#22 だから僕は旅に出た:BOTANICAL POOL CLUBに行ってみた
元来、僕は旅行記なんてものを書くのは苦手だ。
だけど、あちこちフラフラしているので、記録に残してみようと思う。
旅は心のバランスを取る。
たぶん。
少し前、BOTANICAL POOL CLUBに行った。
場所は千葉県。値段は高い。
ただ、非日常を味わえそうなワクワク感が、予約ボタンを押させていた。
入口は白い壁とヤシの影が目印だ。
住宅の脇を抜ける細い道を、緑のほうへ曲がっていく。
派手な門はなく、葉の陰に黒いサインが立っていた。白い「BPC」の文字が見えた。
部屋は白が基調だ。
コンドミニアムで、2階がベッドルームになっている。そこにはプロジェクターがあって、夜は映画を見るのもいい。

必要なものはすべて揃っていて、手ぶらでも困らない。身軽でいられるのが助かる。
大きな窓の向こうには、プライベートプールの水色がある。
到着して、ゆっくり部屋を見渡して、荷物を置く。それだけで気持ちが落ち着いた。

外に出ると、丸テーブルと白い椅子、そしてグリル。
配置は整理されていて、必要なものだけが並んでいる。

メインのプールは円形で、中央にファイヤーピットがあった。
夕方になると、そこに火が灯った。
水面に光が揺れて、周囲の雰囲気が変わっていく。
人はいる。でも騒がしさはない。
ひとりでも居心地は悪くない。
ただ、静かすぎて、自分の考えの音が少しうるさい。

夜は、部屋の前でプライベートBBQをした。
皿に肉と魚介、野菜が並ぶ。
ソースは小さな瓶に分けられていて、名前が書いてある。BBQ、カクテルシュリンプ、ハニーマスタード、かんずりのマヨネーズ。
丁寧すぎて、逆にちゃんと食べなきゃ、みたいな気持ちになる。こういうところで小心者が出る。

飲み物はシャンパンにしてみた。
グラスがひとつあるだけで、夜の区切りがつく。
大学の締切や未返信の通知は、ここではいったん意識の外に出せた。

食べ終わったあと、もう一度プールを見に行った。
建物の窓が温かく光っていて、水の色が昼より濃い。
泳いでいる人が一人いて、音は小さかった。


そのままサウナへ向かう。
廊下の灯りは控えめで、足音だけがついてくる。
扉を開けると、乾いた熱がいきなり顔に触れて、息がゆっくりになる。
しばらく座っていると、肩のあたりから余計な力がほどけていった。
外に出ると、夜の空気が少し肌寒くて、火照りだけが静かに残る。

翌朝、朝食はちょっと豪勢なサンドイッチだ。
窓の外には、いつもの水色。
水面は朝から動いていて、眺めているだけで時間が進む。

旅の成果は、土産ではない。(サウナハットは買ったのだけどね)
ひとりでまったりする時間が、体の中に残ることだと思う。
帰ってからも、呼吸が少しだけ軽いなら、それでいい。
たぶん僕は、心のバランスを取りに来たんじゃなくて、傾いていたことを認めに来たんだと思う。
これは、そのための贅沢な旅行だった。
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大学教員の憂鬱
だから僕は旅にでる
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