンのニッキー・ヘイデンのインタビューは貴重。
参考書その2は、ライダースクラブ 2001年3月号(エイ出版)。
こちらはホンダファクトリーマシン3台のインプレ記事を掲載。
ページ数は少ないものの、VTRはスプリント&耐久仕様どちらも登場。
NSR500(2000年モデル)は御大ネモケンによる試乗。
古本屋で探すのも良し!
VTR1000SPW '03 8耐優勝車


2023年はキャビンから一転、黒いセブンスターカラーに身を包んだホンダのファクトリーチーム。不運も重なり2台とも全滅。
サテライトチームの71号車は生き残り、他チームのトラブルにも助けられ奇跡の優勝。ライダーは、
生見友希雄(1966- )と
鎌田学(1970-2010:ホンダの開発ライダー経験多数)
マシンはファクトリーと同スペックと思われますが、展示データでは
排気量:999cc
最高出力:177PS以上
重量:172kg以上

アッパーカウルの74番は、2003年GP開幕戦・鈴鹿で事故死した加藤大治郎追悼のサイン(カウル以外にも多くのライダーがツナギやヘルメットに)。
当時の各ファクトリーは参戦形態が異なるので公平ではないかもしれませんが、VTRの8耐でのリザルトは全勝(4連覇)とパーフェクトレコード。
瞬発力と持久力を兼ね備えた名機の1台。
ただ市販車では、今も昔もあまり姿を見かけないレアな1台。
翌年からはスーパーバイクのレギュレーション変更に伴い、ホンダの鈴鹿8耐への参戦は1000cc4気筒マシンに(CBR時代へ)。
CBR1000RR-R MOUSSYコラボカラー

こういうカラーのCBRも展示されていたコトも。
ハイカジュアルブランドMOUSSY(解説版より)とのコラボコレクション販売を機に制作されたMOUSSYカラー。
正直アパレルのデザインを見ると、このカラーリングほどのオリジナリティはなかったようです。
テールカウルのデザインはもはや珍走族。痛車的な1台。
豹柄やスワロフスキー(たぶん)はイケているのか?


CBR1000RR-R '24 8耐優勝車

2024年の鈴鹿8耐優勝車はCBR1000RR-R。ホンダ車での30勝目。
ライダーは
高橋巧(1989- )
名越哲平(1997- )
ヨハン・ザルコ(フランス:1990- )
スペックは
エンジン:4ストローク水冷直列4気筒
排気量:999cc
重量:175kg以上
馬力の表記はありませんが、250PS前後(市販車は215PS)

エースは高橋。スタートライダーも務め、状況が落ち着くまでは無理に前に出ようとせず静観。予定通りのペースを淡々と刻んでいたのが印象的(結果的にトップに立つ事になりますが)。


当日はリアルタイムでのTV観戦でしたが、高橋の走りは不安感を全く感じさせない非常にスムーズなライディング。
よーく見ていると、旧ダンロップコーナーやスプーンカーブあたりではきれいに後輪をスライドさせていて、派手さを抑えた玄人好みでこの年ダントツのライディングを披露。
そして個人では8耐単独最多勝となる6度目の戴冠。

8耐では安定した速さを見せるCBRですが、スプリント系のSBKでは苦戦中。
現行型CBRは2020年にホンダらしい高回転型エンジンを引っ提げて鳴り物入りでの登場。ただしSBKではいまだ未勝利。
8耐翌週のSBK・チェコラウンドでも相変わらずの不振でしたが、解説の岡田忠之(元ホンダ、鈴鹿8耐では2勝:1967- )は「ファクトリーからの技術供与がもっと必要では? 特に制御系が」と指摘。
逆に言えば、8耐に対するホンダのプライオリティが格段に高いコトも証明しています(WGPと8耐は同格らしい。SBKはやや格下?)。
ホンダの現在地は、GPを含めSBKでもドゥカティの後塵を浴びっぱなし。
ボチボチ目を覚まさないと。やっぱりホンダは4輪より2輪でしょう!


