125年間、支え続けたもの。
木桶には「箍(たが)」と呼ばれるものがあります。
「箍が外れる」という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。
もともとは木桶や樽を締め付けている輪のことを指し、その箍が外れると、木材がばらばらになってしまいます。
そこから、「まとまりがなくなる」「緊張感がなくなる」という意味で使われるようになりました。
つまり、箍とは、木桶を支え続けるために欠かせない存在なのです。


今回、私たちは明治34年(1901年)に製造された60石(約10,000L)の木桶から、真竹で作られた箍を取り外しました。
約125年間、この木桶を支え続けてきた箍です。

昔は、このような大きな木桶には真竹の箍が使われていました。
竹にはしなやかさがあり、木桶が呼吸するように伸び縮みする動きにも寄り添います。
しかし近年では、このような大きな真竹製の箍を製作できる職人も少なくなり、新しい木桶では鉄製の箍が使われることも増えています。
つまり、この箍と同じものを、これから新たにつくることは難しくなるかもしれません。


取り外した箍の状態は、驚くほど綺麗な状態でした。
取り外し作業の中で、職人さんたちからも自然とこんな言葉が聞こえてきました。
「状態がいいから、できるだけきれいに残せたらいいですね。」
ただ外すのではなく、125年間役目を果たした箍を、できる限り美しい状態で未来へ残したい。
現場には、そんな空気が流れていました。
そして実際に取り外された箍は、125年という年月を感じさせないほど美しい状態でした。
そこには、木桶をつくり、守り、使い続けてきた職人たちの知恵と技術が、そのまま残っていました。
その姿を見て、私たちは「残したい」と思いました。

現在、この箍は柴沼醤油醸造の蔵に展示しています。直径約2.3メートル。人と並ぶと、その大きさがよく分かります。
私たちは、この大きさの真竹製の箍を、そのまま展示している例をほとんど知りません。
もちろん、「珍しいから展示した」というわけではありません。
125年間、木桶を支え続けてきたものだからこそ、その役目を終えたあとも、今度は木桶文化を伝える役割を担ってほしい。
そんな思いを込めて展示しています。
私たちが残したかったのは、古い竹ではありません。
そこに込められた職人の知恵であり技術であり、125年という時間であり、日本の木桶文化そのものです。
木桶は新しくなっても、その歴史は途切れません。
125年間、木桶を支え続けた箍は、これからは木桶文化を伝える役割を担います。
これからも柴沼醤油は、木桶文化を未来へつないでいきたいと思います。

