百花ひらく:皇居周辺と若冲の中間まとめ【皇居三の丸尚蔵館2】 東京都千代田区
インバウンドのおかげか、外国人率がかなり高まっている皇居周辺。
この季節散策にはピッタリとは思いますが、彼らの興味の核心がどこにあるのかは気になります。
また大手町・丸の内周辺は再開発が進み、街並がスッキリして小綺麗な印象に。ただ移動時の目標物がすっかり変わってしまいました。
今回はその皇居内にあるミュージアムのパート2。
そしてまだ外国人をあまり見ない皇居周辺スポットも2つ。
丸の内はビジネスエリアながらミュージアム巡礼も楽しめますが、大手町はその要素については真空地帯(たぶん)。
1つ目はこの界隈で働く人々が集まってくるスポット。
由来は平安時代までさかのぼり、皇居というよりは江戸城よりも古い歴史を持つ場所。

将門塚

平将門(903?-940)は桓武天皇の玄孫。関東で大規模な反乱(天慶の乱)を起こし、官軍の藤原秀郷によって追討された人。
討ち取られた首は京都へ運ばれて晒されましたが、白い光を放って関東へと飛び去ったそうです。将門塚はその御首をお祀りしているという伝説の地。
ちなみに将門さんは、この地が発祥の神田明神のご祭神にも。
興味深いのが将門塚保存会による解説板。
将門は「武士の先駆けとして関東地方の政治改革に尽力され、弱きを助け強きを挫くその性格から民衆より篤い信望を受けていました」と正義の人。
また京都・藤原氏の悪政に触れ、江戸時代の伊達騒動や、明治以降の建築工事の事故等々、将門さんの祟りと思しき歴史をふんわりと表現。
将門が革命家という捉え方が面白く、さらに朝廷(天皇)ではなく藤原氏に遠因があるかのような配慮がされた文面。

以外と言っては失礼ですが、見ている限り参拝者が絶えません。
観光目当ての方も見られますが、圧倒的にスーツ姿の方が手を合わせる姿が多く、順序良く列を作って並びます。

花やお供え物がありますが塚一帯はきれいに(一般人のお供えは禁止)。
パワースポットという薄っぺらい言葉は似合わず、背筋がちょっと伸びる不思議な空気感(写真撮るのもなんだかビビりながら)。
現在のカタチは2021年完成の第6次整備工事!によるもの。
続いて皇居方向へと向かい、お濠にぶつかったら北方向(右側)へ少し歩くと2つ目のスポット。

和気清麻呂像

皇居の北東の角(鬼門?)を守護するかの如く立っているのは和気清麻呂(733-799)。1940年(紀元2600年)記念事業での建立。

清麻呂は皇統を守り光仁・桓武天皇に仕え、平安京遷都に尽力した人。
将門よりさらに歴史をさかのぼります。
場所的にビミョーなのか、像を気にする人もあまりいません。
将門・清麻呂のお2人は外国人にはちょっと説明しづらいかもしれません。
教科書にも出てはきますが、時代が古すぎて日本人でも・・・
少し戻って大手門から三の丸尚蔵館へ

三の丸尚蔵館

三の丸尚蔵館は、昭和天皇崩御後に皇室伝来の美術品が国へ寄贈されたのをきっかけ(管理は宮内庁)として1993年に開館。
以降収蔵品には香淳皇后や旧宮家からの御遺贈品も。
東京都千代田区千代田1-8
2021年以降、所蔵品の国宝・重要文化財指定が進んでいます。
2023年には新規建替えによる第1期棟がリニューアルオープン。
管理は国立文化財機構(文化庁)へと移管。


2026年には第2期棟が完成予定。
ただし今年5月の企画展終了から約1年ちょっと再びの休館に。


2025年3月11日-5月6日 三の丸尚蔵館
それでは春らしく花がテーマの企画展へ。
入口には並河靖之の七宝四季花鳥図花瓶(1899年)が鎮座。
花瓶をぐるっと一周すると一年四季折々の様子が楽しめます。


以前に見た時には、暗い部屋でライトアップされた記憶に残る展示方法。
実は明るい部屋だと、自分が写真(花瓶)に写り込んでいました。


続いて春花生花図(狩野玉円)と法隆寺から献納された青磁牡丹唐草文大花瓶(龍泉窯)。書院の床の間的な展示。

紅白梅図屏風(今中素友:1923年)は、皇太子時代の昭和天皇の結婚祝いとして福岡の有志が献上(素友も福岡の人)。
紅白梅図(尾形光琳作:国宝)の超リアル版のよう。
伊藤若冲

動植綵絵からは、春らしい花に小鳥の絵が2幅(後期で展示替えの予定)。
伊藤若冲(1716-1800)は、青物問屋に生まれ40才で家督を弟に譲り、隠居後は絵描きに没頭した人。

動植綵絵は若冲が10年をかけて完成させた30幅からなる大作。
若冲は完成後に相国寺へ寄進(寄進状も現存)。
明治期に廃仏毀釈で厳しい状況にあった相国寺は、1889年に皇室へ献納。
若冲の作品はいろんなミュージアムで目にする事ができますが、若冲周辺の人物としてちょくちょく名前が出てくるのが(特に関西あたり)、
大典顕常(1719-1801)
売茶翁(1675-1763)
木村蒹葭堂(1736-1802)
動植綵絵や対極のような拓版画乗輿舟(エド・イン・ブラック@板橋区立美術館:4/13まで展示)にも絡んでくるような面々(たぶん)。
それぞれを掘り下げると、さらに興味深いヒト・コトに繋がります。

動植綵絵の前にはいつでも熱心な見学者が。
今回は外国人向けの英語での解説中でした。
その豊かな色彩と細やかな表現は、文化の違いもかるーく超えていきます。

編集・発行:皇居三の丸尚蔵館
入場券チェックの脇にそーっと置かれていた動植綵絵の小パンフ(無料)。
ナンバリングされた全30幅が一覧できて、自分が見た絵を把握しやすい親切で気が利くありがたーいモノ。
裏表紙には動植綵絵の参考図書が6冊も紹介。

発行:2006年 65ページ
財団法人 菊花文化協会
編集:宮内庁三の丸尚蔵館
小パンフにも紹介されている尚蔵館の1冊。
もう20年ほど前の発行図録ですが、研究者目線の論考・分析も掲載され参考資料にピッタリ。小パンフはこの図録の抜粋リメイクか?
たぶん尚蔵館のショップで入手しましたが、さすがに絶版かも。
ただ古本屋やネットオークションでは比較的安価で入手可能。
ここからは、この1年間で展示された若冲作品を

2025年お正月のめでたい系で固められた作品群の中に。

旭日鳳凰図(1755年)は、1889年に西本願寺門主の大谷光尊から皇室へと献上されたモノ。
鳳凰は鶏と違い想像上の鳥ですが、若冲描写の目が怖い。

こちらは展示入れ替えでの動植綵絵の1幅老松白鳳図。
白鳳なので孔雀感はありませんが、こちらも目は怖い。

梅花晧月図(2024年10月)は今回展示の梅花小禽図と違い白梅。

池辺群虫図(2024年8月)で描かれるのは身近な生き物。
命の平等(釈迦の教え)を示唆。中心には蛙とオタマジャクシの大群。

上下写真の4幅は、2024年5月の一斉展示作品。
魚類系は衆鱗図(香川県立ミュージアム所蔵)とオーバーラップします。
まさに魚図鑑。タコの足先の子ダコに注目。

尚蔵館がリニューアルオープンした時の第1期展では、前後期で合計8幅の動植綵絵が展示されました。
残念ながらネット予約がとれないほどの盛況だったので未見。
以降は予約サイトを確認しておけば、飛び込みでも見学可能なレベルに入場者数は落ち着いています。
そして5月には再びの休館予定。完成形になれば動植綵絵30幅をコンプリートできる展示室を備えると何かで読みましたが、国宝指定されたのでその御開帳頻度はどうなるのでしょうか?
シリーズを小出しにする展示スタイルは、他にも豪華な所蔵品をいろいろと見る事ができ、お客さんも集中しないので良い方法とは思います。
ただお財布的にはややキビシくなりがちなので、年パスの設定があればありがたい(作品の入れ替えが絶妙ともいえる)。
