【企画参加|短編小説】相棒たちの夜さんぽ/アカリウムの夜
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
錆木蒼です。
本日は、私も参加させていただいている共同運営マガジン【アカリウム】の企画参加です🐟
夜の水族館ってだけでもう気分が高揚しますね…!
自分も一度行ってみたいものです、もちろんアカリウムも🐠
以下、企画参加作品です🪼
ここは不思議な水族館【アカリウム】。
昼の喧騒が嘘のように静まり返ったこの場所を、悠然と歩く影が二つ。
一つは、鮮やかなコバルトブルーの瞳と真っ白で優雅な毛並みが特徴のラグドール。暗闇の青い光の中で、純白の毛並みがまるで神秘的な生き物のように美しく映えている。時折ガラスを素早く横切る魚たちを目で追いながら、「せわしないね」などと言いたげに瞬きをしている。
もう一つは、雄大な身体と琥珀色の毛並みを持ったメインクーン。ラグドールの後ろで自慢の巨体を揺らしながら、気まぐれにしっぽをガラスにてしてしと打ち付けている。思い出したように立ち止まっては、ゆったりと泳ぐ大きな魚を見て、「僕とどちらが大きいかな?」などと首を傾げている。
「君はここにいて大丈夫なのかい?君の主人は、人がたくさん行き来する場所を嫌うだろう」
前を歩くラグドールに、メインクーンが声を掛ける。ラグドールはまるでモデルのように背筋を伸ばし、小さく鼻を鳴らした。
「私をここに出してくれているということは、問題ないってことだよ。けれど、帰った後には、いつもより長いブラッシングの『儀式』が待っているかもね」
「はは、大変だな。それはこちらも同じかもしれないね。どうも僕たちの主人は、毛並みが自分たちの基準で正常じゃないと少しも満足できないらしい」
メインクーンは言いながら、ラグドールの隣で水槽を眺める。
【グレートバリアリーフエリア】と看板が掲げられたその水槽は、他と比べても一層色鮮やかであった。カラフルな熱帯魚たちが泳ぎ回り、色とりどりの珊瑚が敷き詰められている。昼間はカラフルな水彩画のような光景であるが、今は仄青い照明でより幻想的な空間を演出していた。
「主人なら、きっとガラスの指紋や汚れが気になって、生き物に集中できないかもしれないね。いっそ拭き取ろうとするのかも。…でも、この青い光は、あの人の冷たい頭脳の色のようで、少し落ち着く」
「僕の主人は、『ただ魚を眺めているなんて、論理的メリットが見当たらない』なんて言いそうだ。でも、そう口にする人こそ、この空間で少し癒しが必要なんじゃないかな」
やや呆れたように言い、メインクーンはのんびりとあくびを洩らす。
しかし、ふと何か気付いたように目を真ん丸に見開いた。メインクーンの視線に気づいたラグドールも、その先を追っていった。
水槽の真ん中を、一匹のクラゲが泳いでいる。青く輝く身体をふよふよと弾ませ、スロースピードで流れるように泳いでいた。
しかも、それは少し進んで消えたかと思うと、また現れては同じように泳ぎ始める。そして、また消えては姿を見せ…その繰り返しであった。
「あれは何?クラゲの展示エリアは違う場所のはずだけれど」
「しかも何度も消えたり出てきたりしている…生き物じゃなさそうだね」
ラグドールはひょいとジャンプして、器用に手すりの上に乗る。首をぐっと限界まで伸ばし、クラゲの様子を青い瞳で見つめた。
「…なにか、細い糸のようなものがある。どこからか伸びているのかな」
「となると、水槽の正面が怪しいってことか。…本当だ、僕にも見える」
メインクーンも『細い糸のようなもの』に気付いたらしく、それが伸びている場所を特定しようと、目線で辿っていく。ラグドールも手すりから降りて、真似するように『糸』を追った。
二匹の視線が辿り着いたのは、水槽の正面に設置されているアクリルガラスの展示台だった。その上には【Welcome to AKARIUM】という歓迎を意味するパネルが飾られており、小さなブルーライトで照らし出されている。
その『糸』が出現しているのは、パネル上部の中央にある小さな穴であった。ラグドールは再び床を蹴り、展示台に飛び乗った。メインクーンは大きく身を乗り出し、そのパネルを覗き込んだ。
「この穴から、なにか光みたいなものが出ているね。これが何て言うのかはわからないけど、きっとこれが正体なんだろうな」
「この光が、クラゲを水槽に泳がせているってことか。粋な演出だね」
メインクーンはふん、と鼻息を吐き出し、満足げに姿勢を戻す。正体がわかったことでこちらも満たされたのか、ラグドールもひらりと床へ舞い降りた。
「それにしても、どうしてこの時間に出現させているのかな。昼間ならお客さんも多いのに」
「この時間に来てくれたお客さんへのお礼ってことなんじゃないか?昼でも夜でも、ここには来ていいんだよってことだろう」
「ふふ、なるほど。優しい水族館ってことだね」
二匹はもう一度クラゲを見上げた後、その水槽から離れて再び歩き出した。どこまでも広がる涼しげで不思議な空間を、慈しむかのように進んでいく。
最後に、もう一度だけ振り返った。
青いクラゲは相変わらずゆったりと泳いでいる。
「また来ようか」
そう呟くと、二匹は満足そうに目を細めた。
青いクラゲ――ホログラムが映し出した幻想的な『粋』は、二匹を見送るように、ゆらゆらと触手を揺らしていた。
終わり
元々水族館も大好きなので、書くのが楽しくて仕方なかったです。
時間が許せば、企画終了までに別作品も上げてみたいですね。
改めてあかりさん、素敵な企画をありがとうございます!!
是非皆様、参加してみてください✨
見るだけでも勿論楽しいですよ🐠
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