BARに通いつめた俺が、『音楽を飲む』に至るまでについて語る
おばあちゃんとかって、タバコのことも「飲む」って言うよね
みなさん、飲み物、飲んでますか?
俺は飲んでいる。
めっちゃ飲んでいる。
生命維持とかではなく、もはや趣味の域で飲んでいる。
「へぇ〜、2リットルくらい?」
甘い。
甘すぎる。
アサヒ飲料が誇る不朽の名作、カルピスの原液並みに甘い考えだ。
薄めろ。
原液のまま人生を語るな。
ゾウだ。
俺はゾウくらい飲む。
ゾウは一般的に一日に約100リットルもの水を飲むと言われている。
100リットル。
この途方もない数字を見せられても、想像力がミジンコ並に欠乏しているお前らにはピンと来ないだろう。
具体的に言うと、お前らが毎日惰性で浴びている、あるいはキャンセルしているあのシャワー。
あれを約10分間飲み続けると、ちょうど100リットルになる。
つまり摂取がその量なら、当然排出も同じ量になる。
俺は毎朝、シャワー並みの勢いのおしっこを10分間ナイアガラの滝のようにドバドバと垂れ流し続けている。
「飲み物のある時間」について語りたい
そんな大嘘、どうでもいい。
今日は「飲み物のある時間」という公式タグに、恥も外聞もなく便乗しようと思う。
冒頭から大法螺を吹きまくった挙句、おしっこの話まで挟んだ奴が、コンテストの抽選に選ばれるわけがない。
どんな基準で審査されるのか知ったことではないが、審査員が「あ、おしっこを飲む話するタイプの人か」と察して即ブラウザバックする未来しか見えない。
すみません、審査員さん、もう少しだけ付き合ってください。
せめて次の段落までは読んでくれ。
頼む。
さて、俺が水分をよく摂ること自体は本当だ。
以前語った通り、異常な代謝のせいでよく汗をかくし、持病の薬の影響で体から水分が抜けやすくなっている。
その分、摂る時はしっかり摂る。
ガキの時分は水ばかり飲んでいたが、大人になってからはお茶を飲むことが多くなった。
人間、成長するとこういう地味な変化が起きる。
もちろんアサヒ飲料の十六茶も愛飲している。
めちゃくちゃアサヒ飲料の宣伝をしている。
別に応募要項に「アサヒ飲料以外の話をするなボケ!」と書いてあったわけではないのに、この露骨さ。
むしろ逆効果まである気がしてきた。
広報の人、これ大丈夫ですか?
酒ってなんか、「飲み物」換算しちゃいけない気がするよね
そして、俺は酒も好きだ。
20歳のガキンチョの頃から、オーセンティックバーに通うなんて生意気なことをしていた。
分不相応にもほどがある。
そんな奴だったから、酒でカッコつけたいという意識もそれなりに、いやかなりあった。
虚勢と背伸びの塊だった。
そこでたどり着いたのが「オリジナルカクテル作り」だ。
これを読んでいる皆さんは、オリジナルカクテルのレシピを考えたことはあるだろうか。
俺は舌もまだ肥えていない時期から作っていた。
今思えば恐ろしい話だ。
オリジナルカクテルを作るには、実際の味を想像するセンスが必要になる。
もちろんガキンチョが多種多様な酒を揃えることなんてできないから、余計にこの「想像」の部分が重要になってくる。
幸いにして俺のお袋は料理が美味かったから、味覚の地の部分だけは元から鍛えられていて、最初からそれなりのものが作れた。
母に感謝。
味覚だけは母の遺産。
このオリジナルカクテル作りというのは、小説執筆だなんだという創作全般に似た部分がある。
漠然と「何か作りたい」と思っても、それだけでは何も浮かんでこない。
空っぽの頭からは空っぽのものしか出てこない。
バー初心者がやらかす失敗
よく、バー初心者がやらかす失敗として「私をイメージしたカクテルを作って」というものがある。
これがなぜ失敗なのか。
これを頼まれた時のバーテンダーは、心の中で「てめぇのことなんざ知らねぇよ」と思っているからだ。
当然だ。
初対面の人間に「俺を表現しろ」と言われて困らない職業なんてない。
もちろん常連になってから頼むのであれば話は違うが、これをやらかす人の約87%が初見の店舗でやっているというデータが俺の元に届いている。
届いていると言っても、いまさっき俺が天から受信したものなので、エビデンスは一切ない。
受信よりも受診をした方がいいことは、火を見るより明らかだ。
誰か俺を病院に連れて行ってくれ。
ただ、「私をイメージしたカクテル」という発想自体は、オリジナルカクテル作りの立派な第一歩だ。
なんの知識も持っていなかった俺は、「音楽からイメージしたカクテル」を作っていた。
人をイメージするより曲をイメージする方が、まだ被害が少ない。
俺の秘伝のレシピを見ろ
今日はそのカクテルの秘伝のレシピをお前らに伝授しようと思う。
ありがたく受け取れ。
いや、どうか広めてください!
お願いします!!!
土下座でもなんでもしますからあ!!!!!
早速レシピをポン出しする。
材料は以下の通り。
マリブ:10ml
生クリーム:20ml
ペルノ:2tsp(約10ml)
ホワイトカカオ:15ml
バーボン:10ml
作り方は次のとおり。
ショートグラスをあらかじめよく冷やしておく。
シェーカーにすべての材料と氷を入れる。
しっかりとシェイクする。
氷を入れないショートグラスに注ぎ、完成。
生クリームを使うので、材料をよく乳化させるために、氷を入れてしっかりシェイクするのがポイントだ。
ここで手を抜くと、分離した悲しい液体が出来上がる。
それはもうカクテルではなく、ただの失敗作だ。
これだけを見て、誰のなんの曲を元にしたかわかる人はいないと思う。
断言する。
いたとしたら、サバチーくん検定10級を進呈する。 履歴書にも書いていい。
人事のおじさんが困惑するだろうが、俺は困らない。
レシピを見て「なんだこのまとまりのない材料は」と思った奴もいるだろう。
甘い。
やっぱり甘いわ。
新発売の「三ツ矢サイダートロピカルmix」くらい激甘い。
アサヒさん、俺はもう少し酸味が欲しい。
実際に飲んでみて感じるのは、まずトップノートのようなホワイトカカオと生クリームのまろやかな甘さと、高級スイーツのような香りだ。
つづいてミドルノート代わりに、マリブの南国らしいココナッツの香りが広がる。
そして油断したところに、ラストノートのバーボンの香ばしさと骨太なアルコールが殴りかかってくる。
最後に残る余韻は、ペルノの不思議なアニス香だ。
実はこのカクテルを支えているのは、ベースになるバーボンではない。
この「不思議なアニス香」だ。
元ネタについて語らせてもらう
ここでやっと、なんの楽曲を元にしたカクテルなのか明かすことにする。
Perfumeの『wonder2』だ。
わかってる。
言うな。
聞いてもなおピンと来ていないだろう。
当然だ。
この曲はテレビでの楽曲披露が1度もない。
しかも超初期である3rdシングル『エレクトロ・ワールド』や、Perfumeが有名になるきっかけとなった『パーフェクトスター・パーフェクトスタイル』が収録されている『Perfume〜Complete Best〜』くらいにしか入っていない。
それどころか、LIVEでも5年間隔でしかやらなかったりしていた。
「初期のくせになんでComplete Best出してんの?」と思うだろうが、それについては深いわけがあるし、俺は俺で語り出すと止まらなくなるので一旦置いておく。
今回はそこに脱線している余裕はない。
多分。
とにかく、俺はPerfumeのファンであり、wonder2のファンだ。
オリジナルカクテルの題材にするのは当然とも言える。
さて、この『wonder2』だが、タイトルにもwonderとある通り、不思議な2人の関係性を歌った曲だ。
だからこそ、あの不思議なアニス香が重要になってくるというわけだ。
ちなみに味の説明の時に「トップノート〜ラストノート」を使ったのは、香水(Perfume)に掛けてある。
お洒落なことするぢゃん……俺ちん……。
wonder2についてはYouTube動画を貼りたいところだが、公式のものがひとつもなかったので、Spotifyのリンクでも貼っておく。
まずはこの曲の音と歌詞を感じて欲しい。
聞いたか?
聞いたな?
聞いた前提で勝手に喋らせてもらうからな。
聞いていなくても喋る。
もう誰も俺を止められない。
この酒とこの曲の関係性と必然性
さて、ではなぜペルノなのか。
ここで歌詞を見てほしい。
キミだけはほかと何かが違う 不思議な存在なんだよ
「好き」じゃないんだよ。
「大切」でも「特別」でもなく、不思議。
この一言に、この曲のすべてが詰まっている。
甘さはある。
ホワイトカカオと生クリームのまろやかさ、それはハニカミ笑いや肩と肩が触れる体温だ。
マリブのどこか現実離れしたココナッツの香りは、「キミだけはほかと何かが違う」という感覚そのものだ。
バーボンが突然殴りかかってくるのは、
誰も言ってはくれない大切なことを話してくれるね
このフレーズだ。
油断したところに来る、あの重さ。
でも全部飲み終わったあとに口の中に残るのは、ペルノのアニス香だ。
甘くも辛くもない、なんとも言えないあの不思議な余韻。
それでいて、どこかふわっと浮遊感がある。
つつんで ゆらゆら wonder2
この骨格になるフレーズそのものを、ペルノが担っている。
「好きとか言葉はないけどつながりあえてる」
そういう関係って、地に足がついてるようでついていない。
宙ぶらりんのまま、でも心地いい。
そのままの感じが、このアニス香に出ている。
だからこのカクテルは、ペルノなしには成立しない。
ペルノを抜いたら、それはただの甘ったるいデザート酒だ。
そして、このカクテルの名前自身も、もちろん『wonder2』だ。
今日も喋りすぎた
と、ここまで熱く語ってしまった。
本当は最低でもあと5000字話せる。
話を引き伸ばすと言っているんじゃない。
最低でも5000字だと言っている。
読者の9割が「こいつペルノの回し者か」と思っている顔が目に浮かぶ。
アサヒ飲料に媚びを売っていたはずが、いつの間にかペルノ・リカール社に魂を売っていた。
節操という言葉を俺の辞書で引くと「該当する単語はありません」と出る。
企業に対する忠誠心の切り替えが軽すぎる。
ちなみに、ここまでドヤ顔で秘伝のレシピを披露しておいてなんだが、ひとつ重大な注意点がある。
このカクテル、家で作るにはハードルが高すぎる。
ホワイトカカオとマリブまでは百歩譲っていいとしよう。
問題はペルノだ。
誰が一般家庭の酒棚にアニス系リキュールを常備しているというのか。
太宰治か?
ヘミングウェイか?
アブサンの亡霊か?
文豪か亡霊しか思い浮かばない時点で、いかにこの酒がニッチかがわかるだろう。
さらに生クリームだ。
このカクテルのために1パック買ってきたら、確実に180ml余る。
残りの180mlをどうする。
カルボナーラでも作るのか?
お前らの今夜の晩飯まで指定する羽目になるとは思わなかった。
だが、もしバーに行く機会があったら、ダメ元でバーテンダーにこのレシピを見せてみてほしい。
きっと「……これ、生クリームとペルノ合わせるんすか」と嫌な顔をされたあと、一口飲んで「あ、なるほどね」と悔しそうな顔をしてくれるはずだ。
その悔しそうな顔を見るために作っているようなものだ。
聴く酒と、飲む音楽
酒をグラスに注ぎ、音楽を聴く。
それだけでも素敵な「飲み物のある時間」だ。
だが、俺たちがやっているのは、「音楽を飲む」という道楽だ。
ただ喉を潤すためだけなら、おいしい水でいい。
十六茶でいい。
でも、好きな曲のイントロを聴いた時のあの胸の浮遊感や、言葉にできない関係性の切なさを、アルコールの度数と香りに変換して胃袋に流し込む。
音楽を聴くだけじゃ物足りなくて、体内に取り込んで全身で味わおうとする。
それが俺にとっての「カクテルを作る」ということであり、「音楽を飲む」ということだ。
ほら見ろ。
ちゃんと「飲み物のある時間」というテーマに着地したぞ。
審査員の方、見てますか?
音楽を飲んでるんだから実質ノーカロリーだし、文化事業です!
おしっこの話をしたのは忘れてください!!!
喉が渇いたら、水を飲め。
心が乾いたら、酒を入れて『wonder2』を聴け。
それじゃ、俺は頑張って文字を書いて疲れたから、シャワーにでも行ってくる。
10分くらいな。
お前らも飲み物を飲めよ!!!

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