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レッドブルRB16Bの強心臓とローソンのNSR500【ファクトリーマシン11】ホンダウェルカムプラザ青山6 東京都港区

2025年3月末で一旦お休み(HP上ではしばしのお別れ)となるホンダウェルカムプラザ青山。2025年に入ってからクロージングイベントや過去のホンダ車両の入れ替え展示等々、地味にその日を迎えようとしています。
3月に入ると展示は市販車がメインになってしまい、個人的にはもう終了したも同然な状態。貴重な車両をとっかえひっかえというワケにはいかないのでしょう。(現在休館中)


残念ながら市販車では特に気になった車やバイクには出会えず、数少なかったレーシングマシンの中からキラリと光った2輪と4輪の1台と1基を。

シビックも大きくなりました

東京都港区南青山2-1-1

主役と思われるのはレッドブル・ホンダRB20(ショーカー)でしたが、その向こう側には一風変わった展示が。

RB20

RA621H ’21

このエンジンがどんなヒストリーを持っているのかはすぐには思い出せず、調べてみるとF1に復帰したホンダが、久しぶり(30年ぶり)にワールドタイトルを獲得したマシン(2021年)の心臓部でした。
今やエンジンではなくパワーユニット:PUとかICE:内燃機関と呼びます。

展示方法が斬新でスケール感が一目瞭然。車体に搭載された状態ではPUの全貌は掴めず、また単体だと「何コレ?」となりがち。
今まではクリアケース内に収納される展示状態がデフォルト。

ありがちなスタイル

新方式だと「あーF1の!」となります。
PU前部の黒い箱が、このシーズンにホンダが投入した新型バッテリー(エナジーストア:ESと呼ぶらしい)。
パワーが長持ちしてスゴイと評判のESは、ホンダの内製(ホンダはパーツの自社製にこだわりがち)。

最近のエンジン本体には色々なパーツが付いていてよく分かりません。
現代のPUは排気ガスと減速時のエンジン回転エネルギーのダブルで発電し、その電力でモーターを駆動します。

RH621H(2021年)
水冷V型6気筒1,500cc
ターボ過給&モーターアシスト
最高出力:1,000PSぐらい
ホンダジェットのエンジンテクノロジーも注入された当時の最高到達点。

ライダーベルトのようなコンプレッサーはターボと直結
低い位置のクラッチとその上のターボ

エンジンの基礎体力を底上げ(頑丈に)するために、骨格を鋳造ではなく削り出しに変更。ここ数年はバイクでもブロックやクランクケースは高価な削り出しが標準仕様(軽量化にも貢献)。

こちらはホンダの7年間に渡る苦闘がまとめられた1冊。

最後の最後に結果が出せて良かったねと思える内容。
そのテクノロジーは進化し過ぎです。

このPUを搭載していたのが・・・

レッドブル・ホンダ RB16B ’21

(参考)レッドブルRB16B

レッドブルRB16B(2021年モデル)の心臓こそがRA621H。
しかも過去に運よく撮影していたスペシャルカラー版。
鈴鹿での日本GP用スペシャルカラーでしたが、例の入国規制のあおりを受け日本GPそのものが涙の中止。
ところがレッドブルの粋な計らいによって、トルコGPにはこの装いで降臨。

鳥の羽根的なフロントウィングはエレメントが多く複雑な曲線を描きます。
スペシャルカラーのモチーフは、実は下のマシンから(こういうのがホンダの歴史の深さ)。

(参考)RA272 @ホンダコレクションホール

RA272は1965年ホンダF1の初優勝マシン(しかも車体&エンジンのオールホンダ)。ホンダF1の始祖に相当します。
当時のシンプル極まりない日の丸カラーをレッドブルが見事にアレンジ。

やっぱり牛は外せないか

「ありがとう」はレッドブルからホンダ(当時の経営判断により2021年限りでF1撤退を発表)への感謝の言葉。
ところが結果的にエンジン供給体制を変更して2025年まで参戦延長。
その後には2026年から別チームと組んで復帰予定が発表されます。

なんとなく2025年のレーシングブルズ(レッドブルのジュニアチーム)のカラーリングと似ています。

リアウィングにも

今の時点では、ありがとうを言わなきゃいけないのはホンダのような気が。

そして個人的に釘付けとなったのは、F1よりもエディの愛機。

NSR500 ’89

ホンダNSR500は2輪の最高峰レースWGPの1989年チャンピオンマシン。ライダーはステディ・エディことエディ・ローソン(アメリカ:1958- )。

前年はヤマハで世界タイトルを獲得したローソンは、ホンダに移籍しての連覇という偉業を成し遂げ、通算4度目のタイトル。

NSR500(1989年モデル)
2ストローク水冷V型4気筒 500cc
最高出力:165PS / 12,000rpm
重量:130kg

ホンダは前年のタイトル喪失からマシンコンセプトを大幅に変更。
低重心、高剛性、高出力の追求路線から、ライダーの感性に馴染む特性を目指します。いわば剛から柔への転換でしょうか。
数値上のデータがどんなに良くても、人が扱いきれなければ宝の持ち腐れという考え方。

方向性は概ね間違っていませんでしたが、当時の技術ではいわゆるいい塩梅の基準はあくまでライダーの感性(ホンダは技術者優位の組織な印象)。
トップライダーのローソンの評価・分析を毎戦フィードバックし、車体もエンジンも改良が加えられます。

ホンダの物量投入は凄まじく、フレームは15種類も作成されローソンは5つのタイプを実戦で使用しています。写真はそのうちの1つでステアリングヘッドあたりが補強されたモノ(最終型ではなく進化途中型)。

最終的には全体的に補強が増した溶接跡だらけのフレームに変貌。
エンジンもアクセル開度のリニアリティを上げるためクランクマスを増やしたタイプをローソンは好みました。

ロスマンスが時代を感じさせる

当時はマルボロを筆頭にタバコマネーの全盛期。
ロスマンスといえば2輪はホンダ、4輪はポルシェ、後にF1のウィリアムズ。
時代は流れて現在はエナジードリンクが幅を利かせます。

右側がブーメラン型のスイングアームは太いチャンバーをクリアするため。
チャンバーの収まりは、デザインよりも職人の手作り感が前面に出ています。ワンオフな雰囲気は当時のファクトリーマシンならでは。

当時の映像を見るとステディ・ローソンというより、暴れ馬を操るようなライディングでした。もちろんハイレベルで恐ろしく丁寧な操作と評されたローソンですが、ハイパワーな上に超軽量なバイクなので、見るからに神経質な動きを見せます。
頻繁なバージョンアップは、そんなバイクを手の内に収めるため。

あれから30年以上経って、当時の関係者らへの取材を重ね、ヴェールに包まれていた事実がまとめられたムックがここに(ここ数年多いパターン)。

各種数値やデータの拾い方とその構成力がオタクの極み的な視点。

そしてもう1冊。
古本で探すのも悪くはありませんが、電子書籍はこちらから。

豊富な写真と根本健による試乗レポート&詳細解説。
もはや絶滅危惧種のジャーナリストによる直接試乗が掲載された1冊。

ローソンはタイトルを獲得したにもかかわらず翌年の契約は更改されませんでした。ホンダのスタッフやその仕事ぶりはベタ褒めしていたにもかかわらず、ホンダからの評価(契約内容)が仕事の成果(チャンピオン)に見合わなかったからとも。

現在では市販車のバイクでも200PSはザラにありますが、4ストロークエンジンは2ストロークと比べればはるかに調教されていて、かつ車重は200kgはあるのでその挙動は穏やかです(制御もいろいろ)。
またレースではシュミレーション技術の進化により、走行前にパフォーマンスもある程度予想されています。
ただエンジニアの創造力を超越するライダーやドライバーが存在するのもモータースポーツの魅力の1つ。

ホンダの本社が新しくなった時にウェルカムプラザがどうなるのか明確にアナウンスされていませんが、こうした歴史の断片が垣間見れるギャラリーを残していただければと。茂木はちょっと遠いし。

@ホンダコレクションホール

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