日本成長戦略会議(議長は高市総理)労働市場改革分科会(会長は厚労大臣)
日本成長戦略会議(議長は高市早苗総理)労働市場改革分科会(分科会会長は厚生労働大臣)について時系列に整理します。なお岸田内閣では新しい資本主義実現会議の「三位一体労働市場改革分科会」ですが、高市内閣の日本成長戦略会議は「労働市場改革分科会」です。グーグル検索やAIも勘違いしてました。高市内閣では「三位一体」がついていません。
厚生労働大臣諮問機関の審議会委員が苦言
労働条件分科会とは
労働政策審議会は厚生労働大臣の諮問機関になり、その労働政策審議会の労働条件分科会は労働側(連合など)委員と使用側(経団連など)委員と有識者(労働法学者など)で構成され、現在は働き方改革関連法見直しや労働基準法改正を議論してます。その分科会の委員が厚生労働省に対して苦言を昨年(2026年)12月24日に述べています。
労働条件分科会委員の怒り(?)
まず高市早苗総理は政権発足早々の昨年(2025年)10月21日に高市首相は上野賢一郎厚生労働大臣に対し「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討」を指示したと報道されました。
また昨年12月23日には労働基準法改正の次期通常国会への提出を見送り、高市政権で新たに設けられた日本成長戦略会議で検討する旨の報道がされました。
この報道があった翌日(12月24日)に開催された労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会で労働側の冨髙委員(冨髙裕子・日本労働組合総連合会<連合>副事務局長)が「昨日(12月23日)より、労基法改正に関する次期通常国会への提出を見送るという報道が複数なされており、その中では、労働時間規制について、来年(2026年)の成長戦略や『骨太の方針』の策定に向けて日本成長戦略会議の中で検討を行うことも報道されております」「まさにこの(労働条件)分科会で今年(2025年)2月から1年近くかけて労使で丁寧な議論を積み重ねてきておりますが、にもかかわらず、こうした動きがあることに対して、労働側として懸念をしているところです」「改めて申し上げれば、この雇用・労働政策につきましては、職場実態を熟知した労使が知恵を出し合って論議・決定していくことが必要不可欠だと思っております」「加えて、労使に政府・公益を加えた三者が政策の決定プロセスに関与する三者構成原則はグローバルスタンダードであり、日本ではこれを具現化している場が労働政策審議会だと考えているところでございます」「報道の真偽というところは別としまして、もし日本成長戦略会議において、労働時間法制について検討されるとしても、本分科会での議論が尊重されることが非常に重要だと思っております」「この労働政策審議会が官邸における新設の会議の下請になるようなことがあってはならないと思いますし、また、この場での議論が骨抜きにされるということもあってはならないというふうに思っておりますので、その点につきましては、ここで意見を申し上げておきたいと思います」と苦言を述べています。
つまり労働政策審議会が日本成長戦略会議の「下請け」になるようになことはあってはならないと労働側委員は強い口調で発言しています。
また、使用側の鈴木委員(鈴木重也・日本経済団体連合会<経団連>労働法制本部長)も「冨髙委員から三者構成主義の重要性、御指摘ございました。私も全くそのとおりだと思います。雇用・労働政策というのは、現場を熟知している労使、学術的な知見をお持ちの公益の先生が議論を重ねる中で結論を出す。これはILO条約の考え方にも沿うものだと思っております」と苦言を述べています。
使用側委員が労働側委員に賛同して意見を述べることは異例のことです。
厚生労働大臣12月26日会見で記者質問に回答
その異例の労働条件分科会開催後の(2025年)12月26日に厚生労働大臣会見で、記者が「働き方改革について伺います。(2025年12月)24日の第2回 日本成長戦略会議では、働き方改革について厚生労働大臣を分科会長とする労働市場改革分科会で議論を進める方針が示されました。高市首相から指示のあった労働時間規制緩和については、当該分科会ではどのように議論を進めていくのでしょうか。また、労働市場改革分科会での議論や結論は、現在進行中の労働政策審議会労働条件分科会の議論にどのような影響を与えるとお考えでしょうか」と質問しています。
つまり記者が日本成長戦略会議の労働市場改革分科会での議論や結論が労働政策審議会の労働条件分科会の議論に「どのような影響を与える」のかと質問すると、上野厚生労働大臣は「先日(2025年12月)24日に開催された第2回 日本成長戦略会議において、今後、私を分科会長とする労働市場改革分科会が設けられました。ここにおいては、生産性の高い分野への円滑な労働移動や働き方改革を含めた労働市場改革について、議論を行うこととされています。今後行われるこの分科会での議論の状況も踏まえて、また、労働政策審議会において、公労使の委員の皆様にも具体的に議論いただきたいと考えています。令和8年(2026年)通常国会での法案提出は、現在のところ考えていませんが、今後、必要な中身について具体的に検討を進めていきたいと考えています」と答えています。
つまり生産性の高い分野への労働移動と働き方改革を労働市場改革分科会が議論し、労働条件分科会は労働市場改革分科会の議論を踏まえて議論するようにと回答しています。
また2026年の通常国会への労働基準法など改正案は現在(2026年12月26日)時点では考えていないが、その後の状況の変化によっては提出することもあり得ると推察できる上野大臣回答でした。
さらに記者が「先ほどの働き方改革についてですが、厚生労働省では、労働政策審議会において、日本成長戦略会議より以前から法改正について議論されているところではありますが、先ほど大臣がおっしゃった法案提出を具体的に考えていないということは、こちらの法改正の議論も含めて提出を考えていないということでよろしいでしょうか」と上野大臣の先の回答の内容を再度質問して確認しています。
すると上野大臣は「そもそも、(働き方改革関連法)施行後5年の見直しで、この審議会において検討を進めているところですが、(労働基準法)法案の改正を前提とした検討ではないと承知しています。また、法案を改正するにしても、いつの国会というように、あらかじめそれを前提にしたものでないと承知しているので、いずれにしても、その審議会における議論、そして今回設けられた分科会における議論を踏まえて、必要な改革等を進めていく必要があろうかと思っていますし、なおかつ、それが法律の改正事項かどうかというのは、また別の観点かと思っています」と答えています。
上野大臣は労働条件分科会の議論は「法案(労働基準法)の改正を前提とした検討ではない」としていますが、これは間違っていると思います。
労働基準関係法制研究会(厚生労働省)
厚生労働省(労働基準局)有識者会議「労働基準関係法制委員会」(第1回)が2024年1月23日に開催され、厚生労働省の鈴木労働基準局長は「労働基準法制全体の根本にわたるところから含めまして皆様方の忌憚のない御意見を賜りたい」と述べた後、労働条件政策課長は労働基準関係法制研究会の目的は(1)今後の労働基準関係法制について包括的かつ中長期的な検討を行う、(2)働き方改革関連法第12条(附則12条のこと?)に基づく労働基準法等の見直しについて具体的な検討を行うことを目的とすると明確に述べています。
労働条件政策課長は「働き方改革関連法(正式名称「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)第12条」と発言していますが、附則12条が働き方改革関連法施行後5年を経過した場合の見直し(検討規定)を定めた条文になります。
また労働基準関係法制研究会の開催要項に研究会の検討事項は(1)「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書を踏まえた、今後の労働基準関係法制の法的論点の整理 、(2)働き方改革関連法の施行状況を踏まえた、労働基準法等の検討、と記載されています。
そして昨年(2025年)1月8に厚生労働省は労働基準関係法制研究会の報告書を公表しています。
労働基準関係法制研究会の報告書を公表(厚生労働省)
この研究会メンバー(構成員)の一人で労働法学者の石崎由希子教授が日本成長戦略会議 労働市場改革分科会メンバー(構成員)に選ばれています。
労働政策審議会 労働条件分科会で労働基準法改正議論を開始
労働基準関係法制研究会の報告書が労働政策審議会の労働条件分科会に報告されたのが、昨年(2025年)1月28日で、その後、2月28日より議題を「労働基準関係法制について」として労働基準関係法制研究会の報告書に基づいて議論が丁寧な議論が重ねられてきました。
また労働条件分科会で働き方改革関連法(2019年4月より順次施行)の施行から5年が経過したことを受けた調査にも基づいた議論も行われてきました。
「働き方改革関連法施行後5年の総点検調査の結果」とは
2025年9月4日に開催された労働条件分科会の資料「働き方改革の総点検について」という資料に調査結果は令和7年(2025年)11月に出すとありますが、この働き方改革の総点検調査結果が日本成長戦略会議の労働市場改革分科会の開催目的の一つ「働き方改革関連法施行後5年の総点検調査の結果を公表(26年1月目途)」の施行後5年の総点検調査結果にあたると思います。
なお水島郁子・大阪大学大学院高等司法研究科教授は労働法学者、労働政策審議会の労働条件分科会委員(分科会長代理)は、日本成長戦略会議の労働市場改革分科会委員メンバー(構成員)に選ばれています。
2025年9月4日の労働条件分科会資料「働き方改革の『総点検』について」(PDF)
裁量労働制の対象拡大に労使委員が激論
そして労働条件分科会が労働側と使用側の委員が「苦言」を述べた12月24日の裁量労働制の対象拡大について議論されましたが、その分科会の資料『労働法制の具体的課題に関する検討の論点ついて』に「裁量労働制は、働き手一人一人の能力発揮を促すため、労使の十分な協議や健康確保等を前提に見直しを行うべきとの意見がある一方、⾧時間労働を助⾧しかねず、2024年に見直しを行ったばかりであり緩和すべきでないとの意見もあるが、どのように考えるか」と記載されています。
つまり使用側委員は裁量労働制の対象拡大を行うべきとの意見ですが、労働側委員は裁量労働制は長時間労働を助長するし2024年に見直したばかりであり緩和すべきではないと反対しているということです。
労働条件分科会の労働側や使用側などの(12月開催分科会以前の)委員の意見内容については、資料『各側委員の主な意見の整理』に記載されています。
まず労働者側委員の意見として「 裁量労働制は長時間労働を助長しかねないため、その適用範囲の拡大 や要件緩和を安易に行うべきではな い」「 業務従事年数が少ない、裁量や適切な処遇が確保されていないデータが見られた。2024年度に見直しの内容が施行されたばかりであり、健康・福祉確保措置の強化、本人同意 や同意撤回の手続等の適正運用の徹底を着実に進めていくことが重要。 労働者の健康確保や豊かな生活の実 現に繋がる議論に注力すべき」「国際競争力の向上は、産業政策等で対応すべきものであり、労働法制の緩和で実現すべきものではない。 裁量労働制が本来の趣旨に沿った運用が徹底されることが重要であり、 要件の緩和は行うべきではない」などと資料には記載されています。
また使用者側委員の意見として「裁量労働制は、特別な健康確保措置が設けられているほか、制度の濫用にならないような制度設計がされている」「現在の裁量労働制は対象業務が厳格に規定されているため、企業で適用可否を判断することが難しく、また、手続も煩雑である。適用労働者の満足度や健康状態の認識の調査結 果も勘案しつつ、裁量労働制の見直しについて必要な議論を進めるべ き」「国際競争力の向上や付加価値の創出の観点からも、働き手一人一人の能力発揮を促すことが我が国の課題であり、裁量労働制の拡充が必要。 労使の対等かつ十分な協議や適切な健康確保措置、適正な報酬を条件と し、過半数労働組合との合意のもとで裁量労働制を適用するにふさわし い対象業務(例:プロジェクト型業務や他社の事業に関する企画、立案、調査及び分析の業務)の範囲を決められるような仕組みの導入の検討を行うべき」などと資料には書かれています。
そして公益(学者など有識者)委員の意見として「裁量労働制調査のデータを利用した厳密な解析からは、裁量労働制の適用の有無だけでなく、現場レベルでの裁量の有無が労働時間や睡眠、満足度等を強く左右することが明ら かとなっている。今後の検討に当たっては、裁量労働制の適用有無のみを議論するのではなく、裁量の度合いが現場レベルでいかに担保されるかという点に着目して議論すべき」と資料に記載されています。
資料「各側委員の主な意見の整理」(PDF)
また労働条件分科会議事録を読むと、労働側の冨髙委員(冨髙裕子・日本労働組合総連合会<連合>副事務局長)は「特に使用者側からは、労働生産性向上といった観点で裁量労働制の拡充が必要という意見が多く出ていたかと思いますけれども、そのエビデンスがあまり明確ではないと印象を受けております」「我々としても分析が圧倒的に足りないのではないかと思っておりますし、そういった中で(裁量労働)制度の拡充という流れに持っていくのは、かなり乱暴ではないかと感じておりますので、意見として申し上げておきたいと思います」と述べて裁量労働制の対象拡大に反対しています。
第206回 労働政策審議会 労働条件分科会 議事録(厚生労働省)
つまり労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会の労働基準法などの見直し議論を無視するかのように労働基準法改正を見送り、日本成長戦略会議で検討するという報道を受けて労働条件分科会の労働側の連合委員だけではなく使用側の経団連委員も苦言を述べています。ですが、裁量労働制の対象拡大については労働側と使用側が激しく対立しています。
裁量労働制拡大を日本成長戦略会議で議論
まず今年(2026年)1月20日に日本経済新聞は「経団連の筒井義信会長と上野賢一郎厚生労働相は(2026年1月)19日、都内で会談した。経団連の呼びかけで実現したもので、会談は約19年ぶり。高市早苗政権が検討する労働時間規制の緩和などを巡って意見を交わした。筒井氏は『裁量労働制の拡充が欠かせない』として対象業務の拡大を求めた」(『経団連会長、厚労相と19年ぶり会談』2026年1月20日配信)と報じています。
そして今年1月23日に行われた上野厚生労働大臣の会見で、記者が「先日の経団連との懇談会について伺います。懇談会において要望のあった裁量労働制の拡充については、どのような対応が必要とお考えでしょうか。また、懇談会の受け止めもお願いします」と質問しています。
この記者質問に対して上野大臣は「先般の経団連との懇談会においても、裁量労働制について、先方から、適用拡大についての企業側のニーズといったものについてのお話がありました」「また、その中で、やはり労働者の健康確保ということを大前提に考えているといったコメントもあったと承知しています」「やはり裁量労働制については、一方で審議会等においても長時間労働を助長しかねないといった声もあるので、今後検討するに当たっては、濫用防止措置や代替措置も含めて議論していく必要があるのではないかと考えています」と答えています。
そして上野大臣は「いずれにしても、労働時間規制については、日本成長戦略会議の下に設けられた労働市場改革分科会で議論を進めることになるので、そうした状況も踏まえて、労働政策審議会においても、具体的な議論をしていきたい」と答えています。
つまり裁量労働制の対象拡大については労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会で議論してきたにもかかわらず日本成長戦略会議(議長は高市早苗総理)労働市場改革分科会(分会長は厚生労働大臣)で裁量労働制や労働時間上限規制に関する議論をするという厚生労働大臣の発言には驚きました。
日本成長戦略会議とは
日本成長戦略会議の目的
内閣官房ホームページによると「リスクや社会課題に対し、先手を打った官民連携の戦略的投資を促進し、世界共通の課題解決に資する製品、サービス及びインフラを提供することにより、更なる我が国経済の成長を実現するため、内閣に、日本成長戦略本部を設置」し、さらに「我が国経済の成長を実現するため、その具体化に向けて、日本成長戦略本部の下、日本成長戦略会議を開催」するとのことです。
つまり、日本(にっぽん)成長戦略会議とは、高市早苗内閣のもとに日本成長戦略本部が設置され、その日本成長戦略本部に日本成長戦略会議が置かれ、国の経済成長実現の具体化のために新設された会議になりますが、議長は高市早苗内閣総理大臣になります。
日本成長戦略会議メンバー
閣僚メンバー(構成員)
高市早苗・内閣総理大臣(議長)
木原 稔・内閣官房長官(副議長)
城内 実・日本成長戦略担当大臣(副議長)
小野田紀美・内閣府特命担当大臣(経済安全保障)
片山さつき・財務大臣
上野賢一郎・厚生労働大臣
赤澤亮正・経済産業大臣
小泉進次郎・防衛大臣
*その他に議案に応じた国務大臣
有識者メンバー(構成員)
会田卓司・クレディ・アグリコル証券会社東京支店チーフエコノミスト
伊藤麻美・日本電鍍工業株式会社代表取締役
遠藤典子・早稲田大学研究院教授
片岡剛士・PwCコンサルティング合同会社上席執行役員・チーフエコノミスト
小林 健・日本商工会議所会頭
鈴木一人・東京大学公共政策大学院教授
竹内純子・国際環境経済研究所理事・主席研究員
筒井義信・日本経済団体連合会(経団連)会長
橋本英二・ 日本製鉄株式会社代表取締役会長兼CEO
平野未来・株式会社シナモン代表取締役社長CEO
松尾 豊・東京大学大学院工学系研究科教授
芳野友子・日本労働組合総連合会(連合)会長
第1回と第2回の日本成長戦略会議で筒井義信・日本経済団体連合会(経団連)会長が裁量労働制の拡充(対象拡大)を提言しています。また第2回の日本成長戦略会議で人手不足業種の労働時間(上限)規制緩和を提言しています。

労働市場改革分科会とは
まず日本成長戦略会議の労働市場改革分科会のメンバー(構成員)は次のとおりです。
労働市場改革分科会メンバー(構成員)
上野賢一郎・厚生労働大臣(分科会会長)
*分科会会長代理は厚生労働副大臣、政務官
石崎由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授
伊藤 仁・日本商工会議所専務理事
片岡剛士・PwCコンサルティング上席執行役員・チーフエコノミスト
近藤絢子・東京大学社会科学研究所教授
坂本貴志(株)インディードリクルートパートナーズ・リクルートワークス研究所研究員
神保政史・日本労働組合総連合会(連合)事務局長
中根弓佳・サイボウズ(株)執行役員・人事本部長
水島郁子・大阪大学大学院高等司法研究科教授
室賀貴穂・九州大学大学院経済学研究院准教授
藤原清明・日本経済団体連合会専務理事
山田 久・法政大学教授
石崎由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授は労働法学者、厚生労働省の有識者会議「労働基準関係労働法制研究会」メンバー(構成員)でもあった方です。近藤絢子・東京大学社会科学研究所教授は経済学者(労働経済学)の方です。
水島郁子・大阪大学大学院高等司法研究科教授は労働法学者、労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会委員(分科会長代理)の方です。室賀貴穂・九州大学大学院経済学研究院准教授は経済学者(公共経済学・労働経済学)。山田久・法政大学教授は経済学者の方。
なお昨年(2025年)12月24日に開催されました労働条件分科会には水島郁子委員(分科会長代理)は欠席されていました。
労働市場改革分科会の目的
資料「分野横断的課題への対応の方向性」には次のように記載されています。
・働き方改革関連法施行後5年の総点検調査の結果を公表(26年1月目途)
・柔軟な労働時間制度を含む現行制度の周知、中小企業の36協定締結及びその活用に向けた支援の検討(~26年夏)
・良好な労働環境の整備、働く者の意欲・能力の発揮の観点から、心身の健康維持と従業者の選択を前提に、労働時間法制に係る政策対応の在り方等について、多角的に検討(26年夏に進捗を整理)
・女性活躍を加速化する企業向けアウトリーチ・伴走型支援の在り方の検討(26年度~)
・女性の健康課題に取り組む企業を評価する仕組み、女性の就業環境の改善に資するハラスメント対策の在り方の検討(~26年夏)
・第3号被保険者の実情に関する調査研究・在り方の検討(継続)」「70歳までの就業確保や処遇改善に向けた『65歳超雇用推進助成金』の拡充(26年度~)
・年齢にかかわらず健康状態に合わせ活躍できる機会を創出するシルバー人材センター等の取組の推進(継続)

5.労働市場改革 (2)労働参加の確保
・働き方改革関連法施行後5年の総点検調査の結果を公表(26年1月目途)。
労働市場改革分科会目的で最も急ぐ課題は働き方改革関連法施行後5年の総点検調査の結果を公表(26年1月目途)になりますが、これが最も急がないといけない最も大きな問題になります。
労働時間規制上限規制を設けてた働き方改革関連法は安倍内閣のもと2018年に成立し2019に施行していますので「施行後5年」は何年ですか?今はもう2026年です。
だから2024年は厚生労働省労働基準局の有識者会議「労働基準関係法制研究会」で議論して報告書をとりまとめ、その報告書に基づいて2025年には労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会で話し合ってきたにもかかわらず、高市政権になったら急に日本成長戦略会議の労働市場改革分科会で別のメンバーが集まって議論するとなったら、当然、労働条件分科会の労働側委員や使用側委員は抗議するはずですから、日本成長戦略会議の労働市場改革分科会のメンバーは一日でも早く分科会を開催しないといけないはずです。
なお、働き方改革関連法(正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)附則第12条第1項及び第3項において、働き方改革関連法による改正後の労働基準法等について、その施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるとされています。
また昨年(2025年)9月4日に開催された労働条件分科会の資料「働き方改革の総点検について」という資料に調査結果は令和7年(2025年)11月に出すとあります。
この働き方改革の総点検調査結果が日本成長戦略会議の労働市場改革分科会の開催目的の一つ「働き方改革関連法施行後5年の総点検調査の結果を公表(26年1月目途)」の施行後5年の総点検調査結果にあたると思います。
2025年9月4日の労働条件分科会資料「働き方改革の『総点検』について」(PDF)
働き方改革の「総点検」調査
石破政権が2025年6月13日に閣議決定
2025年9月4日の労働政策審議会 労働条件分科会 資料によると、石破政権の『経済財政運営と改革の基本方針2025』(2025年6月13日閣議決定)に「働き方改革関連法施行後5年の総点検を行い、働き方の実態及びニーズを踏まえた労働基準法制の見直しに ついて、検討を行う」と記載されています。
また石破政権の『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版』(2025年6月13日閣議決定)には「誰もが健康で、意欲と能力を発揮して働きやすい労働環境の下で生産性の高い多様で柔軟な働き方を推進す るとともに、働き方改革関連法施行後5年の総点検を行い、働き方の実態とニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて労働政策審議会で検討する」と書かれています。
働き方改革の「総点検」調査内容
2025年9月4日の労働政策審議会 労働条件分科会 資料によると、働き方改革の「総点検」調査は2025年7年9月を目途に、次の(1)(2)の調査を実施し、「結果は11月目途に公表予定」ということでした。
(1)アンケート調査
労働者の労働時間に関するニーズを把握。労働時間を<減らしたい・現状のままでいい・増やしたい>労働者の割合、今どれくらい働いているか、希望する労働時間数<減らしたい・現状のままでいい・増やしたい(上限規制の手前でもう少し働きたい・上限規制を超えて働きたい)>など。
対象者:モニター調査会社に登録している労働者
調査項目 :所定労働時間、総労働時間、希望する労働時間数とその理由 等
(2)ヒアリング調査
上限規制への対応状況、課題認識などについて「生の声」を把握。
対象者:企業及び労働者に対し、労働局により実施
調査項目
企業ヒアリング:上限規制への対応状況、上限規制の施行による課題認識、その他労働時間制度に関する要望 等
労働者ヒアリング:時間外労働の実態、上限規制についての認識、収入や働き方に対する希望、労働時間規制に関する課題認識 等
衆議院選挙・労働政策アンケート
本日(2026年1月27日)に公示された衆議院選挙に際して日本労働弁護団が労働政策アンケートを実施してています。この労働政策アンケートに自民、中道、維新、国民民主など7政党が回答しています。
労働政策アンケートの問3(Q3)は「裁量労働制の適用対象拡大の賛否」ですが、まず自由民主党は「スタートアップの更なる成長促進に向けて、スタートアップ関係団体等の意見や課題、スタートアッ プで働く労働者の就労実態、業務内容、労働者が希望する働き方等を踏まえて検討していく必要がある と考えています」と回答しています。
また新党の中道改革連合は「本人の希望に応じて多様で柔軟な働き方を選べるようにすることは思要である一方、裁量労働制については長時間労働の温床となっていることから、裁量労働制の適用拡大については慎重に検討すべきです」と回答しています。
そして国民民主党は「健康にも影響を及ぼすような長時間労働の温床となっている『裁量労働制』の厳格化、勤務から翌日の勤務まで一定の間隔を空ける『インターバル規制』の義務付け、労働時間管理の徹底、違法残業等法令違反に対する罰則の強化等、未だ解消されない多くの業種深刻な人材不足を解消するためにも実効性のある規制を設けます」とあります。
国民民主党は裁量労働制の厳格化やインターバル規制の厳格化などと回答して裁量労働時間制の対象拡大の賛否に答えていませんが、個人的には「実効性のある規制を設けます」という箇所には抽象的で理解できない部分もありますが、国民民主党のアンケート回答と同様の意見をもっています。ただし国民民主党を支持しているという意味ではありません。
追記:第1回 日本成長戦略会議 労働市場改革分科会
裁量労働制などを議論する第1回 日本成長戦略会議(議長は高市総理)労働市場改革分科会(会長は上野厚生労働大臣)が(2026年)3月11日、厚生労働省省議室で開催されます。
議題(予定)は(1)労働市場改革分科会の取扱い等について、(2)労働市場をめぐる現状と課題等について。
労働市場改革分科会のスケジュール
資料『労働市場改革分科会の今後の進め方について』によると、第1回は労働市場をめぐる現状と課題等について、第2回からは各論について議論、労働生産性の向上に向けた取組について、労働移動の円滑化に向けた取組について、労働参加の確保に向けた取組について等。
最終回(5月ころ)は労働市場改革分科会の取りまとめ、成長戦略の取りまとめは夏ころ。
労働市場改革分科会の課題
資料『労働市場をめぐる現状と課題等について』によると、まず現状は「我が国は、生産年齢人口が減少傾向にあるなど人手不足など労働力供給制約下にある」とのこと。
また課題は「働く一 人ひとりを大切にしながら、労働政策では、『労働生産性の向上』、『成長分野や社会を支えるエッセン シャルワーカー等の分野への労働移動の促進』、『柔軟で多様な働き方による労働参加の促進』の3つの柱に強力に取り組み、今の暮らしや未来への不安を希望に変える『強い経済』を実現していくことが重要」とのこと。
また3つの柱を実現するためには「企業において労働者の働く意欲や能力を引き出すような人材マネジメントを高めることが重要とのこと。
議論の論点(案)のうち労働参加の項目には「労働者の健康確保も図りつつ、 労働時間制度については、柔軟で多様な働き方の実現に向け、運用・制度の両面からどのような対応が考えられるか」と資料『労働市場をめぐる現状と課題等について』に記載されています。
なお、資料『労働市場をめぐる現状と課題等について』には働き方改革の総点検(働き方改革関連法施行後5年の総点検)調査結果がつけられていました。
そして連合事務局長の神保政史メンバー(構成員)の提出資料(第1回 日本成長戦略会議 労働市場改革分科会 議論の論点案に対する意見書)には「労働時間法制を含む『働き方改革関連法』に係る論点については、 約1年にわたり労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)において公労使で議論を積み上げてきたところであり、労働市場改革分科会においても、労政審の議論を踏まえた検討がなされるこ とが必要である」と記載されています。
また「柔軟で多様な働き方については、現行制度を適切に活用すれば今でも実現可能である。労使間に厳然たる交渉力格差があることを踏まえれば、働き方や業種・職種等の違い、働く者の同意などを理由に規制緩和は行うべきではない」と書かれています。
さらに「裁量労働制は、厚生労働省の調査でも、適用労働者の方が長時間労働者の割合が高く、裁量や適切な処遇が必ずしも確保されていない実態があるため、制度の拡充ではなく、2024年改正を踏まえた厳格な導入手続や定期的なモニタリングなどの適正運用の徹底を進めるべきである」と提出書類(意見書)に記載されています。
神保メンバー提出資料(議論の論点案に対する意見書)(PDF)
なお、3月5日に働き方改革関連法施行後5年の総点検調査結果を厚生労働省が公表しました。
そして厚生労働省のサイトには「厚生労働省では、今回の調査(働き方改革関連法施行後5年の総点検)結果を踏まえつつ、(日本成長戦略会議)労働市場改革分科会や労働政策審議会(労働条件分科会)において、労働基準関係法制について議論していきます」と記載されています。
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