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お正月は松林図だけじゃない! トーハクのトーハク2026:東京国立博物館8 東京都台東区

2026年は1月1日からの開館と気合十分のトーハク。ただなんとなく人が多いような予感と降雪予報に気が進まず、三が日はあえて静観。
そして日曜夕方ギリギリなら多少はマシかなと期待してトーハクに初もうで。人が多かったら出直せばいいやと割り切って。


正門の門松がスタンダード仕様になっていたのが、ここ数年の流れとは異なる2026年の幕開け。ムリに飾り立てなくてもとは思います。
当日のお客さんは、多くもなく少なくもなくというレベル。
今年の干支関連を集めた企画展示と能登の絵師による国宝屏風画がお正月の主役です。今回の記録は、能登の絵師とそのライバル絵師集団を中心に。

2026年

東京国立博物館

東京国立博物館(トーハク)は日本最高峰のミュージアム。
収蔵品は約120,000点。そのうち国宝は89件、重要文化財は653件と圧倒的な質と量を誇ります。コレクション展は展示替えも多く、特別展がない時期でも間違いなく楽しめます。
必須の年間パスポートは¥2,500。おまけに京都・奈良・九州の国立博物館のコレクション展示も無料で観覧可能。

東京都台東区上野公園13-9

エントランスから続く階段突き当りには、真生流や池坊の生け花ではなく絵画が収まっています。どうやら生け花系の展示は終了した模様。

2025年のニュースで、「国立系ミュージアムは自ら収入を増やすべし」的な記事を目にしていました(検討課題によく挙げられるのは二重価格制)。
税金が投入されている事を考えれば、日本在住者以外(いわゆるインバウンド客)との価格差もある程度は当然かと。併せて対応インフラの増強も。
そして生け花が姿を消したのは経費抑制対応かも?と頭の中をグルグル。

生け花に代わるその絵画は、千住博せんじゅ ひろし(1958- )のウォーターフォール・陽光(2024-25年)。しかも作家からの寄贈品!

ウォーターフォール

モノクロのウォーターフォールはどこかで見た記憶がありますが、赤バージョンは初見。大分県別府の血の池地獄的なややシュールな世界。

ミュージアムのエントランスに古美術ではなく最新の美術品を据えるというのも悪くありません。撮影スポットとして足を止める人も多数。

コレクション展示は1月から一部入れ替えられています。
ちなみに記事は館内の動線をまったく無視した流れです。


千手観音菩薩坐像(南北朝時代)&四天王立像(鎌倉時代)。

千手観音菩薩&SPたち

仏像展示では定番の、大将(仏さんや観音さん)を中心に守護する四天王や童子たちをレイアウト。

聖徳太子立像は鎌倉時代の作品。

聖徳太子立像

太子が2歳のころ、東方を向いて合掌しながら「南無仏」と唱えると手から仏舎利ぶっしゃりが出現したという伝承を再現。ハンドパワーの元祖か?

そして国宝展示室には、あまり見た事のないレベルの人口密度。
どちらかといえば日本人比率が高く、撮影目当ての方々が多め。
とりあえず館内をぐるっと廻ろうとスルー。

ちなみに国宝室の隣の部屋には、別の国宝が展示中。
ただこちらは閑古鳥とかわいそうな状況。
その国宝は、聖武天皇の書いたとされるお経。

大聖武

お経は東大寺に伝来し、大聖武おおじょうむと呼ばれる賢愚経残巻けんぐきょう ざんかん(奈良時代)。意味は分かりませんが、記された文字は読みやすい書体。
すぐ側には大聖武の断簡も展示されていましたが、トーハクに数種類の断簡がある模様。

干支の展示室

干支関連の企画展示室も人口密度はやや高め(正月だから当然か)。

神馬図額しんめずがくは室町期の作品(兵庫・加茂神社蔵:重要文化財)。

神馬図額

作品は播磨守護だった赤松氏の家臣による奉納。
作者は狩野元信かのう もとのぶ(狩野派2代目:1477-1559)。狩野派と幕府有力者(その陪臣クラス)のコネクションが分かります。

競馬図扇面くらべうまず せんめんは、江戸期の狩野永淑えいしゅく作(主信もろのぶ:中橋家:1675-1724)。

競馬図扇面

江戸時代には画壇ピラミッドの上層部を独占した狩野派。
ただその作品からは室町期の豪快さは薄まり、標準化されていった印象が。
視点を変えるとそれが洗練なのかも。

松巴螺鈿鞍まつともえ らでんくらは室町時代の実用品かつ工芸品。

松巴螺鈿鞍

日本の超絶技巧の系譜。

コレクション展示に戻ります。
大型の作品を座って見学できるからか、比較的人が滞留しているエリアの作品は、輞隠もういん印の花鳥図屏風。

花鳥図屏風

色鮮やかな鳥や花が一面に。輞隠は、狩野元信の弟かもしれない人。
こういう作品がゴロゴロしているのがトーハクのスゴさ。

具足や刀剣が並ぶ展示室に、必ず添えられているのが武将の肖像画や書状。
今回は武将の奥方たちが。

書状は端午の節句の贈り物に対する礼状。左端の下に「せん」と。

千姫 書状

せん(1597-1666)は、パパ(徳川秀忠)も弟(家光)も将軍、じいじは初代将軍の狸親爺(家康)という徳川家のプリンセス。
豊臣秀頼とよとみ ひでより(1593-1615)の正室となりますが、じいじとパパによる大坂夏の陣で豊臣家が滅亡すると実家へとリターン。後に本多忠刻ほんだ ただときの正室に。

礼状の隣には、本多正信夫人像(模本:森田亀太郎もりた かめたろう)。

正信夫人像

本多正信ほんだ まさのぶは家康の右腕。戦闘能力ではなく政治能力で政権に貢献し、家康の思考や内面までケアできた人。
この場所では過去に正信像(原本は重要文化財)も展示されています。

本館の7~10室(2F)は整備のため4ヶ月ほど閉室中。
普段は通れない階段を使って1Fと2Fを移動します。

閉室されているのは、安土桃山から江戸期の作品が展示されていたエリア。
大型作品の専用展示室は、反射のきついガラスの改善を期待。

1Fに下りると江戸時代後期から明治時代。
春庭鴛鴦しゅんてい えんおう狩野芳崖ほうがい(1828-1888)筆。

春庭鴛鴦

芳崖は木挽町狩野家の門人ですが、明治維新後はアーネスト・フェノロサらと共に日本画の近代化に貢献した長州の人。
狩野派も御用絵師という特権からの脱却が余儀なくされた時代に。

続いて日本画の近代化草創期を支えた10名の画家による共演アルバム。

光風霽月帖

その中から横山大観よこやま たいかん(1868-1958)の「月明」をチョイス。
ルビはふられていませんでしたが、英語表記では「Moonlight」。
絶妙なお月さまの描写はムーンライトの方がしっくりきます。
松林図に呼応したかのような展示。

月明

2025年のお正月展示では、岩倉具視いわくら ともみ大久保利通おおくぼ としみちの肖像画が展示されていましたが、2026年は公家のお二人。

三条実美さんじょう さねとみ(1837-1891)像は、原田直次郎はらだ なおじろう筆。

三条実美像

尊王攘夷派で、明治新政府では元勲となった公家の1人。のちに公爵。

もう1人の近衛忠熙このえ ただひろ(1808ー1898)像は、松岡寿まつおか ひさし筆。

近衛忠熙像

こちらは実美とは対照的に、政治とは距離を置いた人。
近衛家は公家の頂点五摂家ごせっけの筆頭。

再び国宝室へと向かいます。ところが相変わらずの人口密度。
その日はあきらめて黒田記念館の正月展示へと方向転換。
ちなみに黒田記念館はトーハク西側にある別棟です。
なぜか記念館は入場無料、そしてお客さんはだいたい少なめ。

黒田記念館

黒門

黒田記念館はトーハク正門を出て右方向へ。
黒門を通り過ぎて最初の交差点、旧博物館動物園駅の斜向かい。

動物園駅

黒田記念館は1928年の竣工。洋画家黒田清輝くろだ せいき(1866-1924)の作品を収蔵・展示する、黒田清輝による黒田清輝のための施設。
設計は岡田信一郎しんいちろう(1883-1932)。現存建築では明治生命館(1934年)も設計した人。

黒田記念館
黒田さん

展示室の一角には黒田清輝の使ったイーゼル、イス、絵の具箱が。

黒田記念室

特別室は、2012年の改修後に「読書」「舞妓」「湖畔」「智・感・情」の展示室としてオープン。公開される機会も少なめというレアな展示室。

特別室

「智・感・情」を中心に、左に「湖畔」、右に「舞妓」&「読書」を配置。
「読書」以外は全て重要文化財。じっくりと鑑賞している人が目立ちます。

肝心の国宝屏風は、後日に滑り込みでチェック。

トーハクのトーハク

改めて足を運んだ国宝室。やはり高めな人口密度。
そして撮影する人々が群れをなす状況。そんなに人気?

2026年レプリカ

実は1F展示室にはレプリカが鎮座。こちらはガラガラ。

2026年本物

能登の絵師長谷川等伯はせがわ とうはく(1539-1610)の傑作として名高い松林図しょうりんず屏風

(参考)トーハク像 @七尾駅前

松林図は、いつからかトーハクのお正月の顔に。
今年の状況を見ていると、トーハクのお正月戦略が実を結んだと言えます。

実は国宝室のすぐそばにあった干支コーナーにも、ひっそりと等伯作品が展示されていました。

馬と一緒に描かれているのは名和長年なわ ながとし
ただし肖像の主は、能登に所領のあった足利将軍家の馬術師範斎藤好玄さいとう こうげんや能登畠山氏周辺の人という説が近年は濃厚。

伝名和長年像

長年は後醍醐天皇の隠岐脱出を助けた武将として知られています。
ただ等伯とは時代や接点が・・・ 
等伯の父は能登畠山家の家臣。そこから想像すると能登畠山氏関係がしっくりきます。依然として正体ははっきりしませんが、それでも重要文化財。

一通り見て廻れた2026年最初のトーハク。平日はインバウンド比率が半数を超える状況が日常化していますが、お正月は日本人客もそこそこ。
2025年中には「空いてるな」という印象は、あまり受けませんでした。
ここからさらに収入を増やすとなると、入場料単価を上げる必要もあるのかもしれません。待ち時間長めの特別展では、ファストパス的な対応もアリ?

表慶館

最後に1日では廻りきれないトーハクの参考書と松林図屏風の図録を。
2015年に淡交社から発刊された「探検!東京国立博物館」。

建築家の藤森照信ふじもり てるのぶと日本画家の山口晃やまぐち あきらが、トーハクを多面的かつゆるーく紹介。もちろん黒田記念館も網羅しています。
トーハクのショップでも販売中(たしか)。
山口画伯のマンガは秀逸。発刊当時の画伯の本館印象は「人が少ない!」。

図録は2010年にトーハクとキョーハクで開催された等伯展のモノ。
335ページと携帯には不向きなボリュームで、当然の絶版品。

図録オープニングの論考は、国宝展示室での解説文も担当していた人。
古本ですが値段設定にはけっこうな開きがあります。お店選びは慎重に。

ちなみにトーハクのお正月は2023年からシリーズ化しつつあります。

干支を1周できるかどうかは自分次第。

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