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【Lil Fovnt #57】JAŸ-Z『Reasonable Doubt』30周年。桁違いのポップアップと自分たちの現在地

Jay-Zのデビューアルバム『Reasonable Doubt』がリリースされてから30年が経った。
もうそんなに経ったのか〜。

1996年にドロップされたこのアルバムは、ハスラーとしての野心やブルックリンのリアルな視点、そしてラグジュアリーなラップの世界観で構築されたストリートレベルのクラシックだ。

当時、メジャーレーベルから契約を断られた彼が自らRoc-A-Fella Recordsを立ち上げ、インディペンデントで世に放った作品であり、その後のビジネスマンとしての彼のキャリアを決定づけた原点でもある。

現在、ニューヨークではRoc Nationが主導して「JAŸ-Z30」という街全体を巻き込んだアニバーサリーイベントが行われている。

SpotifyがJ線とZ線の地下鉄車両をジャックしてHov(Jay-Z)のレガシーを讃えるラッピング電車を走らせたり、彼の名曲や歴史的な出来事に関連するニューヨークの重要スポットを網羅した特製の「JAŸ-Z30地下鉄マップ」が配布されたりしている。

そして外せないのが、ブルックリン公共図書館での限定デザイン図書カードの配布だ。
本館や、彼が育ったプロジェクトの近くにあるマーシー分館などで配られているらしい。前回の『The Book of HOV』展の時にも話題になったが、図書館という「公共機関」まで巻き込んでヒップホップのレガシーを街に根付かせるこのスケール感が本当に半端じゃない。

今日(7月10日)からは、ヤンキースタジアムでの3日連続のスタジアムライブもスタートする。

でも、個人的に一番喰らったのは、彼らが仕掛けた「ポップアップショップ」の存在だ。

自分たちSkip Social Studiesも今、自分たちのポップアップをやろうと考えて色々と動いている最中。
しかし、このJay-Zのポップアップの作り込みを見て「マジかよ」と声が出た。

舞台はマンハッタンとブルックリンの2箇所。

マンハッタンでは、ロウアー・イースト・サイドにある使われなくなった地下鉄のボワリー駅を丸ごとジャックしている。
地下の空間に5つの古い電車車両を置き、そこを1996年の『Reasonable Doubt』の世界観や初期のキャリアを体感できるアーカイブ空間に作り変えた。
これがカッコいい。

空間全体にアルバムの楽曲が響き渡る中、「Dead Presidents」や「Feelin' It」のMV、当時のパフォーマンス映像やプロモーション資料が展示されている。
しかも初日には、LucaliのピザやCloudy Donut Co.のドーナツが無料で振る舞われたという。完全にニューヨークのストリートとカルチャーを体現している。

そしてブルックリン・ダンボ地区でのポップアップ。
Apple Musicとタッグを組んで作られたこの会場(Smack Mellon)は、名曲「Dead Presidents」のMV撮影で実際に使われた元ボイラー室だ。

中は美術館とショップが融合したような空間で、壁一面にレコードが飾られ、当時のマーシー・プロジェクト(Jay-Zが育った団地)で撮られたアイコニックな写真が巨大なインスタレーションとして再現されている。
DJが会場の音楽をコントロールする中、来場者には2003年のレアなミックステープ『The S. Carter Collection』がこっそり無料で手渡されるという粋な演出まであったらしい。
このミックステープ本当に聴いてみたい。

もちろん、そこで売られているグッズもエグい。
ニューヨーク・ヤンキースとコラボした400ドルから1200ドルもするスタジャンや、1500ドル(約24万円)の13枚組限定アナログレコードセット、そしてPaper PlanesによるアルバムのトラックリストTシャツやピンバッジなど、ただの記念品を超えたアイテムが揃っている。

ポップアップっていうのは、単に「物を売る場所」じゃない。
そのブランドやアーティストが持つ「歴史」「空気(Ambiance)」「ストーリー」を、空間全体でどう来場者に体感させるか。

Jay-Zのチームは、莫大な予算と圧倒的なセンスでそれをニューヨークの街に叩きつけてみせた。

自分たちに地下鉄の駅をジャックする予算はないし、ヤンキースタジアムを貸し切ることもできない。
でも、空間で「何を伝えるか」「どんな空気を作るか」という本質的な部分は、規模が違えど同じはずだ。

自分たちのブランドが持つストーリーを、どうやってリアルの場に落とし込むか。
Jay-Zの桁違いのスケールを見せられて、そんなことが頭から離れなくなった。

とりあえず、もう一度『Reasonable Doubt』を聴き直しながら、自分たちの企画書を練り直すことにする。

最後に思うのは、出来ることなら行ってみたかった。

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Ambiance Maker  Ko-Ta

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