いつの間にかドラゴンに追いかけられていた ~異世界転移して旅を始めることになりました~ 道編
〇まえがき
企画に参加させていただきます! ありがとうございました!
嬉しかったので重ねてになりますが&あとがきでも触れるのですが今回私のやってることを取り入れていただきました!ありがとうございました!
こちらの続きになります。
〇ジャンル 異世界転移
〇あらすじ
ふと、振り返るとそこには道しかなかった。
現代日本から突如異世界に転移し、窮地を救ってくれたエルトと共に冒険の旅をすることになったイセキ。町に向かって歩いている最中、後ろで何らかの気配を感じて振り返ったものの、ただそれまで歩いてきた平坦な道が広がっているだけだった。イセキのその動きに気が付いたエルトは何も感じていなかった。気のせいだ、ということにして、二人はすぐ近くにある、という町へと向かって歩き続ける。平坦な道を歩くことしばらく。町が見えて来て、イセキはワクワクとした高揚感に包まれた。しかし、次の瞬間……
〇本文(約4500文字)
ふと、振り返るとそこには道しかなかった。
自身の後ろにあったのは、先ほどまで歩いていた道だけであった。今見ている後ろの道も、先ほどまで見ていた、前の町に続く道も見通しのいい道。何の変哲もない、平坦な道であった。前も後ろも道。
周りは、木がいくつも生えてはいるものの、街路樹のように綺麗に整えられている。魔物が隠れていて、急に飛び出してきそうな物陰や生い茂った草、といったものもない。
道も、明るい日差しに照らされているからお化けや幽霊、ともまた無縁だろう。
「……?」
それでも、イセキは立ち止まり、しばらく後ろに視線を向けてしまっていたのであった。
「どうしたんだい?」
不思議な動きをしたイセキに対し、前を歩いていたエルトもイセキの方に視線を向けた。イセキは視線を前にいるエルトに合せる形で、やや戸惑いながらエルトの質問に答える。
「い、いや……、何かの気配がしたような……。何かが、動いたような……、そんな……」
「気配? ……、特に何も感じなかったけれど……」
エルトもきょろきょろと、前後左右を確認するように視線を動かしてはいる。けれども、特に何か不審な点を感じてはいないようだ。イセキももう一度視線を動かす。特に何かある、という感じでもない。
「すみません、やっぱり、気のせいかもしれません」
何か生き物が通りすぎた、とか、弱く風が吹いて何かが揺れた、とかそういう感じだったのかもしれない。
「けれども、何かに同化している敵もいるから、警戒するに越したことはないね。町は近いけれども、気を付けていこうか」
言いながらエルトは、持っていた荷物の中から杖を取り出した。「いつでも攻撃できるように魔法の準備をしておくよ」と口にする。
「は、はい。分かりました……」
エルトは歩き始める。イセキもそれに着いていくように歩き始めた。しかし、どこか落ち着かない雰囲気で、何度かきょろきょろと視線を動かしてしまっていたのであった。
やっぱり、気のせいか。
違和感はゼロ、ではないが、やはり何か起きそうな気配はない。イセキは何も見なかったこと、ならぬ、何も感じなかったことにして歩き始めた。それでもしばらくはついちらちらと後ろに視線を向けてしまっていたのであった。
振り返ってからすぐは違和感と警戒を抱えながら歩いていたイセキ。しかし、歩いているうちにだんだんとその感覚も薄れていってしまっていた。街路樹のように木に囲まれた、町へ続く平坦な道が続いている。おそらくエルトや自身のように旅をしている人間が歩くために整備されているのかもしれない。随分と拓けていた。何かがいる、という感覚もだんだんと薄れていってしまっていた。油断、まではいかないものの、「何も感じなかった」という感覚になってしまっていたのだった。
しばらく歩き続けていたエルトとイセキ。そんな中、イセキは再び立ち止まってしまった。
「わぁ……!」
今度は何かの気配、ではない。前方に、大きな塔のような何かが見えてきたのだ。距離があり、全貌ははっきりとは見えない。けれども、それこそ「異世界の建造物」と言い表せるような形状をしていたのだ。本当に異世界に来たのだ、という実感と、あの町に、そしてあの塔には一体何があるのだろうか、という、ワクワクとした感情がイセキの中に募っていく。
「あれが目的の町だよ。あの塔はあの町のシンボルなんだ」
「そうなんですね……!」
うわあ……!と再び、感じるままに、感嘆の声を口にしながらイセキはその塔を、町を眺めている。イセキの胸がどこか高鳴っていた。そんなイセキをエルトは柔らかな表情で眺めていた。
「あの町に行けば、ゆっくり食事が出来る場所もあるし宿屋もある。しばらくそこに滞在して、冒険の準備を整えよう」
「はい……!」
しばらく抱いていた違和感は、異世界の町に行く、という期待感とわくわくとした感情にすっかりかき消されてしまっていた。
そして二人、町に向かって軽やかな足取りで少し歩いた時だった。
「えっ……」
しゅん、と高速で、イセキの横を何かが通り過ぎていく。風が吹いてきた感覚ともまた違う。イセキの視線がその何か、を追いかけようとした時だった。
「うわぁああっ!?」
イセキの身体に抵抗感が走り、それが急激な浮遊感に変わっていく。
「イセキ!?」
焦ったようなエルトの声が随分と遠くから聞こえてきた。エルトの姿はひどく遠くなっている。
「え、エルトさんっ……!」
イセキの身体は拘束され、そのまま地上から遠く離れた高い空中で固定されてしまったのだ。地上から10メートルほどは離れてしまったかもしれない。とてつもない恐怖感がイセキに襲い掛かる。
エルトは自身に襲い掛かった存在を確認する。それは「道」であった。道と同じ色をしたけれども、道とは全く違うふにゃふにゃとした感触と共に、イセキの身体に巻きついていたのであった。戸惑うと同時に、自身が感じていたあの違和感が目の前に現われ、納得した感情を味わう。
けれども、イセキはどうすることも出来なかった。服はエルトのお下がりをもらったものの武器などは全く持っておらず、もちろん魔法も使うことが出来ない。
「イセキ! 絶対に動かないで!」
地上からエルトの声が聞こえてくる。そして、エルトは先ほど取り出した杖と共に何かを唱えていた。日本語でもないし、何か分からない響き。けれどもそう時間が経たないうちに、イセキの身体からその拘束があっという間に解けて、何事もなかったかのようにその「道」は消滅してしまった。
「っ……!」
そのままイセキの身体が落下していく。けれどもその落下の動きはひどく緩やかなもので、恐怖は感じなかった。同時に、なんとなく安心感のような、信頼感のようなものを感じ
ていたのである。
そしてそのまま、エルトが自身の身体を横抱きにする。どこか心配が混ざったような表情で自身を眺めていた。
「怪我はないかい」
「む、無傷です……! ありがとうございました……」
エルトのしっかりとした腕の感触が伝わる。とてつもない安心感をイセキは覚えていた。
イセキはエルトの手によって丁重に地面におろされた。地面にきちんと足が着いてる感覚にほっとすると同時に、この道も魔物の可能性を考えてしまい、爪先で軽く地面をこすってしまう。砂埃が舞っているからこの場は道のようだった。
「怖い想いをさせて申し訳がない……」
「い、いえ……その、い、一体さっきのは何だったんですか……」
エルトは本を取り出し、慣れたようにページを開く。モニターのようなものが表示されていた。
そこには先程の魔物の姿が映し出されている。透明なヘビのような印象を持つ魔物であった。そのヘビのような魔物が変化した姿の例がいくつか載せられていた。ドラゴンや見たことのない他の魔物に変身していた。
「変化を得意とする魔物の一種だと思うね……。戦闘力そのものは弱くて、基本は別な魔物に変化する、ということが多いけれども、まさか道に変化していたとは……」
想定外だ、という風にエルトは口にする。そしてその視線は尊敬と共にイセキの方へと向けられた。
「それにしても、よく気が付いたね」
「い、いえ……。なんとなく……」
「やはり君には不思議な力があるのかもしれないね」
「そ、そうでしょうか……」
首をかしげながらイセキは口にする。そういう能力、だとは思えなかった。何か根拠があって、と、いう感じでもなかった。
不思議な能力だったり第六感、のような能力だったらやっぱりもっとはっきりと感じていたと思う。
……、やっぱり「たまたま」な気がする。
そんなことを考えている中で、イセキの中にある想いが浮かんでいたのだ。
「……あ、あの……。エルトさん……」
「ん? どうしたんだい?」
「その、町に行けば、俺にも扱える武器とかって、ありますか?」
「武器? 武器ならば様々なものがあるけれど、どうして?」
「……その、自分の身は自分で守りたいな、って思いまして……。これ以上ご迷惑を掛けるのも、申し訳ないですし……。それに、俺も、やっぱり何かのお役に立ちたいな、って想いまして……」
やはりエルトに助けてもらってしまった。もし今何かが出てきたとしても自分には全く対処が出来ない。自分には魔法の力もスキルもない。間違いなく、足手まといになってしまっていると思う。それでも、やはり、何かの役に立ちたい、という気持ちはあったのだ。
「イセキ……」
少し驚いた声を出したものの、その表情に柔らかな笑みが浮かぶ。
「そんなことを言わないで欲しい。君は足手まとい、でも何でもないよ」
「え……?」
「こうして二人一緒にいると、一人以上に心強い」
「でも、俺は、何もできませんし……」
「とんでもないよ。先ほどのあの魔物に気が付いていたのは君だけだったからね。もしかしたら二人捕まっていて動けなくなる可能性やさらなる危険な目に遭う可能性だってあった」
イセキの心のなかにふわふわとした感覚が走っていた。まだまだ未知、知らない事ばかりで、特に何か特殊な能力がある、というわけでもないのに。こんな風に言ってくれる。嬉しかった。
「で、でも……、俺も自分の身はなんとか自分で守れるようにし、したいんです……! あ、その、お金はその、何かしら働きますので……!」
「それじゃあ、これはどうかな」
イセキの言葉をどこか遮るようにして、エルトは言いながら、がさがさと荷物の中を手で探り、何かを取り出し、イセキに手渡した。
「え……?」
エルトがイセキに手渡したのは短剣であった。銀色の刃に装飾として、宝石がいくつも付けられた、明らかに高級品だと分かるもの。イセキは視線を短剣とエルト、交互に向けた。こんな高級層なものを受け取っていいのだろうか。とてつもない戸惑いが走っていた。
「い、いいんでしょうかっ……!?」
「うん。君にもきっと扱えると思う。もし役に立てるんだったら使って欲しいんだ」
「あ、ありがとうございます、エルトさん……」
イセキはその短剣をぎゅう、と宝物のように握りしめる。なんだかどこか、新品のものよりも手に馴染む感覚がした。
「それに、そんなにかしこまらなくても大丈夫。名前も、呼び捨てで構わないよ」
「え……?」
「これから、きっと、長い時間を旅していくんだからね」
エルトは柔らかく微笑む。そういえば初対面だし、敬語を使っていた。確かに
「じゃ、じゃあ、エルト、で……」
「うん。改めてよろしく。イセキ」
「う、うん……!」
どこか距離の近い関係にイセキは不思議な感覚を覚えた。ここ最近は短い期間の仕事仲間という関係を築くことが主であったし、学生時代は親しい友人もいたものの、生活環境の変化、で疎遠になってしまうことが多かった。だから、誰かと新たにこうして近しい関係を築く、のは久しぶりで、嬉しさのような感覚を覚えてしまった。
そして二人、町までの残り少ない道を歩いていた。だんだんと、先ほど見えていた塔が近づいてきた。
「着いたね……!」
エルトがどこか達成感と安堵をこめながら口にする。町の入り口の看板が見える。シンボルのようにそびえ立つ塔。賑やかな人の声が聞こえてくる。その町の賑やかさに惹かれるようにして、エルトとイセキは町の中へと入っていった。
(続くかもしれない)
ご覧いただきありがとうございました! あとがきです!
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