エイジス協会【第6章・完全版】封じられた記憶 ― ランサムウェアの亡霊
🎊【特別企画】2つの物語、1つの世界
この物語には、2つの視点があります。
📖【本編】エイジス協会:サイバーの成長物語(この記事)
新入社員・碧が"世界を守る盾"へと成長していく、 王道成長ファンタジー×実務学習の物語。
★今回、第6章を大幅リニューアル!
内面描写が3倍に
キャラクターの絆が深化
より感動的な成長物語へ
💼【スピンオフ】日常の盾 - Everyday Guardian
あなたと同じ実務担当者が、日常業務の中で出会う 現実的な課題を解決していく、実践的ケーススタディ。
📚 おすすめの読み方
タイプA:物語に没入したい方 → 本編第6章(この記事)からスタート → 碧の成長を楽しみながら学ぶ
タイプB:実務ですぐ使いたい方 → スピンオフ第1章からスタート → 具体的な解決策を今日から実践
タイプC:両方楽しみたい方 → 本編とスピンオフを交互に読む → 物語と実務の相乗効果を体感
どちらから読んでも大丈夫! あなたのペースで楽しんでください。
それでは、碧の第6章を始めましょう。
はじめに
これは、一人の新入社員が歩む「サイバーの成長物語」。
パソコン操作に少し自信がある程度だった彼女が、やがて数万人の社員と、世界を守る"盾"となっていく。
本作は、サイバーセキュリティをゲームのように楽しみながら学べる物語です。登場するモンスターはすべて、実際の脅威を象徴しています。
あなたも碧と一緒に、この世界を旅しながら"対策の意味"を体験してください。
⚠️ 重要な注意事項
この物語はフィクションです。登場するモンスターや対策は実際の脅威・技術をモチーフにした創作表現であり、実務での正確性を保証するものではありません。
実際のセキュリティ対策については、必ず公式ガイドラインや専門家にご相談ください。
💡 この章で身につく実務スキル
✅ ランサムウェアの基本挙動 暗号化・横展開・身代金要求の3段階攻撃を理解
✅ バックアップ戦略(3-2-1ルール) 3世代・2媒体・1つはオフライン/イミュータブルの設計
✅ 復旧優先度設計(RTO/RPO) どこまで戻す?を事前に決める重要性を体得
✅ インシデント初動対応 隔離→復旧→再発防止の順序を習得
(このスキルは、「防ぐ」だけでなく「取り戻す」ために不可欠です)
【 物 語 パ ー ト 】
プロローグ:黒い水晶

協会の朝は、いつもと変わらないはずだった。
碧は資料庫の扉を開け、薄暗い棚の列を眺めた。 古い羊皮紙から最新の魔導書まで、協会の記録がびっしりと並んでいる。
(昨日の「権限シャドウ」との戦いは、本当に怖かった)
仲間の顔をした敵。 信頼と検証のバランス。 ゼロトラストの思想。
あの経験が、まだ体の奥に残っている。
* * *
でも、今日は違う任務だ。
グレンから頼まれた過去の報告書を探すだけ。 単純な作業のはずだった。
碧は棚の間を歩きながら、背表紙を指でなぞった。
「第三期防衛報告……第四期防衛報告……あ、これかな」
手を伸ばした、その時。
指先に、冷たい感触が走った。
「え……?」
碧は手を引いた。
背表紙が、黒く変色している。 いや、変色ではない。
結晶化していた。
黒い水晶が、表紙を覆っている。
(なに、これ……)
碧は息を呑んだ。
隣の本にも、黒い結晶が広がっていく。 まるで感染するように、一冊、また一冊と。
「読めない……記録が、凍ってる……」
碧の声が震えた。
* * *
足音が響いた。
レオンが駆け寄ってくる。 その顔は、珍しく険しい。
「碧、触るな。それは――」
レオンが言い終わる前に、棚全体が黒い光を放った。
ガラスが砕けるような音。
碧は目を閉じ、腕で顔を覆った。
光が収まった時、目の前の光景に、碧は言葉を失った。
棚の三分の一が、黒い水晶に変わっていた。
「兆候はあった」
レオンの声が、低く響く。
「深夜の不審な認証。圧縮ファイルの突発的な増加。暗号化の走り出しだ」
碧は震える声で尋ねた。
「暗号化……? これが、ランサムウェア……?」
「ああ。最悪の形で、やってきた」
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第1節:記憶の凍結

ユナが資料庫に飛び込んできた。
「碧ちゃん! 大丈夫!?」
その声に、碧は我に返った。
「ユナさん……これ、何が起きて……」
「ランサム・リッチの襲撃だよ」
ユナの声が、いつもの明るさを失っている。
「データを人質に取って、身代金を要求する。最も卑劣な敵」
碧は棚を見つめた。
黒い結晶の中に、文字が見える。 でも、どれも読めない。 まるで未知の言語に書き換えられたように。
(暗号化されてる……中身が、全部……)
* * *
黒田が息を切らせて現れた。
「おい、聞いたぞ! ランサムウェアだって?」
黒田は黒い水晶を見て、肩をすくめた。
「まあ、大げさに騒ぐなよ。バックアップから戻せば終わりだろ?」
その軽い言葉に、碧は胸の奥で小さな不安を覚えた。
(戻せるなら、ね……)
レオンが首を横に振った。
「甘く見るな。ランサムウェアは、バックアップも狙う。横展開して、影本まで暗号化する変種も多い」
「影本……?」
「バックアップのことだ。現代のランサムウェアは、まず復旧手段を潰す。そして、追い詰めてから身代金を要求する」
黒田の顔から、余裕が消えた。
「そんな……それじゃ、どうすれば……」
* * *
神楽の声が、静かに響いた。
「碧、見て」
碧は振り返った。
神楽が指差す先、棚の影に何かがいた。
黒い霧が、人の形を取り始めている。
頭上には鉄の輪。 手には長い鎖。 鎖の先で、データが黒い水晶に変わっていく。
碧の喉が、乾いた。
「あれが……」
神楽が頷く。
「ランサム・リッチ。封呪の亡霊」
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第2節:ランサム・リッチの出現

リッチの姿が、完全に顕現した。
ローブのように黒い霧を纏い、骸骨のような顔には、赤い光が二つ灯っている。
その口が開いた。
「時間は金だ」
囁くような、しかし資料庫全体に響く声。
「取り戻したければ、支払え」
碧は身構えた。
手が震えている。 足が竦んでいる。
(怖い……でも、逃げられない)
「支払い……?」
「48時間。それ以内に門へ来い。さもなくば――」
リッチが鎖を振った。
鎖の先が棚を撫で、触れた本が次々と黒い水晶に変わる。
「すべてを永遠に封じる」
床に、赤いルーンが出現した。
"支払いは48時間以内" "交渉先:闇の門"
碧は唇を噛んだ。
(時間制限……焦らせてくる……!)
* * *
レオンが端末を操作しながら叫ぶ。
「現在の被害状況を確認中。資料庫の約40%が暗号化。そして――」
レオンの顔が、さらに険しくなった。
「横展開している。鎖が、ネットワーク経由で他のセクションにも伸びている」
「他にも!?」
「訓練記録庫、会計資料庫、人事記録庫……複数の系統に侵入している」
ユナが青ざめる。
「このままじゃ、協会全体が……」
リッチが笑った。
乾いた、嘲るような笑い。
「鎖は止まらない。一つを守れば、他が凍る。全てを守ろうとすれば、全てを失う」
碧は拳を握りしめた。
(選択を迫られている……何を優先するか、決めなきゃ……)
* * *
グレンの声が、背後から響いた。
「碧」
振り返ると、グレンが立っていた。
その顔は厳しいが、どこか落ち着いている。
「順番を間違えるな」
「順番……?」
「侵入を止める。重要系から復旧する。再発を防ぐ。この順序だ」
碧は深く頷いた。
「まず、止める……」
「そうだ。広がっている鎖を、まず断て」
グレンが碧の手に、何かを押し込んだ。
木製の楔。 青白い紋様が刻まれている。
「断絶の楔。ネットワークを分離する札だ」
碧は楔を握りしめた。
冷たい。でも、どこか心強い。
(これで、鎖を断てる……)
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第3節:広がる鎖

碧は資料庫の奥に向かって走った。
監査ランタンを灯す。 白い光が広がり、鎖の経路が可視化された。
「ここ……! 鎖の根元がある……!」
鎖は床下を這い、壁を伝い、複雑に分岐している。 まるで血管のように、協会全体に広がっていた。
(全部は追いきれない……でも、幹を見つければ……)
碧はランタンの光を集中させた。
鎖の流れを逆にたどる。 分岐点を一つ一つ確認し、本流を探す。
「あった……!」
棚の奥、古い石壁に亀裂が入っている。 そこから、太い鎖が伸びていた。
* * *
碧が断絶の楔を構えた、その時。
リッチの影が、目の前に現れた。
「無駄だ」
鎖が、碧に向かって伸びてくる。
「ぐっ……!」
碧は身をかわしたが、鎖の先が腕を掠めた。
冷たい。 氷よりも冷たい。
掠めた部分の服が、黒く変色し始める。
(触れただけで……暗号化が……!)
「碧ちゃん!」
ユナの声。
光の盾が展開され、次の鎖を弾いた。
「大丈夫!?」
「はい……でも、このままじゃ……」
鎖は一本ではない。
リッチが両手を広げると、数十本の鎖が一斉に動き出した。
「さあ、選べ」
リッチの声が響く。
「自分を守るか、記録を守るか。どちらかしか選べない」
碧は歯を食いしばった。
(両方……両方守りたい……!)
* * *

黒田が叫んだ。
「俺が引きつける! 碧、楔を打て!」
「黒田くん……!」
黒田が剣を抜き、鎖に向かって突進した。
剣が閃き、鎖を斬る。
だが、斬られた鎖は、すぐに再生した。
「くそっ……! 斬っても斬っても……!」
「無駄だと言っている」
リッチが嗤う。
「鎖は本体と繋がっている限り、何度でも蘇る」
黒田の動きが、鈍くなっていく。
息が上がり、剣を握る手が震えている。
「黒田くん、下がって!」
碧は監査ランタンを最大照度に上げた。
眩い光が資料庫を満たし、鎖の動きが一瞬止まる。
その隙に、碧は楔を握りしめて走った。
(今しかない……!)
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