〇〇〇〇〇の裁量労働制「不適切運用」をめぐり厚労省審議会分科会で議論
昨日(2026年7月14日)20時15分に昨日開催された労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会での議論に関連し、東京新聞がウェブ記事『裁量労働制で連合「労働時間の適正把握、義務化を」 政府がモデル扱いする(略)で「不適切運用」』を配信。
(略)の裁量労働制をめぐり議論に
東京新聞は昨日(2026年7月14日)20時15分に昨日開催された労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会に関するウェブ記事『裁量労働制で連合「労働時間の適正把握、義務化を」 政府がモデル扱いする(略)で「不適切運用」』を配信しています。
東京新聞のウェブ記事には「厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会(労政審)の労働条件分科会が(7月)14日開かれた。政府が裁量労働制の『代表例』と位置づけてきた(略)で、実労働時間を過少に申告するなど不適切な運用があったとの東京新聞の報道を受け、連合の菅村裕子委員は『労働時間の適正把握を義務化する必要性が高いと、報道も含めて認識した』と指摘した」と記載されています。
まず記事には「政府が裁量労働制の『代表例』と位置づけてきた日立製作所」とありますが、東京新聞はウェブ記事『政府が称賛「(略)の裁量労働制」のガッカリな実態 労働時間を過少申告させる会社の圧力、記録ごまかす裏技も』を先月(2026年6月)21日 にも配信しています。
6月21日に配信したウェブ記事には「政府は長時間労働の懸念がある『裁量労働制』の拡大に向け、制度導入の成功例として(略)を挙げている。しかし、同社の現役社員からは、長時間労働につながる労務管理の在り方に疑問の声も。制度運用に抜け穴が生じている実態が浮かんだ」と書かれています。
(略)「(手当分の)残業時間内に仕事が終わった月はない」。同社の30代エンジニアの男性社員は(略)が導入している裁量労働制に疑問を呈す。一方で、政府の規制改革推進会議ワーキング・グループ(WG)で、同社は「(同制度の)導入企業の代表例」(内閣府担当者)として挙がり、生産性向上など利点を強調。厚生労働相の諮問機関「労働政策審議会」の分科会にも使用者代表として名を連ね、同制度の拡大議論を左右する存在だ。
WGの資料によると、日立の労働時間管理は、パソコンの起動時間から算出される履歴を基にした自己申告制。残業が月80時間を超えると、長時間労働防止の観点から制度適用が一定期間除外される一方で、「幹部に報告され大問題になる」と男性社員。プロジェクトが重なり月100時間の残業をしても、「80時間を超えて(勤怠記録を)つけることはない」と明かす。(略)
(株)ワーク・ライフバランスは今年(2026年)6月21日にX(旧ツイッター)に「小室淑恵です。私が見てきた課題ある企業の例は、ほぼこの記事にあるのと同じ状況です」「裁量労働制の人が職場にいると、いけてない管理職ほど、そこにすべての仕事のしわ寄せを持ってきてしまう。能力が高く、裁量を与えられて働くべき有能な人材が、仕事の掃きだめになってしまう構造です」「政府がやろうとしている裁量労働制の拡大は果たして有効でしょうか」と投稿。
小室淑恵です。私が見てきた課題ある企業の例は、ほぼこの記事にあるのと同じ状況です。
— (株)ワーク・ライフバランス (@worklifeb) June 21, 2026
裁量労働制の人が職場にいると、いけてない管理職ほど、そこにすべての仕事のしわ寄せを持ってきてしまう。能力が高く、裁量を与えられて働くべき有能な人材が、仕事の掃きだめになってしまう構造です。…
規制改革推進会議WGで(略)が要望
今年(2026年)6月21日に東京新聞が配信したウェブ記事に「政府の規制改革推進会議ワーキング・グループ(WG)」と書かれていますが、正確には規制改革推進会議「働き方・人への投資ワーキング・グループ」のことになります。
規制改革推進会議(第8回)働き方・人への投資ワーキング・グループが今年(2026年)4月14日にオンラインで開催されましたが、議題は「労働時間法制に係る政策対応の在り方について」。
この第8回ワーキング・グループに(略)は資料『(略)の裁量労働制について』を提出していますが、そこには(略)が裁量労働制を導入した効果として「時間、場所にとらわれない柔軟な働き方の実現」「業務に裁量権を与えることによる生産性、モチベーション向上」「ジョブ型人財マネジメントとの親和性」を挙げています。
そして(略)の裁量労働制の要望として「現状、非対象業務が短時間であっても予定されている場合は、企画業務型の対象外となってしまうが、実態とし ては非対象業務を一部行っている場合であっても、 業務遂行の手段や時間配分等の裁量を委ね、企画・立案・調査・分析業務を主たる業務として行うことは可能であり、一部非対象業務を含むようなケースについても 企画業務型裁量労働制の適用を認めて頂きたい」と書かれています。
(略)の要望が裁量労働制対象拡大の根拠に
高市早苗内閣が(一部報道によると)7月21日にも閣議決定するであろう『規制改革実施計画』(案)には「我が国の企業においては、企画業務型裁量労働制の対象業務に従事する労働者に全社横断的なプロジ ェクト型業務への参加や安全衛生委員会への出席といった非対象業務も担当させる場合があることから、対象業務と非対象業務の混在が認められていない企画業務型裁量労働制を適用することが困難であること」と書かれていますが、これは(略)が規制改革推進会議WGに提出した資料に記載された内容を根拠にしています。
労働基準法(昭和22年法律第49号)第38条の3に定める専門業務型裁量労働制及び同法第38条の4に定める企画業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分等を大幅に労働者に委ねる業務に従事する労働者を対象とする制度であり、適正な運用が行われれば、労使双方にとってメリ ットのある働き方の実現が見込まれるものの、厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、専門業務型裁量労働制の適用労働者割合は期間を定めずに雇われている労働者全体の約1.1%、企画業務型裁量労働制の適用労働者割合は期間を定めずに雇われている労働者全体の約0.3%となっている。
これに対して、一部の企業や民間経済団体からは、以下に掲げる課題等への対応が必要であるとの声がある。
・裁量労働制は、令和7年に実施された日本経済団体連合会の「ホワイトカラー労働者 の裁量労働制適用ニーズ等に関する調査結果」によると、メリハリを付けて自分の ペースで働ける、就労時間が短くても一定額の裁量労働手当等を受け取ることがで きる、成果に応じた処遇が受けられる可能性があるといった理由により、裁量労働制 を適用されていないホワイトカラー労働者のうち約3割が同制度の適用を希望しているとされている一方、「現行の裁量労働制の対象業務に関する解釈について」 (令和5年8月2日厚生労働省労働基準局労働条件政策課長及び監督課長連名通達)においては、対象労働者は、対象業務に常態として従事していることが原則であり、企画、立案、調査及び分析の業務とは別に、たとえ非対象業務が短時間であっても、それが予定されている場合は、企画業務型裁量労働制を適用することはできないこととされており、我が国の企業においては、企画業務型裁量労働制の対象業務に従事する労働者に全社横断的なプロジ ェクト型業務への参加や安全衛生委員会への出席といった非対象業務も担当させる場合があることから、対象業務と非対象業務の混在が認められていない企画業務型裁量労働制を適用することが困難であること。
・規制改革推進に関する答申(令和7年5月)にも示されたとおり、スタートアップにおいては一人の労働者が複数の業務を担当することが一般的であることから、対象業務と非対象業務の混在が認められていない裁量労働制を適用することが困難 であるほか、企画業務型裁量労働制を導入 する際に必要な労使委員会の設置等が手 続負担等の面からスタートアップにおけ る制度導入の障壁になっていること。
・特定の顧客向けの商品・サービスの企画、 立案、調査及び分析を行った上で、それに基づき開発・提案まで行う業務に対しても 裁量労働制を適用するニーズがあるが、現行制度では適用が困難であること。
・グループ会社等で重複する人事・財務・経営企画などの間接業務を別会社に集約・標準化し、効率化を目指す、いわゆる「シェ アードサービス業務」がグループ化を進める企業を中心に活用される中、「シェアードサービス業務」の中でも企画、立案、調査及び分析を行う業務に対しても裁量労 働制を適用するニーズがあるが、現行制度では適用が困難であること。 一方、令和元年に実施された厚生労働省の「裁量労働制実態調査」においては、①労働基準法第38条の3第1項第2号に規定する 労働時間として算定される時間及び同法第 38条の4第1項第3号に規定する労働時間として算定される時間(以下「みなし労働時間」という。)と実際の労働時間の間に、専門業務型裁量労働制の適用労働者では平均して46分、企画業務型裁量労働制の適用労働者では平均して1時間8分の差がそれぞれ見られること、②専門業務型裁量労働制及び 企画業務型裁量労働制の適用労働者のそれぞれ約2割が裁量労働制の適用に対する満足度について「不満である」又は「やや不満である」と回答していること、③適用労働者の苦情の内容として「業務量が過大である」「労働時間が長い」「賃金などの処遇が悪い」「人事評価が不適切である」などの点が挙げられていることなどを踏まえ、制度の趣旨に沿っていない運用への懸念については、労働者の健康確保や長時間労働防止、適切な処遇確保等の観点から、制度の濫用防止措置について検討する必要がある。
特に、みなし労働時間については、企画業務型裁量労働制指針等において、対象業務の内容並びに対象労働者に適用される賃金・評価制度を考慮して 適切な水準のものとなるようにし、対象労働者の相応の処遇を確保することが必要とされていることを踏まえ、適切に設定されているかなど、実態を明らかにし、制度の趣旨に沿っていない運用の懸念がある場合には、適切な措置を講じて、未然に防止するべきであ る。
これに対して、公衆衛生学の観点からは、 裁量労働制の運用について、以下の指摘がある。
・長時間労働や概日リズムの乱れ、心理的に仕事から距離を置けないこと、裁量のない 労働者への制度の適用、努力に見合わない 報酬や評価等が生じた場合には、健康上の リスクとなりやすい。
・使用者には、正確な労働時間の管理や裁量に見合うタスクの設定、適切な成果の評価 が求められるほか、健康・福祉確保措置と して、勤務間インターバル(企画業務型裁 量労働制指針等に基づき、終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を 確保することをいう。)、深夜労働(労働基 準法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させることをいう。)の回数を1か月について一定回数以内とすること、使用者が把握した労働時間が一定時間を超えた場合の制度適用解除、年次有給休暇の連続取得の促進等の予防的措置を講ずることが重要であり、さらに、時間外の連絡方法に関するルールの作成や仕事を与える管理監督者に対する心理的安全性に関する教育の実施、労働者に対する労働時間等の自己管理能力を醸成する教育の実施等も考えられる。
以上の声や指摘などを踏まえ、心身の健康維持と労働者の選択を前提に柔軟で多様な働き方を実現する観点から、厚生労働省は、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、裁量労働制の対象の在り方について労働政策審議会にお いて見直しの検討を開始し、結論を得次第、 必要な措置を講ずる。
厚労省準備資料には(略)のことは省かれた
しかし昨日(7月14日)開催された労働政策審議会(労政審)労働条件分科会のために厚生労働省が準備した資料には「(略)心身の健康維持と労働者の選択を前提に柔軟で多様な働き方を実現する観点か ら、厚生労働省は、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、裁量労働制の対象の在り方について労働政策審議会において見直しの検討を開始し、結論を得次第、必要な措置を講ずる」としかありません。
厚生労働省の資料には規制改革推進会議WGで(略)が裁量労働制の見直し(対象拡大)に向けて要望したことなど省略されています。
(略)の委員は裁量労働制について言及せず
再び昨日(7月14日)に東京新聞が配信したウェブ記事にもどると、そこには「報道では、制度適用者の過労死ラインを超える長時間労働や、それを過少申告する社内のシステムについて現役社員が証言した。(略)の委員はこの分科会にも使用者代表として名を連ね、議論を左右する存在だ」と書かれています。
また昨日(7月14日)に東京新聞が配信したウェブ記事には「制度の適用拡大を求める使用者側の意見に対し、(日本労働組合総連合会<連合>総合政策推進局総合政策推進局長)菅村委員は『制度のさらなる拡充は、不適切な運用や長時間労働を招きかねない』と批判。(略)の委員から、裁量労働制についての言及はなかった。経団連の鈴木重也委員は『裁量性を確保するため乱用防止策の具体的検討が必要』としつつ、労働時間の把握の規制強化については触れなかった。
今年(2026年)4月14日にオンライン開催された規制改革推進会議(第8回)働き方・人への投資ワーキング・グループの会合には日立製作所や経団連が資料を提出していましたが、北里大学医学部の堤明純教授も資料「裁量労働制における健康確保措置の在り方」と題した資料を提出しています。
堤教授の資料には「週55時間以上の労働は(週35~40時間労働を対照として)、多くの疾患のリスクを上昇させることが確認されている」と書かれています。
裁量労働制における健康確保措置の在り方(北里大学医学部 堤 明純)(PDFファイル)
連合ニュースが労働条件分科会の議論を報告
今日(2026年7月15日)の連合(日本労働組合総連合会)ニュース(労働条件分科会で、裁量労働制などの緩和不要と生活時間保障に向けたルール強化の必要性を改めて主張)には「7月14日、第210回労働政策審議会労働条件分科会が開催され、『日本成長戦略(案)』『骨太の方針2026(案)』などを踏まえて議論が行われました」とあり、規制改革実施計画のことは記載されていません。また東京新聞が報道した日立製作所のことについてもふれられていません。
(略)
裁量労働制について
今回も使用者側委員からは、裁量労働制は適正に運用されれば生産性向上や柔軟な働き方の実現につながる制度であり、濫用防止策とセットで見直すべきとの発言が繰り返されました。
これに対し、労働者側委員は、現場の実態として、裁量労働制は長時間労働になりがちであり、適切な裁量や処遇が確保できていないといった課題は、加盟組合へのヒアリングでも確認しており、長時間労働や健康被害を増やしかねないとして拡充や緩和に強く反対しました。
労働時間制度について
労働者側委員は、労働者の健康確保について明確なエビデンスが確立している、勤務間インターバル制度の導入義務化や長期の連続勤務規制の導入、「つながらない権利」の法制化などが必要と訴えました。あわせて、長時間労働の是正や、休みをとりやすい環境整備こそが生産性を高めることが明確になっていることも主張しました。
他方で、使用者側委員からは、時間外労働の月45時間以上年6回までの規制や変形労働時間制の緩和を求める意見がありました。これに対し労働側委員は、長時間労働の常態化や過労死等を招きかねない規制緩和はあってはならないと反論しました。
追記:労働条件分科会議事録を確認
2026年7月14日に開催された労働政策審議会(第210回)労働条件分科会の議事録が公開されましたので連合の菅村委員の発言を確認しました。
議事録によると、菅村委員は「(略)先日、裁量労働制を導入している大手企業において不適切な運用が見られるという報道がございましたが、個別の事案には立ち入りませんが、いずれの労働時間制度においても実労働時間の管理を徹底させることが不可欠であって、労働時間の適正把握を義務化する必要性が高いことを改めて認識したところでございます。(略)」と発言しています。
*本日のnote(ノート)記事に関連する記事はマガジン『裁量労働制の見直し(対象拡大)最新情報をお届け』に掲載しています。
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