北朝鮮 "衛星打ち上げ"の言行不一致
10月を過ぎました。北朝鮮は「10月に三度(みたび)偵察衛星を打ち上げる」と予告していたのですが、実施されませんでした。
おお、かの国がミサイルやロケットをやめると「改心」したか…とは誰も考えていませんよね。
実際、韓国の情報機関である国家情報院は、11月1日、北朝鮮が衛星打ち上げに向けた「詰めの段階」にあると報告しました。
「詰めの段階」というだけでは、次の打ち上げの企図がいつになるか予測は難しいので、ここでは「なぜ予告通り10月に打ち上げられなかったのか」についてサクッと。
(※冒頭の写真は2012年に撮影した平壌です)
2回目失敗のあとは強気だったが…
軍事目的の偵察衛星を軌道に乗せるというのは、北朝鮮が2021年に出した国防力強化の5か年計画に盛り込まれたものです。「~か年計画」といった中期的なプランが好きなのは(もう数えるほどしかない)社会主義の国々に共通しています。
しかし、「万里鏡(マンリギョン)1号」と名づけられた衛星を搭載したロケットは、まず5月31日に打ち上げ失敗。その際、北朝鮮の国家宇宙開発局は「可及的速やかな期間内に2回目の打ち上げを断行する」と宣言。
そして8月24日に2回目の打ち上げを試みましたが…やはり失敗。
失敗を繰り返したのだから国家宇宙開発局は慎重になるかと思いきや、むしろ強気になりました。2回目の失敗直後、「原因はエンジンの信頼性に関わるもので、大きな問題ではない」として10月に3度目の正直に挑むと宣言したのです。
1回目の失敗のあとは「可及的速やかに」と現実的な構えだったのに、2回目は具体的な期限を切ってみせたのは、どう考えればいいのでしょう。
科学者たちが2回目の失敗では技術的なトラブルは本当に大したことないと判断していたのか、それとも最高指導者の怒りに震えあがって無理をしたのか…
真相は分かりませんが、10月10日は朝鮮労働党の創立記念日ということもあり、日米韓などは警戒を続けてきました。
ですが、10月は静かに過ぎていったというわけです。
ロシアの宇宙基地で何が話し合われた?
北朝鮮は「有言実行」の国です。全てとはいいませんが、「言ったことは実行する」という傾向が強いのは確かです。小国であるがゆえに、「口先だけ」と見くびられてなるものか、ということなのでしょう。
では、なぜ「三度目の正直」を狙った10月の打ち上げはなかったのか。
カギは金正恩総書記のロシア訪問にあるということで専門家らの意見は一致しています。ロシア極東の宇宙基地でプーチン大統領は北朝鮮のロケット打ち上げを技術的に支援することを示唆しました。
実際にロシアが支援をしたとなると、おのずと10月の打ち上げがなかった背景が見えてきます。
ロシアから科学者たちが北朝鮮に入り、これまでの2回の打ち上げ失敗を検証したところ、北朝鮮側が考えていたよりも多くの課題がみつかり、慎重にならざるを得なかったということです。そうであれば、今は露朝両国の科学者たちが一緒になって3回目の「詰めの段階」の準備にあたっているのでしょう。韓国国家情報院は、ロシアからのテコ入れによって3回目は打ち上げ成功の確率が高まるという見方も示しています。
異論も
ただ、宇宙基地で行われた露朝首脳会談で、金正恩氏がおびただしい数の砲弾をロシアに輸出する見返りとして求めたものが、本当にロケット打ち上げに関する支援だったのかについては、異論も聞こえてきます。
私が最近会った韓国の専門家らは、「宇宙基地という場所は演出の色合いが濃く、実際には何か別の軍事支援をリクエストしたのではないか」と読んでいました。
その可能性の一つとしては、例えば軍用レーダー技術の向上をロシアに手伝ってほしいという見方。朝鮮半島で韓国・在韓米軍の連合と北朝鮮軍とを比べると、北朝鮮側が脆弱な部門はいろいろあるものの、中でもレーダーの捕捉能力は雲泥の差だといいます。そうした大きな弱点を補う上でロシアの技術を欲しがったとしても不思議ではありません。
仮にそうだとしますと、今、北朝鮮は自国の科学者だけで3回目の打ち上げを試みようとしていることになり、慎重にならざるを得なくなった…
実際のところは、まだ分かりません。
ただ、いずれにしても、北朝鮮指導部が「自分たちで予告した期限を守れないことのカッコ悪さ」よりも、「3度目も失敗したときの屈辱」のほうがはるかに重大な問題だと判断したのは確かなようです。
