東京国立博物館でもっとも静謐な空間 【法隆寺宝物館:谷口吉生3・トーハク6】 東京都台東区
東京国立博物館(トーハク)に足を運び始めたのは、何が展示されているかもよく分かっていなかったころ。そして何度か特別展を見ているうちに、常設展にも面白いモノが並んでいるコトに気付きます。
そのうち東洋館も覗くようになると、トーハクの奥深さに引きずり込まれるのは不可避。また建築を少しカジると法隆寺館のタダモノではない雰囲気に吸い寄せられます(他の建物と違い存在に気がつかない人も多いのでは)。
本館裏側のやや暗い庭園も加えると、すべてをフツーに見て回るには1日では足りません。そうなると国立博物館メンバーズパスは必須。京都、奈良、九州の国立博物館の平常展まで網羅してかなりお得。
日本最高峰の総合博物館では、古代から近代までの幅広い収蔵品が展示されていますが、法隆寺館はトーハクでは最もピンポイントな品々が並びます。
今回は法隆寺宝物館の記録。
東京都台東区上野公園13-9

展示品の撮影ができるようになって常設展示の面白さはより深まりました。
見ているだけではすべてを記憶するのはとてもムリでしたが、写真でストックするとゆっくり比較できるのがヒジョーにありがたい。収蔵品はネットでの検索にも限界が・・・
法隆寺宝物館もほぼ撮影可。ただし少し暗い空間は独特の雰囲気。

法隆寺宝物館

飛鳥時代に創建されたとされる奈良の法隆寺。
法隆寺に伝来した数々の宝物は、1878年に皇室に献上され戦後に国有となりました。そのうちの300点がトーハクで保管され、展示のため1964年に法隆寺宝物館として開館。
現在の建物は谷口吉生(1937‐ )によって新しく設計されたモノで1999年に開館。
吉生の父吉郎(1904‐1979)もまた建築家で、トーハク東洋館(1968年)の設計者。こちらはステップフロアの展示室構成が特徴的。
古い館と新しい館がミックスされているのもトーハクの魅力か。

展示品の保護もあると思われますが法隆寺館はやや暗めの展示室。
対照的にエントランスは明るい吹き抜けでお出迎え。


エントランスに数脚並ぶチェアはキャブ。デザインはマリオ・ベリーニ。金属のフレームをなめし皮革でカバーしたロングセラーチェアは、皮のテンションを利用した独特の座り心地。脚の部分をよーく見ると皮の脱着のためのファスナーが見えます。フレームのせいかけっこう重い。アームレスバージョンもあります。



かつては専用のパンフも用意されていました。最近は簡略化されたパンフが増え、思い切ってなくすミュージアムも。ミュージアムなのに自らの歴史まで残さなくなるコトには少し矛盾を感じます。

古過ぎてよく分からない品々が並ぶ導入部。
興味の対象がようやく鎌倉時代に届いたぐらいなので、展示物の知識がほとんどないのが悲しい。ただ細工のスゴさは見れば分かります。とにかく繊細。しかも1,000年前の品々がゴロゴロ。


仏像が整然と並ぶ展示室。360度楽しめる展示方法で、映画に出てくる富裕層のコレクション的な空間。










谷口吉生という人
日本各地にその作品(ミュージアム建築)が点在する谷口吉生さん。建物の大小はありますが、展示対象が割と絞られている印象です。
京都国立博物館の平成知新館(2014年)はトーハクの平成館的なカンジですが、雰囲気は天井の高い法隆寺館。
今現在での最新作(多分)を参考として。

谷口吉郎・吉生記念金沢建築館は2019年の開館。父・吉郎さんの故郷(石川県金沢市)かつての谷口邸跡地に建てられたミュージアム。鈴木大拙館(2011年)と同じく金沢の観光名所になりつつあります。

外観からは谷口建築の方程式:水盤は見当たりません。
上の写真は偶然雨が降っていたので水盤のように見えますけど。
実は水盤は2階の犀川を望むスペースに設けられています。


こちらは赤坂離宮和館を再現した空間。和館のオリジナルは吉郎さんの設計。こちらの施工はオリジナルも担当した水澤工務店だそうです。
ということはこちらの水盤は、和館の池(国賓が鯉にエサをあげるスポット)を模しているのでしょうか。写真下の茶室も和館同様にココでも再現。
金沢建築館は、ある意味親子の共演ともいえます。

法隆寺館に話を戻します。別の建物にもかかわらずデザインの文脈がほぼ変わらないので、写真を見ていても違和感を感じません。
シンプルでクリーンな空間が谷口建築(吉生さん)には共通しています。

中2階にはチーム・ル・コルヴュジェのLC2が鎮座。なぜか入館者が爆睡しているシーンを見かけます。
かつては平成館と本館をつなぐ通路にあった休憩スペースで昼寝姿がよく見かけられました(コロナ渦で消滅したような)。こういう空間でよく寝られるなとは思います。


トーハク最古の表慶館と最新の法隆寺館との対比(表慶館の展示品は比較的新しめのモノが多いのが興味深い)。

モダン建築の入口部分には旧大名家(しかも大藩)の屋敷門。他館では見られない空間構成。このあたりもトーハクならでは。
水盤は本館の階段と並ぶトーハクの人気撮影スポットのようです。ただ観覧者は本館に比べて少なめ(レストランも併設)。

水盤は金沢の鈴木大拙館とも通じる光景です。というより大拙館は法隆寺館をステップにしたようにも。

