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旧江戸城北の丸の国立ミュージアム【東京国立近代美術館:谷口吉郎】東京都千代田区

東京のミュージアム集積地といえば上野公園。伝統ある博物館、美術館では国内外の名品が、飽きる事のないレベルで楽しめます。
またここ数年の皇居東側エリアにも、再開発やリニューアルオープン(移転含む)によって魅力的なミュージアム群が形成されつつあります。


その中でも、老舗格と呼べるのが今回のミュージアム。
名称に「近代」とありますが設立からは70年ほど経過していて、そのコレクションは厚みを増す一方です。
最先端にも魅力的なモノは数あれど、本物の真価は歴史というハードルをクリアしてこそ(たぶん)。

東京国立近代美術館:MOMAT

今回の記録は東京国立近代美術館(以後MOMAT)
皇居一周ジョギング(反時計回りがデフォルト)では上り勾配の始まるあたりに位置し、美術館の裏側(北側)を走るのは初心者泣かせの首都高速道路(北の丸出口あり)。

首都高と石垣

建物そばのお濠沿いは高石垣で固められ、美術館の入口付近にはかつては竹橋門(石垣上には多聞櫓が)という由緒ある場所。

またバイクを建物に横付け駐車できるという、希少な国立ミュージアム(警備スタッフが誘導してくれますが、最初はビビりつつ)。

駐輪OK

MOMATは日本最初の国立美術館として、1952年都内京橋に開館しています(公立では神奈川県立近代美術館の方が1年早くて1951年の開館)。
現在地に移転してきたのは1969年。以降二度のリニューアルの歴史も。

設計は谷口吉郎たにぐち よしろう(1904-1979)、建物は石橋正二郎いしばし しょうじろう(ブリヂストン創業者:1889-1976)からの寄贈!によるもの。

石橋正二郎はブリヂストン美術館(1952年、現アーティゾン美術館:東京都中央区)や石橋美術館(1956年、現久留米市美術館:福岡県久留米市)の創設者でもあり、近代美術の普及に多大な貢献をした実業家。

東京都千代田区北の丸公園3-1

所蔵品は絵画、彫刻、写真等のおよそ14,000点(重要文化財16+2点:2026年)と国内最大クラス。
2004年時では9,000点、以降12,000(2017年)、13,000(2022年)、と順調にコレクションは増加中。

2025年までのパンフレットは、微小な変更を加えつつもデザインに大きな変化はありませんでした。

パンフ 2025年版

2026年版ではガラリとイメチェンを図り、ポップなデザインに。

パンフ 2026年版

館内の展示室は4Fから3F・2Fと降りて行くにしたがって、明治・大正期、昭和期(戦前、戦後)、現代と展示作品の時代も下っていくスタイル。
企画展会場は1Fに設定。

時々方向を見失いますが、どんなルートで見学してもOKです。
人が集まっている展示品は回避しつつ、自分のペースで見て回れます。

階段を使っての、行ったり来たりも問題なく。

和風な展示スペース(屏風&掛け軸&スツール)は、3Fのみの設定。

個々の作品は余裕ある展示スペースゆえ撮影し易いのですが、展示室全体を収めようと思うと他の見学者もそれなりにいるのでなかなか難しい。

4Fには「眺めの良い部屋」という名の休憩スペースが。

大手町・丸の内の高層ビル群と江戸城東側の雁行する高石垣のコラボは、MOMATならではの眺め(江戸城西側は土塁のエリアが多し)。

休憩スペースは2Fにも設定されています。

しかも2Fでは、館内・館外と季節に応じたチョイスが可能。

ミュージアムショップは、1階の石垣に組み込まれた不思議なスペースに。
ショップ右上はレストラン(2F)。

ショップ&レストラン

谷口吉郎という人

ここで設計者についても触れておきます。谷口吉郎たにぐち よしろうは金沢の人。
母校の慶應義塾大学関連でも、いくつかの作品を手掛けています。

参考に東京都内に残る谷口建築を3選。
1つ目は国立博物館の頂点、トーハクから。

(参考)トーハク 東洋館

東洋館(1968年:東京都台東区)はトーハクの中ではややマニアックな展示棟。本館や表慶館ほどではありませんが、重厚なデザインの建物。
ちなみに法隆寺館(1999年)を設計したのは、息子の吉生よしお

東洋館

東洋館の階段室壁面は、MOMATの外壁と似ています。

東洋館

2つ目はトーハクの斜向かいにある日本学士院会館(1974年:東京都台東区)。国立科学博物館の裏側と言った方が、分かり易いかもしれません。

日本学士院

日本学士院は日本最高峰の知性を持つ人達が構成する団体(定員150名)。

3つ目は千鳥ケ淵戦没者墓苑(1959年:東京都千代田区)。
六角堂(戦没者納骨堂)や前屋の設計を担当。
(国内だけでなく、海外の戦没者慰霊碑もいくつか手掛けられています)

六角堂

千鳥ヶ淵は桜の名所としても知られていますが、この場所は華やかさとは無縁の静寂に包まれる空間。時々手を合わせる人の姿も(桜の季節は不明)。
ジョギングペースであれば、MOMATからは15分ほどの距離。

終戦記念日の猛暑に対処するためか、前屋にはミストシャワーも装備。

前屋

MOMATに戻ります。

コレクション展示

近代と言えば1868年の明治維新以降。MOMATの扱うコレクションは、そこから現在までのざっと160年ほどの間に制作された美術品たち。
日本の歴史からするとさほどの長期間ではありませんが、コレクションは見応え充分(展示数も)。来るたびに新たな発見の連続です。

コレクション展示のみの年間パスポート(ベーシック)は、¥1,200と心配になるレベルの料金設定。

そんなコレクションから数点を。
最初は川端龍子かわばた りゅうし(1885-1966)の草炎(1930年)。

草炎

古ーいお経のように、紺地に金泥で描かれたという屏風絵。
生い茂るのは真夏の季節の雑草。

ちなみに草炎には、双子のような作品が存在します。

(参考)草の実 @川端龍子記念館(東京都大田区)

草の実(1931年)は、草炎の翌年に制作された作品。
描かれているのはやはり雑草ですが、季節は夏から秋へとシフト。

続いての長い巻物は、菱田春草ひしだ しゅんそう(1874-1911)の四季山水(1909年)。

四季山水

キャプションには「ドローンの空撮のように」と解説されています。
今風な解説ですが、当時では鳥の目線か。
描かれているのは、右側から左側へと春夏秋冬が流れていく様子。

春夏
夏秋

エンディングには飛び去って行く鳥の群れが。

彫刻からは高村光太郎たかむら こうたろう(1883-1956)の(1918年)。

作品は不思議な手のポーズを表現していますが、キャプションではそのポーズを真似るコツを伝授・解説しています。
作品解説の新たなスタイルなのか、妙な所で存在感を発揮している学芸員。

18分の1な重要文化財は和田三造わだ さんぞう(1883-1967)の南風(1907年)。

南風

どのあたりが重文なのか分かりませんが、ナイスポーズなマッチョが主役。
作家自身の漂流体験がモチーフで、実は心細い状況下です。

ここらあたりから抽象作品に踏み込んできます。
猪熊弦一郎いのくま げんいちろう(1902-1993)のConfusion and Order(1964年)。

Confusion and Order

よく分からん。

さらにますます分からなくなっていくのが現代アート。
海老原暎えびはら えい(1942- )の殺人事件現場見取図(モテルから女性の死体:1971年)

殺人事件現場見取図

地図は国道6号線の千葉と茨城の県境。ただし事件現場は記されず。
また制作当時は牛久市ではなく牛久町。分からん。

クライマックスは草間彌生くさま やよい(1929- )の冥界への道標(1976年)。

冥界への道標

黒いニョロニョロは、普通の人には見えていない何かでしょうか?
ただ個人的にはますます分からなくなっていきます。

訪問日は特別展「杉本博司 絶滅写真」の直前。
コレクション展示では、先行して杉本コーナーを開設。

ここには「劇場」「海景」シリーズが数点。
こちらは劇場シリーズから「エルムウッド」(1977年)。
制作に手間暇が掛かる事は理解できるシリーズ。

エルムウッド

展示室には「スギモトノート」なる作品制作記録帳も併せて展示。
記録帳のレプリカも置かれ、パラパラめくっての鑑賞も可能です。

スギモトノート
ノート 劇場部分(1933年頃)

こちらは海景シリーズから「日本海 隠岐」(1987年)。
劇場シリーズ以上に手間暇が掛かり、加えて見分けもつきにくいシリーズ。

海景 隠岐

ここで館内でやたらと目につくチェアについて。
鑑賞&休憩用として、アチコチに配置されています。

413 CAB(マリオ・ベリーニ)は、ニューヨーク近代美術館の所蔵作品。
結構なプライスタグが付けられていますが、建築家のチョイスでしょうか?
トーハク法隆寺館のエントランスでも採用されています。

詳しくはこちらのサイトで(構造に特徴が)。

常設展示に戻ります。

3Fにあるのが「建物を思う部屋」。
違和感なく部屋に溶け込むのは柳宗理やなぎ そうりのバタフライ・スツール。
MOMATはチェアとして、量産型日本製工芸品も選択。
そして壁面がソル・ルウィット(1928-2007)の作品。

建物を思う部屋

「ウォール・ドローイング#769」は、黒い壁を覆う幅36インチのグリッドに、円弧、直線、非直線の組み合わせ(120通り)から構成されています。
かつ実際に描いたのは、本人だけではないという作品。

ウォール・ドローイング#769のルール

「制作の主体の在り処や、観念と実体との関係など、アートの根幹について見る者に問いを投げかけるのです」と解説されています。

視点を変えて、階段室からも鑑賞可能。

階段から

1人が屋外、その相棒が館内という展示位置は、作者による指示。

「反映と思索」(2001年)はアントニー・ゴームリー(1950- )作。
箱根の彫刻の森美術館では、屋外で大の字になってる人。

夜間開館では驚かされそうな展示。

実は展示品なのが、イサム・ノグチ(1904-1988)の「門」(1969年)。

生前の作者指示によって赤黒、青、黄黒の3パターンを適宜塗り替え。

現在

古いパンフでは赤黒。2025年度版では赤黒から水色に衣替えされています。
塗り替えているのは誰?

2022年時

MOMATの展示は、トーハクとオーバーラップする部分があります。
そこを起点に間口を広げていますが、近現代アートはなかなか手強い。
理屈っぽさは現代アートのモヤモヤポイントですが、MOMATでいつの日にかその真髄へ迫れるのかも。

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