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ライバル不在だったル・マン初勝利からのトヨタHV【TS050:2018年】富士モータースポーツミュージアム 静岡県小山町

自動車耐久レースの頂点といえば、ル・マン24時間耐久。
タイヤ剥き出しのフォーミュラマシンで競うスプリントレースではなく、市販車やプロトタイプという括りのスポーツカーによってスピードと信頼性を競い合います。加えてスピードの異なるカテゴリーが混走するため、そのスピード差に対応するスキルも求められ、勝利を左右するのはドライバー、車、チームの総合力。


トヨタがハイブリッドカー(以下HV)によるル・マン参戦を始めたのは2012年。参戦経験はHV以前のグループC時代からありましたが、1999年シーズン終了時をもって世界耐久シーンからは距離を置いていました。
今回はそのル・マンでトヨタ初戴冠となったマシンを中心に記録。
場所は富士スピードウェイ(FSW)に設けられたレーシングマシンの殿堂。

富士モータースポーツミュージアム

トヨタが自社にこだわらず世界の自動車メーカーのレーシングマシン群を集めたのが富士モータースポーツミュージアム。
常設展示扱いのマシンもあるようですが、小企画展示も含めラインナップは比較的こまめに変わります。
頻繁に通える立地ではないのが唯一のネガなポイント。

静岡県駿東郡小山町大御神645

展示スペースは1Fと2F、3Fはショップとホテルのエントランス。
かつてのメーカー系ミュージアムに見られる倉庫的な雰囲気はなく、ゆったりと車両が展示されています。

上座的な位置に鎮座するのは、日本車で初めてル・マンの頂上に立ったマシン、マツダ787B(レプリカ)。横にはそこに続くはずだったトヨタTS020。

787B & TS020

マツダが戴冠したのは1991年、グループC時代の末期。
レギュレーションの特徴は、ざっくり燃料の使用量制限のみ。
ターボで武装した水平対向6気筒やV型8気筒に自然吸気のV型12気筒エンジンは、排気量も3.0Lあたりから6.0Lまでとバラエティに富み、メーカーの個性が見られた頃。マツダは当たり前のようにロータリー(4ローター)。

グループCからGT1マシンの時代を経て冬眠に入っていたトヨタが目覚めたのは、ハイブリッドエンジン車(HV)での参戦可能が契機。

TS030(2012年)

その初代がTS030(2012年)、トヨタハイブリッドルマンカーの始祖。
言うなれば、スピードに特化したプリウスの最終形態。
空力やエンジンの熱効率にモーターとバッテリーの効率、加えてその協調性等々市販車ともカブる能力が極限まで追求されています。

TS030(2012年)

当時はディーゼルエンジン優位なレギュレーション。
そこをガソリンエンジン+モーター駆動でHV車の可能性を追求。

エンジンは3.4LのV型8気筒エンジン(530PS)+モーター(300PS:2013年)、当初は4輪駆動の企画でしたがレギュレーションにより後輪駆動に。
決勝では速さを見せたものの、出走した2台は共にリタイア。

以降、トヨタはアウディやポルシェのドイツ勢の後塵を拝する事に。

ただトヨタもマシンの開発・改良を進めています。
2014年のTS040では排気量を3.7Lに拡大したV8エンジン(520PS)と前後輪をモーター(480PS)で駆動。

さらに2016年には、2.4LのV6ターボエンジン(エンジン500PS+モーター500PSで1,000PS)が採用されたTS050にスイッチ。
4輪駆動はそのままに、蓄電をキャパシタからリチウムイオン電池に変更。

レギュレーションの変更と当時の最先端技術を秤にかけて導き出された最適解によって、エンジン+モーターのコンビは進化します。

TS050(2018年)

そして待望の初戴冠は2018年。
マシンはTS030から2世代進んだTS050。優勝時の汚れもそのままに展示。

TS050(2018年)

ドライバーは中嶋一貴なかじま かずき(元F1パイロット)
フェルナンド・アロンソ(スペイン:2005、2006年F1チャンピオン)
セバスチャン・ブエミ(スイス)の3名。

ミュージアムではコンパクトなエンジン単体も展示。
ターボを含むエグゾーストや吸気系パーツが結構なボリュームです。

こちらはフロントモーター&ジェネレーターユニット(アイシンAW製)。
その右側はリチウムイオンバッテリー。

モーター&バッテリー

そしてリヤのモーター(デンソー製)。なぜか前後でメーカーが違います。

タイヤハウスとコクピットの間は、グランドキャニオンと呼ばれるフロントノーズからの空気の通り道。

ホイールは空力のため、カバー化されリムと一体化したようなデザイン。

メカニック着用のスーツも展示。

2018年は初優勝。そして1-2フィニッシュという完全制圧のリザルト。
またTS050は2020年までル・マン3連覇を達成します。
ただライバルだったアウディは2016年、ポルシェは2017年終了後に撤退。
他ファクトリー不在という環境下での3連覇。

さらにハイパーカークラスとなった2021年から、トヨタはGR010にマシンを変え2連覇しています。通算5連覇ですが、相変わらずライバルは不在。

そしてフェラーリやポルシェの復活が話題となり、キャデラックにプジョーが参戦してきたのが2023年。
トヨタはフェラーリにわずかに届かず2位という結果に。
ライバル達が参戦以降は2024、2025年と優勝から遠ざかってしまいます。

GR010(2025年)

トヨタ GR010は2025年のルマン参戦マシン(別会場から)。
通常は黒ベースのカラーリングでしたが、かつてのTS020が纏っていたリバリー(通称:霜降り)でル・マンに降臨。

GR010(2025年) @日比谷ミッドタウン

エンジンは3.5LのV型6気筒ツインターボHV。
出力はエンジン(707PS)+モーター(272PS)、車重は1,040kg。
その出目金デザイン(ライト周り)はやや洗練されています。
グランドキャニオンも健在。

では、ライバルとガップリ四つでの優勝をトヨタは勝ち取れるのか?
多分にレース主催者による性能調整(BoP)のモヤモヤも拭い切れませんが、ル・マンではある種の神の力(政治力)も必要なのか・・・

ところが!

TR010(2026年)

迎えた2026年のルマンハイパーカークラス(最高峰)。
まるでかつてのグループCのように多様なマシンが集まり、V6やV8のターボHVにV12大排気量エンジンやV8大排気量HVと、正解は何なのか全く分からないカオスな状況(韓国からのニューフェイスも)。

トヨタはTR010としてデザインを一新。ヘッドライトは市販車のハンマーヘッド顔となりシュッとした顔つきに(現役マシンゆえに写真はなし)。

24時間レースを数行でまとめると、予選で冴えなかったトヨタやフェラーリが後方から追い上げる展開(またもBoPかと)でスタート。
予想に反してレースは、キャデラックとBMWが上位をキープしながら後半戦へと突入します。もちろんトヨタの2台も。
小さなトラブルやスピード違反によるペナルティ、また他車のトラブルや事故によるペースカー導入等々、運と状況を味方につけたチームが前に出るというヒリヒリする展開(キャデラックの最高速にはヤバさが)。

状況の変化は各車の燃料残量やタイヤの消耗具合をコロコロと変え、解説者も各車の燃料残量を常に細かくモニターするという、近年には無かった緊張感が最終ラップまで継続。

ガス欠で止まるかもという緊迫感を乗り越えて優勝したのはトヨタの1台。
ドライバーは
小林可夢偉こばやし かむい(元F1パイロット:チーム代表)
マイク・コンウェイ(イギリス:2021年優勝)
ニック・デ・フリース(オランダ)の3名。
またもう1台のトヨタは3位となり、トヨタ圧勝というリザルトに。

レース後のインタビューでの可夢偉は、
「前回の優勝は、あんまりライバルがいなかったから」
と深くて重い言葉でした(可夢偉は2021年以来の戴冠)。
やはりレースはライバルあってこそ。

一点の曇りもない優勝と最後までヒリヒリしたレース展開。
エンディングは過去最高?となった2026年のル・マン24時間。
あまりメディアで取り上げられていないのがやや残念ですが。
優勝マシンの日本降臨は何時、何処でしょうか?

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