黒にも色々あるようで【エド・イン・ブラック:板橋区立美術館】 東京都板橋区
それほど足を運んでいる訳ではありませんが、面白そうな特別展を企画するミュージアムが東京の北部にあります。
そこには古い城跡に博物館&美術館と恵まれた文化施設。さらには釣りも楽しめる池まで完備した区立の公園。
失礼ながら博物館・美術館の両館ともに、忘れたころに見てみたくなる展示が開催されます。
鉄道でのアクセスもやや難がある立地のようですが、バイクでも道がちょっと分かりにくく、かつ周囲が住宅街なので初めて来た時は迷いました。
特別展のメインビジュアルは迷うごとなき伊藤若冲。タイトルは明らかに映画をパクった?(オマージュ)とモノと思われますが、こういうセンスは嫌いではありません。見学後はストーンズでも良かったかなとか。

板橋区立美術館

板橋区立美術館は1979年に23区内初の区立美術館としてオープン、設計は村田政眞(1906-1987)。2019年にスッキリ系でリニューアルオープン。
コレクションには多くの狩野派の作品を所蔵し、過去には探幽、尚信、安信の三兄弟展も開催(狩野派以外の学習帳という展示も)。以前の館長さんにはアイディアマンで狩野派の専門家だった方がいらしたようです。

東京都板橋区赤塚5-34-27

当日の展示室内は撮影不可。展示によって対応が変わるようです。
参考に撮影可能だった時の展示室内を。

いたってシンプルなデザイン。

当日は平日にもかかわらず、なかなかの混み具合。企画力の勝利か。
ただし入場カウンターの行列は、入館者数だけが原因ではなさそう。
入場料は大人¥650、65歳以上は半額の設定。けっこう年齢高めの方は多くかつ現金のみの対応だった事もあり、325円に対するお釣りに手間が掛かっているように見えました。100円玉のみで対応できる料金設定でいいんじゃないかなと。まあ色々とシバリがあるのかもしれませんが。

2025年3月8日-4月13日 @板橋区立美術館
今回発行された図録には「墨は五彩を兼ねるが如し」という一節が紹介されています(有名らしい)。なんだか深い言葉です。
また印刷用の黒・墨・鉄黒の違いも表記。たしかに濃淡とまではいかないまでも微妙な色調?の違いが一目瞭然。
気になった作品をいくつか。
展示は狩野探幽(1602-1674)と安信(1613-1685)兄弟による瀟湘八景図からスタート。墨の濃淡やかすれにボカシと抽象的な表現で見事に描かれた水墨画の鉄板ネタ。
ボカシた墨が湿潤な空気を表現していると。確かに漂う空気はやや重い。
続いて長澤芦雪(1754-1799)の細長ーい月竹図。シュレッダーで裁断されたかのような細長さ(150×11cm)の作品。
そして鈴木其一(1796-1858)の暁桜夜桜図のペア。
右図にはほんのり桜色の夜明けの桜図。左図は影絵のような夜桜図。
図録によれば闇や雨の表現が琳派で好まれたのは、其一以降らしい。
ブラックというワードがピタリとはまった作品は、亜欧堂田善(1748-1822)。展示作品の品川月夜図は、奇麗なパースペクティブの銅版画。
月の光と行燈による影の描写が秀逸。
撮影NGのため参考に田善作品を探してみると、西洋の技法を取り入れた不忍池図が。森の中の暗さと池の明るさの対比が特徴。

版画でもないのに背景を黒く塗り込めているのが特徴なのは白隠慧鶴(1685-1768)の維摩図。黒く塗りだした初期の作品は、中国版画の影響らしい。
白隠を常設展示していたお寺からの1点を参考に。

確かに背景が真っ黒の水墨画は珍しい。
また文章だけでの作品説明もむずかしい。

発行:2025年 191ページ
板橋区立美術館、東京新聞
暗い部屋での狩野派の金屏風展示もありました。それは照明の光量が調整できるギミックの体験コーナー。
機械的に照度の強弱がループする仕掛けは時々見かけますが、実際のローソクのゆらぎとはビミョーに違うので違和感の方が気になってしまう。
超高精細のCGが静止画なら見分けにくいけど、動画になると違和感を覚えてしまうカンジでしょうか。
伊藤若冲
展示の主役はおそらく伊藤若冲(1716-1800)。
乗興舟は千葉から出張してきた拓版画。京都伏見から石清水八幡、淀城、鳥飼、長柄、大坂天満橋と淀川の風景をブラックで表現(図録の表紙)。
大阪万博では枚方から八軒家浜(天満橋)までの舟運が復活するそうなので、若冲の気分が体感(行程は半分)できるように。知らんけど。
そしてトーハクでは時々小分けでお出ましする玄圃瑶華も参戦。





若冲と言えば精緻な筆遣いと鮮やかな色彩で知られていますが、モノトーンでの表現にも卓越したセンスが隠せません。
俯瞰してもズームしてもリアリティの極みに立つ人。

美術館で気になったのは、所蔵品の修復のためのふるさと納税&クラウドファンディングのパンフ(所蔵品の大半は近現代作品ですが)。
ちなみに板橋区は、2023・2024年度のふるさと納税では年間約30億円の減収と流出する側の自治体だそうです。
税収減が美術館運営に影響を与えているのかについては触れられていませんが、修復も含めて館の維持に予算が不足するようであれば料金設定(割引も含め)についても見直しが必要なのでは(なにかあればすぐクラファン!という風潮はモヤモヤします。加えて目標達成率の低さも)。
今回の展示内容で650円は安い! ありがたいけど。
都内には区立&市立のミュージアムが多数ありますが、覚えておいて間違いのない館の1つが板橋区立美術館。

