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天竜川を下ってきた建築家【浜松市秋野不矩美術館:藤森照信3】 静岡県浜松市

源流は遠江の北に位置する信濃の国。天竜川は諏訪湖から遠州灘へと注ぎ込む一級河川、その急流と水害の歴史から名付けられた異名は「暴れ天竜」。
平野部に至るとその川幅は1kmにも及び、浜松バイパス(国道1号線)に掛かる新天竜川橋は、スムーズな交通のためか1km(長さ=川幅)に渡って片側4車線という高速道路並み(プラス歩道)の広さ。


今回のミュージアムは浜松市内。780,000人と静岡県最多の人口を擁する都市は、日本第2位と広大な面積を誇ります(ほとんどは山間地ですが)。
農業も工業も日本有数レベルというこの地域の小学生に課せられるのは、30分間の回泳(泳ぎ方は問わず)と自転車乗車時のヘルメット装着(入学時にプレゼント:ヘルメットについては時代が追いついた感あり)。

そして目的地となる二俣ふたまたは天竜川が山間地から平野部へと姿を現し、かつ二俣川との合流点(かつての天竜市の中心)。また世界的な自動車メーカー(自動車&バイクの二刀流)の創業者本田宗一郎そういちろう、そしてミュージアムの主の出身地。

戦国時代の二俣は今川家、武田家、徳川家が争奪戦を展開した地域。
徳川家康は統治時代に治水事業を進め、また家中の統制過程では長子信康のぶやすを失っています(お墓は二俣の清瀧寺せいりゅうじ)。

浜松市中心部から国道152号線を北上すると、天竜川に掛かっているのが全長1,100mの飛龍大橋。なにやら気になるものが目に留まりますが、橋の上には停車できないので確認は帰り道で。

壮観!

秋野不矩美術館

美術館の駐車スペースは丘の下。入口へと坂をズンズンのぼっていきます。
途中には不気味ななにか。

足を運ぶのは、実は2度目。
そして以前にはなかった気がするなにかが。
建物は丘の上で相変わらず砦のような雰囲気を醸し出しています。
いいカンジでエイジング進行中。

電柱や街灯の雰囲気から、あの建築家が浮かび上がります。
あの浮遊しているヤツからも。

秋野不矩美術館が建つのは二俣川そばの丘の上、開館は1998年。
美術館のタイトル秋野不矩あきの ふく(1908-2001)は遠州二俣の人。
美術館は彼女の作品を中心に約330点を所蔵。

静岡県浜松市天竜区二俣町二俣130

地図を見て分かるように、二俣町の中心は天竜川の屈曲部かつ二俣川の合流部。豪雨等で水流が集中すると、氾濫の危険性がググっと上昇する地形。

2022年の台風では、美術館近くに掛かっていた橋が損壊(現在は撤去)。
以前は車も通行できた橋でしたが未だ復旧しておらず、歩行者用の橋として復活予定。

パンフ 2022年版

建物は地元の天竜杉を使用。また天井や壁は漆喰とナチュラルな仕上げですが、骨格は見た目と異なるRC造。
通路には籐ゴザ、展示室はモフモフのじゅうたん張りで、靴を脱いでゆったり作品を鑑賞するスタイル(建築家による提案)。

じゅうたんの感触はやわらかく、建物の雰囲気とマッチ。
そして「座っての鑑賞もOKですよ」と声を掛けてくるスタッフさん(作品の展示位置も低め)。展示室内は撮影不可。

2Fの企画展示室は市民ギャラリーとしても機能。

秋野不矩展 チラシ
2008年6-7月 @秋野不矩美術館

印象に残るのはアジアの風景をモチーフとした多数の作品。
不矩さんの描いた作品群と重なるのは、美術館設計者の放つ空気感。

藤森照信という人

建物を設計したのは藤森照信ふじもり てるのぶ(1946- )、信濃の人。初設計だった神長官守矢史料館(1991年:長野県茅野市)に次ぐミュージアム作品第2弾。

ちなみに藤森ミュージアムの第3弾は、掛川市にある「ねむの木こども美術館どんぐり」(2006年:二俣から東へ25kmほど)。
名前からして建物のイメージがぼんやり浮かびます(見た事はないけど)。

天竜川でつながる信濃と遠江の2つのミュージアム(やや強引)。
それは武田信玄の西上作戦行軍ルートとほぼ重なります(さらに強引)。

館内には建築模型(茶室)と素材サンプルが展示されています。
藤森建築のエッセンス(線のユルさ)は、以降の作品にも連綿と継承されています。参考写真を2点。

(参考)神勝寺(2014年) @広島県福山市
(参考)ラ・コリーナ(2015年) @滋賀県近江八幡市

ハッキリ言って写真で見比べても、どの建物か即答はむずかしい。
それは定規の通用しない藤森さん独特の世界。
施工の職人さんを、どう手配されているのかにも興味があります。
穴太衆のような特殊な能力集団が秘かに・・・

美術館に戻ります。
ココの壁面には、コンクリート打ちっぱなし仕上げも見られます。

ああいう電灯とか

外壁のモルタルは地元の土がハケ塗りされ、藁をミックス。
ホールの柱や梁は、藤森さんら(縄文建築団:自称?)によるザックリした面取りが施され、お得意のバーナーによる炙り仕上げも。
大黒柱(樹齢120年の天竜杉)は、地元有志による寄贈品。

屋根は諏訪の鉄平石

望矩楼

例の浮遊しているなにかは、やっぱり新たに追加されていた建物。
望矩楼ぼうくろうは開館20周年を記念し、2018年に建てられた茶室。
茶室部分は天竜杉、脚は天竜ヒノキの地産地消型。

望矩楼パンフ 2022年版

最近のミュージアムでは、建築パンフも制作されていて助かります。

宇宙船のハッチのような入口。茶室なのでにじり口と呼ぶべきか。
露地代わりのハシゴが外された状態です。

独特な外皮
意味不明 鳥の巣的な

地元素材がふんだんに使用され、また所々使われる銅板は藤森さん指導による地元小・中学校生の手曲げ加工品。
うらやましいモノ作りの街・浜松のDNA継承者たち。

望矩楼は脚部分が3m。プラス茶室部分の高さが3mの全高6m。
二俣の町並みを見下ろす好立地ですが、通常内部は未公開。

ちなみに参考写真の高過庵(藤森建築)は脚?部分の高さだけで6m。
藤森さんの茶室シリーズはますます増殖中、個人的には茶室内は未体験。

(参考)高過庵 長野県茅野市

そして帰りには、忘れずにアレをチェック。

飛龍大橋のたもと部分にあるのは、龍のモニュメント。

そしてアレもやはり龍でしょう。

ズラリと並ぶドラゴンは、巧妙にデザインされたスタイリッシュな街灯。
ただこの長い橋を渡る歩行者は見かけず。

車で通り過ぎるだけでは気がつきにくいクールなデザインです。
そしてそういうスタンスは嫌いではありません。
モノ作りにおいては、目につきにくい部分にも手を抜かないコトが大切。
これもやらまいか精神の発露でしょうか。

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