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華やかなる国宝 VS 静かなる国宝【尾形光琳:トーハクほか】東京都台東区

ミュージアムの頂点に君臨しているのは東京国立博物館。通称トーハク。
総数12万点という圧倒的な物量と選りすぐりの収蔵品たちには、国宝90件と重要文化財652件が含まれます。
本館だけでなく東洋館や法隆寺宝物館を加えると、いつ訪れてもどこかで国宝が展示されているという豪華さ。

本館展示室の中にはそのものズバリな「国宝室」(12室)が設けられ、ほぼ1ヶ月交代のペースでトーハクイチオシの国宝が1点のみ展示されます。
ただ国宝だからといって、常に人だかりができるとは限らないのは興味深いポイント。


今回はあまたの作家の中から、尾形光琳にフォーカスした記録。
光琳は御存じ琳派りんぱの主要構成メンバーの1人です。

尾形光琳という人

尾形光琳おがた こうりん(1658-1716)は京都の富裕な町衆・呉服商雁金屋の次男として生まれ、その環境もあってか絵師の才能にも恵まれた人。
同じく上級町衆だった本阿弥光悦とは、縁戚関係の間柄にあります。
また顧客になっていたのは、大名や公家に豪商といった富裕層。
画業に集中するようになったのは、家業の衰退をカバーするためとも。

光琳作品で国宝指定されているモノは、現時点で3点(重要文化財多数)。
ここでは国宝の3点と共に、関連作品?もそれぞれ。

その1:伊豆の国宝

MOA美術館(静岡県熱海市)

光琳の代表作は?と問われたら、おそらく最初(あるいは2番手)に挙げられるであろう作品が、MOA美術館(静岡県熱海市)の代表的コレクション、紅白梅図(国宝)。

紅白梅図屏風 @MOA美術館

弘前津軽家の伝来品は、通常1月から3月頃の展示です。
川の部分は銀箔を化学反応で黒く変化させているとも。
MOA美術館は、敷地内に光琳屋敷を再現するほどの力の入れよう。

またMOA美術館は、その名も「月下紅白梅図」も所蔵。
(個人的な第一印象は「黒き紅白梅図」)

月下紅白梅図 @MOA美術館

月下紅白梅図(2017年)は、杉本博司によるプラチナパラジウムプリント。
原本よりもハッキリと川の流れが浮き上がっているのが特徴です。
「月明りの下での紅白梅図」は言い得て妙!
21世紀の琳派、あるいはフォロワーなのかも。

その2:東京都港区の国宝

根津美術館(東京都港区)

2番手(あるいは最初)に挙げられるのは、
根津美術館(東京都港区)の燕子花かきつばた(国宝)。
通常展示期間は、4月から5月にかけて。
作品に最もアクセスしやすい光琳の国宝かもしれません。

残念ながら根津美術館は、頑ななまでに作品の撮影不可を貫いているミュージアム。作品写真はHPでご確認を。

また展示の時期は、美術館庭園に花開く燕子花も見所の1つ。

リアルな燕子花

燕子花図は琳派内でも、お手本とされた作品が見られるのが特徴。
さらに燕子花図もまた、フォロワー作品が21世紀に登場しています。
しかも美術界からではなくマンガ界から。場所は北陸の金沢。

現実化した架空のコンビニ @金沢

最初に見た時には「なぜオレンジ?」と思った原画展。
2018年東京・大阪での巡回展では主役2人をモチーフにしたチラシでしたが、2020年長崎・金沢での巡回展では、オレンジをバックに全キャラがパープル&グリーンを纏って登場。

JOJO展 チラシ @金沢21世紀美術館

よーく見ると燕子花図!! 荒木飛呂彦恐るべし。
燕子花図と自身の世界観が融合し、独自の作品に。

こういうチラシは何かと役に立ちます。
金沢展はコロナの影響で、実は開催が2022年にスライドしています。

MOAと根津美術館の国宝は、それぞれのミュージアムの代表作品。
かつ国宝ゆえに展示期間は限定されています。結果、展示期間中は平日といえども、お客さんに囲まれているケースがほとんど。

一方、最高峰のミュージアムはというと・・・

その3:東京都台東区の国宝

トーハク(東京都台東区)

ご存じのトーハク。本館前の池はいずれなくなるかもという噂がチラホラ。
小さな所では、トーハクニュースの大幅ボリュームダウンが・・・

トーハク:まずは重要文化財作品から

トーハクが所蔵する光琳作品は多数。
その中から露払いは、白綾地秋草模様の小袖(重要文化財)。
深川の材木商として財を成した冬木家の伝来品。

小袖

冬木家は光琳のパトロンの1人で、江戸に下向した光琳の滞在先。
滞在のお礼らしく、奥方のためにデザイン。

併せて小袖に付属する秋草模様の模写図巻(1839年)も展示。

小袖模様 模写図巻

展示されていたのは2Fの浮世絵コーナー(20室)の一角(2023年時)。
隣室の能・狂言コーナーから続く場所だったので、華やかな能装束を見る流れから、次室では小袖よりも浮世絵に目を留めていた人がほとんど。

太刀持ちは、弟の乾山けんざんとの合作銹絵観鷗さびえかんおう図角皿(重要文化財)。
中国の詩人黄山谷こうさんごくがカモメを眺めている様子を描いたのが光琳。

銹絵観鷗図角皿

展示は1Fの陶磁コーナー(3-3室:2026年2月時)。

トーハク各所で神出鬼没な光琳作品ですが、ここで真打登場。

トーハクの国宝:八橋蒔絵螺鈿硯箱

今回の主役は、八橋蒔絵螺鈿やつはしまきえらでん硯箱すずりばこ(国宝)。
展示場所は国宝室の真下、1Fの漆工コーナー(2室)。

いくつかの漆芸作品の中に紛れるように展示され、割とスルーする人が多め。特に注目を浴びる訳でもなく「分かる人だけ見てね!」的な空気感。
国宝室での展示であれば、違った状況になるのは必至。

ただ国宝室であれば、360度全方位からの見学はできません。
また螺鈿を美しく見せるためなのか、LED照明がやや強め。
トーハク所蔵で江戸期の漆工芸品では、舟橋蒔絵硯箱(本阿弥光悦作)と双璧をなす国宝作品です。

意外と見かける機会の少ないこの硯箱。

硯箱は8月16日までの展示です。
間に合わない方には、硯箱をモチーフとしたグッズがショップで販売中。

缶入り クッキー

驚くべきはこの再現力の高さ。缶とは思えないクオリティです。
缶ケースの中身は、東京會館によるクッキー詰め合わせ。

ミュージアムショップでは、図録以外のグッズを買うことはあまりありませんが、コレは何度か入手。しかもかなりのロングラン商品です。
価格がお手頃な事もあり、欠品になっているケースが多々あります。

硯箱の価値を知る人には、おみやげとしても最適。

コレクション展示にも、最上級の作品がさりげなく?あるいは派手な宣伝もなく並んでいるのが、トーハクの奥深さ。
あえて華やかさを抑えた展示こそが、トーハクの醍醐味なのかも。

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