練馬大根とペーパーアートの出会い!【練馬区立石神井公園ふるさと文化館:武田有佐】 東京都練馬区
特に目当てとなる目的なしに足を運んだミュージアムで、予期せず満足度MAXな企画展に出会う事があります。つまり良い方の意味での青天の霹靂。
しかも今回は、展示室内でようやく気がつくというけっこうなレアケース。
ちなみに前回のもてぎ(ホンダコレクションホール)の記録は、ココで出会った作品群からのインスピレーション。
練馬区の人口は、23区内では第2位の750,000人。
ちょっとした県庁所在地並みの規模、かつ政令指定都市並みという人口を擁しています(関東では神奈川県相模原市と同程度)。
ちなみに練馬といえば、23区北西部の自動車ナンバー(今は杉並も)。
そして関越自動車道のインターチェンジ。個人的にはそんなレベル。
石神井公園ふるさと文化館

ふるさと文化館は石神井公園内にある歴史系博物館で、2010年の開館。
基本設計は武田有佐(1958- )が手掛けています。
地域の情報コーナーやギャラリーを備え、移築された旧内田家住宅、隣接して石神井プールがある区立のミュージアム。

石神井公園内には野球場やテニスコート、そして旧石神井城跡を活かした緑地公園が広がっています。
東京都練馬区石神井町5-12-16

1Fの情報コーナーには、お約束的な地元のジオラマ。

練馬区の土地勘がないので、眺めてもまったく見当がつきません。
そもそも石神井公園が練馬区と知ったのは、ふるさと文化館。

スタイリッシュな施設ですが、なぜか今時なカフェはありません。
代わりにあるのは、武蔵野うどんが提供される飲食スペース!

展示スペースは2Fエリアに。

実はふるさと文化館は2度目。
前回は石神井城跡の発掘的な企画展が目当てでしたが、展示品の中には
発掘された「日本最古のコーラ缶」
という冗談のようなモノがあり、少し刺さりました。
今回は入館時点では企画展情報は持っておらず、目的は練馬の代名詞を確認するため。
企画展は有料、先に無料の常設展示へ。
練馬といえば・・・

ここを訪れると実感します。圧倒的な大根の洪水によるお出迎えによって。
練馬といえば、やはり大根なのでしょうか?

おそらく業務用とはいえ、このサイズの巨大な樽でたくあんを漬けているのは想定外。

大根料理もいくつか展示されていましたが、いまいち破壊力不足。
ハレの日というより日常食的なラインナップ。
まあそういう食べ物の方が大事なのは理解しますが・・・


大根の生産周辺に関する展示も充実。

いまや住宅街ですが、大消費地至近という農地を生かしたのが練馬大根。

コメの国・日本において、大根の1年という視点。
地域ミュージアムに必要とされるオンリーワンな個性です。
農事暦とありますが、年間では農作業期間はそれほどありません。

種作りもブランド化には重要なパート。
意外と現代農業にも共鳴する展示内容。

ここからは近年の公立ミュージアムの鉄板ネタ、THE 昭和なエリア。

タバコ屋には、今や歴史資料へと昇格した赤電話(公衆電話)。

続いては、今や失われたブランドとなったナショナルの看板に、なぜかエンブレムが隠されているオート三輪(たぶんダイハツ・ミゼット)。

やっぱり再現されているのが昭和の住宅。
柴田さんちは6人家族。子供4人なのか、それとも3世代住宅なのかは不明。
住所はふるさと文化館の設定。

これまた鉄板、星一徹の必須アイテム。

学習机が置かれているのは、どういうスペースなのか?

としまえんの記憶も展示されています。94年という年月がビミョー。
2020年8月31日をもって閉園していますが、所在地が練馬区だったとは。

人気だったという乗り物、その名もオートスクーター。
階段の脇にさりげなく展示されているので見逃さないように。

2Fのギャラリースペースには、展示即売所的なショーケース。

気になったのは、ウサギとネコのおきあがりこぼし。なぜ会津?
カワイイ木工製品ですが、プライスはカワイくない(¥3,000-6,000)。

特にネコは手は込んでいて、使用木材によって毛並みの色を表現。
使用色が増えると当然のプライスアップ。
ヤマガラ(鳥)は5色使用で¥15,000。
そして最後に有料(¥300)の企画展へ。
ポスターを見てスルーしようかと思いましたが、せっかくの機会なので。
ところが、これが・・・
ペーパーアートとは

入口には本日の主役がドヤ顔。
展示された油絵は、主役が高校1年時に描いた石神井公園。
魔術師とは大きく出たなと思いつつ展示室内をブラブラ。

2025年9月13日-11月3日 @ふるさと文化館
そもそもチラシがとしまえん。現地では気がつかず。
作品はなんだか見たコトのある世界観。

じっくり見ると、素人にもハッキリと分かる超絶技巧な作品たち。

問題なのはその作風。
必ずどの作品にも描かれている?のは車と犬。
正確には切り抜かれているんですけど。

飛び出す絵のような立体感あふれるペーパー作品群。
その名もペーパーアート。解説には、
「カットした紙を何層にも重ね、17cmの奥行きの中に絵をつくり出す」
令和の世はアクリルスタンド全盛の時代。
ただプラスチックに画像をプリントしたモノとは違い、手作業によって生みだされる工芸品のような作品は、紛れもなくアート。
作者は太田隆司(1964- )、東京都清瀬の人。
愛車は1984年式のポルシェ911タルガ(屋根が脱着できるタイプ)。
最初に見たコーナーには「昭和の嫁ぐ日」的な作品が数点。
その中からの個人的チョイス。

お約束の犬は、水路のハナショウブの影に隠れています。
車は常設展示を意識しているのかダイハツ・ミゼット。
実はミゼットの作品は、後から探しました。
続いては石ノ森章太郎関係の2点。
左は2007年に石ノ森萬画館(宮城県石巻市)で公開されたという作品。
ご存じショッカーと戦う仮面のバイク乗り。

右は石ノ森章太郎、生誕70周年記念の作品。
マンガというより劇画調石ノ森章太郎と飛び出す9人のサイボーグ。
立体感や質感がすさまじく、キャラのレイアウトが絶妙。

こちらにも仮面のバイク乗りがいます。先生以外の人々は誰だか不明。
太田さんの作品は、出身地清瀬市の公式ペーパーアイテムや焼酎のラベルにも採用されているようです。

「君暮らす街」はニンジン焼酎とのこと。
ラベルは四季を表現して4種類。
実はエンスー向け自動車雑誌カーグラフィックに、1995年から掲載されていたのが太田作品。目次ページと対になるような折込ページとして。
展示室後半に進むと記憶にあるような作品が並び、ようやく脳内でリンク。
CGへの作品掲載は2020年に終了したようで、帰宅して手持ちのバックナンバーを何冊か確認してみると、2019年の4月号のストックには・・・

開けてビックリ! 4月号に掲載されていたのは、展示されていたこの作品「東京雷門の正月」。
(誌面ではライティングによって、半分夕焼けの演出が施されています。)
2025年の風景ならば、ほぼ外国人なシチュエーション(たぶん)。
車は今や珍しいスマート(スウォッチ&メルセデスのコンビ)。
もちろん犬も雷門前に陣取っています。
平面(誌面)と立体(実物)では、ずいぶん印象が異なります。
続いては名古屋をモチーフにした作品。

徳川家康らしき人物を中心に、外国人の記念撮影を仰せつかったのは足軽。
車は衝撃のピンククラウン(平成)と昭和モデルを従えた初代クラウン。
名古屋は尾張の国ですが、車は三河のトヨタ一択。
東海から少し西の関西地方へと向かいます。

大阪のワンコはタイガースのユニフォームを着用。
ヒョウ柄のオバサンは見当たらず。
づぼらやは残念ながら現在は閉店となり、看板も撤去されています。
車は地元ダイハツから3車種。
関西から中国地方の街へ。

広島は当然のマツダ。
車はマツダの魂ロータリーを搭載したRX-7と今も看板のロードスター。
そして中心にはなぜかデミオ。
こちらのワンコはカープのユニフォーム姿。市電の広告もカープ。
そしてホンダはというと、何故か三重四日市の運河に掛かる末広橋梁から。
鈴鹿つながりか?

シティ&モトコンポにスーパーカブとS500(たぶん)。
広がるのは、もてぎのコレクションホールそのままな風景。
この作品のテーマは「令和のバイク女子」と「古き良き昭和スタイル」。
ここ数年カブに乗る女の子が目に見えて増えましたが、モトコンポに遭遇する機会は皆無。そういえばピンクカブも衝撃でした。
整列したワンコの左端にはニャンコ。
こちらが、個人的グランプリ作品。

小道具にはカーグラフィック誌や作家本人の写真集。
タミヤのビッグスケールキットをモチーフに、配置された主要なホンダ関係者という構図が素晴らしい。これがボックスアートでも全く違和感なし。

創業者の本田宗一郎、ドライバーはR・ギンサー、J・サーティースにR・バックナム。そしてF1チーム監督を務めた中村良夫の姿も。
犬が見当たらないと思いきや、タミヤマークを咥えています。
実物(オリジナル)はこちら。
現在はRA273としてエッチングパーツ付きで再販されています。
ビッグスケールはデカ過ぎて手を出さないサイズ。
他にも製作途中の作品パーツ類を巧妙にディスプレイ。
下写真のサンシャインビルの風景画は、太田さんによる水彩画!
西武池袋本店屋上からのビューは、なんと中学3年時の作品。

また立体作品は、フェラーリ12気筒車やポルシェ初期のカブリオレとそのチョイスがマニアック。
さらにキャブやピストンの車パーツ類に、小ネタのタミヤキット。
小ネタなのに、実際のアルファ・ジュリアのパッケージアートをほぼ再現している驚愕のシロモノ(もはやヘンタイ視点)。

「一応見ておきますか・・・」から豹変したかのように会場をグルグル何度も歩き回る姿は、監視員の目にはどう映っていたのか定かではありません。
ただ本人は満たされ、気分はレッドゾーン。
太田作品が気になる人には、こちらの作品集をご紹介。
表紙の原宿駅作品は、企画展でも展示されていました。
原宿駅もこの姿はかつての姿。これも歴史。

最後に、かつて練馬に広がっていた農村の記憶も押さえておきます。
旧内田家住宅は明治20年代初頭に建てられた茅葺住宅。
築100年を軽くオーバー。昭和・平成と一部増改築されていたようです。
2007年には部材レベルに解体され、その全貌は調査済み。
ふるさと文化館オープンの2010年に、この場所へ移築復元されています。

では物件の紹介を。
古民家には鉄板の囲炉裏と土間を完備。
立派な梁もチャームポイントの1つ。

上座敷は非常に凝った仕上げとなっております。

ガイドさんによると、見学時には囲炉裏に落ちた子がいたとかいないとか。
またプールの季節にはビチャビチャの子供が来襲する事も。
子供の動きは、いつでも予測不能。
練馬大根以外は、良くも悪くも捉えどころのないふるさと文化館。
ただ意表を突かれた企画展は、意外にインパクト強め。
ペーパーアート展は11月3日まで。

