地域ヘルスケア経営シリーズ介護施設編第5回
第5回 2040年に生き残る介護法人の条件──規模よりも重要なもの
介護業界ではよく、「これからは大手の時代だ」と言われます。
確かに一理あります。
人材採用。 教育体制。 ICT投資。 物価高対応。
これらを考えれば、規模の大きな法人が有利なのは事実です。
しかし私は、病院や介護施設の経営を見てきた経験から、少し違う考えを持っています。
それは、大きい法人が生き残るのではない。
地域で必要とされる法人が生き残る。ということです。
実際に、数百床規模の法人でも苦戦しているところがあります。
一方で、小規模でありながら地域から強く支持され、安定した経営を続けている法人もあります。
その違いはどこにあるのでしょうか。
私は、2040年問題の本質もそこにあると考えています。
■ 2040年問題の本質は「高齢化」ではない
2040年問題というと、
高齢者が増える。 介護需要が増える。 人材が足りなくなる。
こうした話が中心になります。
もちろん重要です。
しかし、経営者が本当に見るべき問題は別にあります。
それは、地域ごとの差が極端に大きくなること。です。
人口が増える地域もあれば、減る地域もあります。 高齢者が増える地域もあれば、すでに減り始めている地域もあります。
つまり、全国一律で考える時代は終わる。ということです。
■ 「施設を持つ」から「役割を持つ」へ
これまでの介護経営は、施設を持つこと自体に価値がありました。
特養を作る。 老健を運営する。 有料老人ホームを展開する。
しかし2040年に向けては、施設の有無だけでは差別化できません。
問われるのは、地域でどの役割を担うのか。です。
例えば、
認知症ケアに強い。
医療依存度の高い利用者を受け入れる。
在宅復帰支援に強みがある。
看取りまで対応できる。
病院との連携が強い。
こうした特徴を持つ法人は選ばれます。
逆に、「何でもできます」という法人ほど埋もれていく可能性があります。
■ 財政審議会が見ている未来
財政制度等審議会の議論を見ると、
効率化。 重点化。 集約化。
という言葉が繰り返し出てきます。
これを単なる給付費削減と捉えると、本質を見誤ります。
私には、地域で機能する事業者を残したい
というメッセージにも見えます。
限られた財源。 限られた人材。
その中で介護サービスを維持するためには、
役割の明確な法人が必要になる。
ということです。
■ 人材不足時代に生き残る法人の共通点
2040年問題の最大の課題は人材です。
しかし不思議なことがあります。
同じ地域でも、職員が集まる法人と集まらない法人があるのです。
給与だけでは説明できません。
私が見ている限り、強い法人には共通点があります。
理念が明確。
管理職が育っている。
現場の声が届く。
教育体制がある。
地域との関係が深い。
つまり、職員にとって働く意味がある組織。です。
■ 病院と介護は別々に生き残れない
このシリーズで何度もお伝えしてきました。
病院問題は介護問題であり、介護問題は病院問題である。
ということです。
退院先がない。 訪問介護が不足する。 施設が受け入れられない。
結果として病院の病床が回らない。
こうした問題は全国で起きています。
2040年に向けては、病院と介護の連携がさらに重要になります。
だから私は、介護法人の経営者にも病院経営を知ってほしいと思います。
そして病院経営者にも介護を理解してほしいと思います。
■ 私が見る「強い介護法人」
私は経営相談を受けると、規模より先に次のことを確認します。
地域でどんな役割を持っているか。 紹介元はどこか。 病院との関係はどうか。 人材は定着しているか。 キャッシュは残っているか。
ここを見れば、将来性が見えてきます。
大規模法人でも役割が曖昧なら苦しくなります。 小規模法人でも地域から必要とされていれば強い。
私はそう考えています。
■ M&Aが増える本当の理由
第3回では介護業界のM&Aについてお話ししました。
背景には後継者問題や人材不足があります。
しかし私は、もう一つ理由があると思っています。
それは、地域内で役割を再編する必要があること。です。
単独では維持できない。 しかし地域には必要。
だから統合する。 だから連携する。
M&Aはその手段の一つです。
今後は病院と介護をまたぐ再編も増えるでしょう。
■ 2040年に残る法人はどこか
では最後に、2040年に残る介護法人とはどのような法人でしょうか。
私は次のように考えています。
介護報酬改定を待たない。
数字を見ている。
人材を育てている。
病院と連携している。
地域での役割が明確。
キャッシュを残している。
つまり、制度に依存する法人ではなく、地域に必要とされる法人です。
■ 最後に──介護経営の答えは地域にある
この数回にわたり、2040年問題、 訪問介護。、M&A。、キャッシュフロー、経営指標、についてお話ししてきました。
その中で私が一貫して伝えたかったことがあります。
それは、介護経営の未来は介護報酬だけでは決まらない。ということです。
利用者。 職員。 病院。 地域。そのすべてとの関係性の中で経営は成り立っています。
だから私は、介護経営の答えは国の通知ではなく、地域の中にある。
と考えています。
2040年問題は脅威かもしれません。
しかし見方を変えれば、地域での役割を見直す機会でもあります。
その変化に早く気付き、動き始めた法人が生き残る。
私はそう考えています。
■ シリーズ総括
介護経営を取り巻く環境は厳しくなっています。
しかし悲観する必要はありません。
重要なのは、制度を嘆くことではなく、 自法人の強みを知ることです。
2040年に向けて、生き残る法人を分けるのは規模ではありません。
地域の中で果たす役割です。
それが、このシリーズを通じて私が最もお伝えしたかったことです。
■ ご相談について
私はこれまで、病院・介護施設の経営改善、 事業再生、 管理会計の導入、 M&A支援に携わってきました。
もし、
利用率は高いのに利益が出ない
人材不足が続いている
将来の方向性が見えない
病院との連携を強化したい
M&Aを検討している
といった課題がありましたら、一度立ち止まって数字と経営構造を整理してみることをおすすめします。
経営課題の多くは、問題が大きくなる前に兆候として現れています。
その兆候を見つけることが、経営者の最も重要な仕事だと私は考えています。
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