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感謝の気持ちを込めて【3】#創作大賞2025 #創作大賞感想

世の中って、理不尽なことばかりですよね。
真面目にやっている人が損をして、ずるい人だけが得をしているように見える日ってないですか?

頑張っても報われなかったり、
思いやりの一言が誤解されてしまったり、
意味もなく上司に説教をくらったり——。

そんな理不尽なんて、これからの未来に
まったくもって必要じゃなくないですか?

今日紹介するのは、みくまゆたんさんの小説。

理不尽の中でこそ、人間の感情が浮かび上がる。
そんな暗澹あんたんとした世界を、
静かに鋭く切り取った、近未来の物語。




物語の舞台は、2035年。

AIによってあらゆる創作が容易になり、
効率と成果ばかりを求めた結果、知らず知らずのうちに「感じること」を忘れてしまった世界。

AIによって、人々は効率を求め、
思考を放棄しました。

『感情を揺さぶるコンテンツ』より引用

この世界では、感情はノイズ。
他者との距離感も、言葉の抑揚も、
表情を読み取るプロセスさえも、すべてが不要。

匿名こそが「合理的」であり、
画面越しであるが故に、安易に怒り、安易に裁く。
そんな感情を廃した、スピーディーな世界。

この世界ではきっと、
好きな人と目があってドキドキすることもなければ、何も言わずに傍にいてくれるだけで感じる安堵感もないし、子どもの描いた拙い絵に、涙が溢れることなんて、早々起こり得ることではないのでしょう。

何故ならそれは「非効率的」だから。
感情の揺れなど「合理性」の欠片もないから。

便利さの影で、言葉の温度を忘れていく私たち。
物語の冒頭から「これは遠い未来の話ではなく、実はもう、既に始まっている物語なのではないか?」

そう思わせるほどの圧倒的なリアリティが、
みくまゆたんさんの描写力によって、まるで
現代を写す鏡のように、書き綴られていきます。


今から、捜査特別報奨金……
つまり、あなたの懸賞金を決めて下さい

『逃走ゲーム開始』より引用

主人公の大塚おおつか雄一郎ゆういちろうは、
とある事情から「殺人の罪」を犯し、
取調べ室にて、事情聴取を受けていました。

そして、そこで告げられたのは「逃走ゲームへの参加」と、「自身の懸賞金を自分で決めろ」という、合理性の欠片もない、理不尽な命令。

懸賞金額を高めれば逃亡期間が短くなる反面、それは同時に、命の危険を高めるリスクにも繋がる。

こうして唐突に「選ばされる」正解のない理不尽な自由は、読者に強烈な問いを突き付けます。

自分だったら、
いくらで追われるだろうか……と。

この物語の根幹ではないと思いますが、
己の価値や生き様に、いくらの値札が付くのか?

そんなことを考え続けた結果、
そもそも「自分の価値を自分で決める」という行為そのものが、重すぎる罰のように思えてきた私は、いやいや、しかし「自分の価値は自分で決めるものだよな」という二律背反した思考のスパイラルに陥ってしまい……おっとすいません。この話はとても長くなりそうなので、ここで止めときます!笑


僕も彼女の傍についていってもいいですか?

『薮野と長官』より引用

物語の終盤、私がもっとも心を揺さぶられたのは、罪を犯した少女と、それを庇う少年の一節でした。

——心配だから、傍にいたい。

そこにあるのは理屈を超えた感情の震えであり、
怒りよりも難しい、赦しという感情の選択でした。

それはまさに「非効率的」そのものだけれど。

人が人であるという証は、
きっとそういう「非効率的な揺れ」にこそ
宿っているのだと、私は思いました。


人は感情を疎かにし始めたのです。
こんな時代に必要とされるもの。
大塚さん、何かわかりますか?

感情を揺さぶるコンテンツです。

『感情を揺さぶるコンテンツ』より引用

突如始められた「逃走ゲーム」という
残酷なエンターテイメント。

しかしその真意は「人々に心を取り戻したい」
という善性からくるものでした。

結果として、多くの人々がゲームに参加し、
感情を揺らすことに成功したのだとは思いますが、
果たして本当に、人々の感情を揺さぶったのは、
残酷なコンテンツだったのでしょうか?

彼らが〝生きている〟と、実感できた瞬間は、
果たして本当に、追って追われての
逃走ゲームをしているときだったのでしょうか?

ラストシーン。

心が再び揺れ動きだした、
とある登場人物を見て、

私はそんなことを思いながら、
この物語の「真の結末」に想いを馳せて、
そっと幕を閉じたのでした。



本作は、ただの逃走劇ではありません。
そして、ただの近未来SFでもありません。

むしろ、現代社会を静かに反映した物語であり、
AIに支配された世界でも、
人は感情を尊び、思考を続けることが出来るのか。

そんな疑問を投げかける、
読み終わったあとにこそ始まる物語でした。

効率も、合理性も、
現代社会を生きるためには、
必要な「考え方」だと思います。

だけどそれよりも、大切なものは何なのか。
失ってはならないものは何なのか。

皆さんもぜひ本作を一読されて、
その問いに「思考」を巡らせてみてください。

私もきっと暫くの間は、ふとした拍子に、
この物語からの宿題に
そっと思考を巡らせるのだろうと思います。


……ちなみに。


私がもし逃走ゲームに参加するのなら、
最初に逃げ込むのは、たぶん図書館です。

え? なんでかって?

追いかけられるより、
物語を追いかけたい人間だからだよぅ!
……すいません調子に乗りました。笑

私はこの物語の主人公は「薮野圭二」だと思うのです!


私の脳内イメージで描きました!
キャライメージを壊したのならごめんなさい!


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