映画感想文「老人と車」東京国際映画祭アジアの未来、その国の文化が学べる映画ってやっぱり偉大である
どんな家族にも黄金期がある。
その時は気付かない。むしろ精一杯で余裕もない。しかし後々過ぎ去ってから『ああ、あの時がそうだったのだ』と、分かるものである。
そんな家族の振り返りアルバム、ビデオが冒頭に出てくる。
過去を反芻しているのは、妻を亡くしたばかりの老人である。
日本を凌ぐ勢いで高齢化が進んでいるという、シンガポール。これは彼の国での老人と車を巡る物語である。
東京23区とほぼ同じ面積であるシンガポール。政府が交通渋滞防止で車の数を制限するため、車の所有権は高額である。よって車を保有することは日本とは違い、かなりの金持ちを意味する。
そんな国で車を保有している小金持ちの老人には娘と息子がいる。最愛の妻を亡くした彼に、残されたのはもう子供達しかいない。
しかし、親の心子知らず。いずれも父親の援助を受けており、なかなか自立しない。
忸怩たる思いで彼は自らの財産を整理する。
そしてその過程で、トランスジェンダーの女性と出会う。思いもよらぬ彼女との出会いによって彼は少しだけ変化を見せていく。
そして彼自身、大切にしていた過去の思い出から卒業していく。そう、新たな未来に踏み出していくのだ。
そんな様が清々しいシンガポール映画。『東京国際映画祭2025、アジアの未来』の一本である。
毎年10月末から11月にかけて2週間開催される東京国際映画祭。普段見たことない国の映画が満載のアジアの未来が何気に好きだ。
今年もたくさんの初めましてに出会えて大満足。自分にとってあたりもはずれもあるけど。それでもそれぞれの文化背景も学べる映画というツール。やっぱり偉大である。
またこのイベントは監督や俳優の登壇、質問コーナーなどあり、満足度が高い。制作側の思いを聞くと、より映画に対する思い入れが強くなる。既にまた来年も楽しみになっている。

質問に丁寧に気さくに答えてくれる姿が嬉しい
