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裁量労働制の対象拡大について労働政策審議会 労働条件分科会で労使が議論!

先月(2026年7月)14日に厚生労働大臣諮問機関の労働政策審議会(第210回)労働条件分科会が開催され、高市早苗内閣が推し進める「裁量労働制の見直し(対象拡大)」が約2時間、議論されました。


労働条件分科会 出席委員

労働政策審議会(第210回)労働条件分科会の議事録によると、出席委員は次のとおりです。

公益代表委員
川田委員、神吉委員、黒田委員、首藤委員、原委員、水島委員、山川委員

労働者代表委員
亀田委員、佐藤(好)委員、椎木委員、菅村委員、春川委員、古川委員、松田委員

使用者代表委員
加藤委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、田中委員、田上委員、鳥澤委員、福本委員

労働政策審議会 労働条件分科会 委員名簿(PDFファイル)

議題は(1)資金移動業者の口座への賃金支払制度について、(2)労働市場改革分科会等について(報告事項)。

労働市場改革分科会等について(報告事項)では日本成長戦略会議 労働市場改革分科会とりまとめ、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2026(案)、日本成長戦略(案)、規制改革実施計画(案)に記載された労働条件分科会にかかわる箇所、とくに裁量労働制の見直し(対象拡大)について議論されました。

裁量労働制「不適切運用」報道

議事録によると菅村委員(菅村裕子・日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長)はまず「日本成長戦略会議などにおいて、労働時間法制等の政策的対応は夏以降労政審で議論を行うと結論づけられましたが、裁量労働制などについて規制緩和を示唆するような内容が盛り込まれたことは、労側が繰り返し求めておりました三者構成原則の尊重という観点からすれば大きな問題があると考えております。本分科会での議論こそ尊重すべきであるということは改めて申し上げておきたいと考えております」と発言。

また「成長戦略の主眼とも言える多様な人材の労働参加を促進するためには、長時間労働に依存した働き方からの一日も早い脱却が必要であり、性別・年齢やライフステージなどにかかわらず、誰もが安心して働ける環境を整備することが重要だと考えております。その実現のためには、『働き方改革』の取組をより一層前進させることが必要でありまして、だからこそ、労側としては、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の義務化、『つながらない権利』の法制化などの検討に注力すべきであるということを繰り返し発言してきたところでございます」と発言。

そして菅村委員は「この間の議論を顧みますと、裁量労働制や変形労働時間制などに審議時間の大半を費やしていると思っておりまして、その他の論点がないがしろにされているのではないかと考えております。2017年の労使合意で確認した、『過労死ゼロ』、『多様な人材が活躍できる社会』の実現に向けた建設的かつ前向きな議論が滞っている現状には、強い問題意識を労側として持っているということを改めて申し上げておきたいと思います」と。

さらに「その上で、『日本成長戦略会議労働市場改革分科会とりまとめ』や、『日本成長戦略(案)』、『規制改革実施計画(案)』にも記載がありますが、改めて裁量労働制について意見を申し上げておきたいと思います。
先日、裁量労働制を導入している大手企業において不適切な運用が見られるという報道がございましたが、個別の事案には立ち入りませんが、いずれの労働時間制度においても実労働時間の管理を徹底させることが不可欠であって、労働時間の適正把握を義務化する必要性が高いことを改めて認識したところでございます」と意見。

・菅村委員
(略)裁量労働制は、長時間労働になりやすく、不適切な運用がなされている実態があるということを繰り返し申し上げておりますが、この間、連合として、裁量労働制を導入している加盟組合にヒアリングを実施し、現場実態の把握を行ってきたところです。

その中では、一定の労働時間を超えた場合の適用解除や勤務間インターバルのほか、事業場ごとの労使で綿密なモニタリングなどの法令や指針を上回る取組が数多く行われていることを確認した一方で、労使で厳格に運用していても長時間労働になりがち、裁量が確保できない状況に陥りやすい、適用にふさわしい処遇が確保しにくいなどの課題がヒアリングを通じて明らかになったと認識しております。

いずれも各業界の大手企業の労働組合ですけれども、支部との連携を含め、適正運用の維持・確保に心を砕き、苦労されているというのが実態だったと思っております。その業務に裁量があるのかどうかといった確認も含めて、現場にかなりの負荷がかかっているのではないかと受け止めました。

そうした中で、制度のさらなる拡充などを行えば、不適切な運用や、適用労働者の長時間労働、健康被害の増加を招きかねないものだと思っております。

したがって、裁量労働制については、拡充や緩和は行うべきではないですし、まだ施行されたばかりの2024年改正内容をはじめ、適正運用の徹底に取り組むべきであるということを改めて申し上げておきたいと思います。

労働条件分科会議事録

裁量労働制は適正なら「よい制度」

田中委員(田中輝器・日本通運株式会社人財戦略部専任部長)は「(労働市場改革)分科会の取りまとめには、柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制の見直しに向けた議論の必要性が記されています。その上で、裁量労働制に関しては、適正に運用されれば労働者にとってもよい制度であるという認識が示されましたので、この点を出発点として議論を進めていければよいと考えます」「導入している各社では、仕事の進め方を自分で決められるため、プライベートとのバランスが取りやすくなったという社員の声や、育児休業明けの社員からも、従来のように決められた時間に働くという働き方は不可能であり、育児を優先しながら限られた時間で効率的に働きたいという声であったり、仮に労働時間が短くなっても処遇を維持できる、また、労働時間の長さではなく成果で評価されるといったポジティブな意見があると聞いています」と発言。

また「分科会での取りまとめでは、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、裁量労働制の対象の在り方について見直しの検討を行う必要があるとされています。今後、濫用防止措置と対象の在り方の両面から議論していくことになると思いますが、その際、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえた検討を進めていくことが重要と考えます」と発言。

そして田中委員は「適正でない運用事例が一部に見られるということのみを理由に制度拡充に向けた議論そのものを行わないということではなく、必要な濫用防止策を考えつつ、労働者にとってメリットがある制度へ見直していけるよう多角的な議論がこの分科会においても行われればよいと考えます」と労働側委員の意見に反論。

長時間労働を助長する裁量労働制

春川委員(春川徹・情報産業労働組合連合会書記長)は「裁量労働制についてですが、使用者代表委員からは、これまでも『労働時間から生産性へのマインドチェンジするためにも裁量労働制の拡大が必要』といった旨の御発言があったかと思います。生産性の向上や成果に対する、労働者へのインセンティブについては、あくまでも人事評価や賃金制度で設計すべきものであろうと考えています。マインドチェンジといった情緒的なものを理由として、長時間労働を助長しかねない裁量労働制を拡大すべきではないと考えております」と発言。

また「例えば過半数労働組合がある企業では労使対等性が確保されているとして、手続上の要件と位置づけて裁量労働制の対象業務拡大を可能とすべきとの(使用側委員)御意見もあったと認識しています。集団的労使関係の担い手である労働組合は、当然、過半数労働組合になるべく各事業場において組織拡大の取組を展開しているところでありますが、過半数労働組合であっても、労使の対等性は確保・維持していくことが難しい面があるということも実態であります。そうした中で、例えば労使合意によって対象業務の拡大を認めてしまいますと、結果的に現場においては濫用を招くリスクが大きいと思います。労働基準法はあくまでも最低基準を定めた強行法規であることを踏まえれば、いずれのルールについても労働組合の有無で規制を変えるようなことがあってはならないと考えております」と意見。

なお春川委員は、つながらない権利に関して「ICTの進展により、心理的にも仕事から離れられないような課題に対処するための『つながらない権利』の法制化、このようなルールの強化こそが労働者のニーズが高いものと考えております」と発言。

・春川委員
(略)「働き方改革」の実効性向上の必要性について意見を申し上げます。本来、「働き方改革」は単に労働時間を短縮するだけではなく、業務の効率化や省力化などによって生産性の向上を図るものであったと理解しているところであります。

そうした中で、2020年度の内閣府「年次経済財政報告」の中では、「働き方改革」の雇用や生産性への影響について、有給休暇の取得を推進する企業においては、例えば離職率の低下や労働時間の短縮を伴って生産性が向上したといった分析結果も明らかになっております。また、その先行研究においては、長時間労働の是正などの健康経営を実施した場合、利益率が高まる傾向にあることも示されているところです。このような調査研究の結果からすれば、裁量労働制の拡充ではなく、長時間労働の是正やしっかりと休みが取れるような環境整備を進めていくことこそが生産性を高めることが明らかになっているということは改めて認識しておく必要があると思っています。

最後になりますけれども、労働者の健康確保と生活時間を保障していくという観点からすれば、労働からの解放規制の強化は欠かせないものと考えています。特に長期にわたっての連続勤務については、実態調査によれば、業種にはよりますが、1割弱の労働者が14日以上の連続勤務を経験している実態もあります。このような働き方は労働者の心身への影響が非常に大きく、ひいては過労死などを招きかねないと思っていますので、休日を含め、制限する連続勤務規制の導入が必要だと考えています。

勤務間インターバルの義務化の重要性は繰り返しませんが、ICTの進展により、心理的にも仕事から離れられないような課題に対処するための「つながらない権利」の法制化、このようなルールの強化こそが労働者のニーズが高いものと考えておりますので、改めて意見として申し上げておきます。

労働条件分科会議事録

裁量労働制は「生産性を高める」

加藤委員(加藤吏・トヨタ自動車株式会社人事部グループ長)は「日本成長戦略会議労働市場改革分科会の取りまとめでも御指摘がありましたとおり、裁量労働制というものは適正に運用されれば労働者にとってもよい制度であるという点は強く共感できるところでございます」と発言。

また「当社でも、何度か申し上げているのですけれども、業務の『やる気』によるモチベーション向上といったような制度に対する肯定的な意見というものも多く頂いているところでございます。したがって、裁量労働制というものを同様に適用するということは、働き手の生産性を高める要素となっていると考えますし、働き方の意識改革、業務遂行の質の向上につながっているのではないかと考えるところでございます」とも発言。

そして加藤委員は「従前より労働側の委員の方からは、裁量労働制の導入・拡充によって生産性向上ができたというエビデンスがないではないかというような指摘を頂いているのではないかと思います。生産性というものは、働き手のエンゲージメントの向上ですとか、優秀人材の採用・定着、働きやすい環境整備といった様々な要因が複合的に絡んで向上していくものではないかと考えております。したがって、裁量労働制のみの効果だけを切り取って評価したり分析するということは非常に難しい面があるのではないかと考えております」と労働者側委員意見に反論。

・加藤委員
(略)各社は労使での話合いをもって働き手のニーズを酌み取りながら、モチベーション、仕事の質を高めるといったようなことを行って、生産性の向上、それがひいては国内拠点を維持することや、事業の持続的発展につなげられていくように考えられる施策を行っている、いわゆる人への投資といったものを行っている実態があるのではないかと思っております。

裁量労働制の拡充の議論では、大前提として、制度の濫用防止、適正運用を促すために必要な仕組みをつくっていくということは必須であると考えております。

一方で、企業の実態、現場を見てみますと、やはり自律的かつ柔軟に働きたいというような働き手が多いということも事実ではないかと思います。そのような働き手のニーズに応えていくということも企業側としては一つの責務であると考えます。

労使合意の下で裁量労働制を法の趣旨に則って適切に運用して、適用対象者から高い満足度を得ているといったような企業の取組を参考にしながら、労使双方にとって望ましいと感じられる制度構築に向けた建設的な議論ができればと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

労働条件分科会議事録

非対象業務の混在は認めるべきではない

佐藤(好)委員(佐藤好一・全日本自動車産業労働組合総連合会副事務局長)は「労働者の裁量が認められない非対象業務の混在は、たとえ一部であっても実質的な裁量を失わせることになるため、認めるべきではないと考えております。前回、使用者側委員より、非対象業務に関して、『上司とのコミュニケーションを通じ、業務の内容や量を調整管理することも十分可能』である旨の発言があったと認識しております。しかし、これは、労使の力関係に差があることを踏まえて考える必要があります。会社が人事権を持ち、また、パワハラなどの問題も少なくない中、自分の業務に裁量がないと感じた労働者が業務指示を拒否することは不可能に近いと考えております」と意見。

また「この点、昨年度の都道府県労働局等に寄せられた、いじめ・嫌がらせやパワハラの相談件数が12万5,000件を超え、増加し続けている現実があるということを付け加えておきたいと思います」とも。

そして佐藤委員は「連合が行った裁量労働制導入組合へのヒアリングの中では、現行ルールの下で会社全体のほぼ全ての部署が適用対象となっている事例のほか、組合から改善を求めているものの、ルーチンワークが多いとか、他部署から短納期の依頼が多いといった、裁量が確保しにくい部署や業務にも裁量労働制が適用されているという実態が確認されました。また、裁量が確保されていないため、際限のない長時間労働が行われているという事案も見られました。このように労使で適正運用に継続的に取り組んでいる職場ですら、実際には課題が見られる中で、不適切な運用をさらに広げることになりかねない非対象業務の混在は断じて行うべきではないと考えます」と非対象業務の混在に関して発言。

裁量労働制の拡充は行うべきではない

椎木委員(椎木盛夫・JAM副書記長)は「裁量労働制につきまして、労働市場改革分科会の取りまとめでも、あくまでも『適正に運用されれば』との条件つきで、『よい制度』とされていると認識しています。連合のヒアリング調査では、加盟組合から裁量労働制は運用が難しいという声が多く寄せられています。『実際には業務量や労働時間の配分などの裁量が確保できない』、『一部では長時間労働が常態化している』、あるいは『裁量労働手当などが制度の適用に見合う処遇となっていない』といった声も寄せられております」と発言。

そして椎木委員は「2024年にルールが変わったばかりである中で、制度の拡充や緩和は行うべきではなく、現行のルールがしっかり適正に運用されているのかどうか、その実態をしっかりと確認することが必要であると考えます」と意見。

三者構成主義の重要性は使用側も同感

鈴木委員(鈴木重也・日本経済団体連合会労働法制本部長)は、まず「先ほど(労働側)菅村委員から三者構成主義の重要性についての御発言がありました。その点については使用者側としても同感であると改めて申し上げたいと思います」と発言。

そして鈴木委員は「裁量労働制以外の他の論点については、当分科会での議論が不十分で、ないがしろにされているとの御趣旨の発言があったかと思いますが、私の理解は、議論の回数や時間を考えても、裁量労働制以外の論点についても相当程度議論されていると思います」「裁量労働制の一部非対象業務に就く場合における対象業務の拡充について発言させていただきます。これまでも、それから本日、佐藤好一委員からも御指摘がありましたが、一部混在業務が入ることにより裁量がなくなるのではないかという御指摘もこれまでもいただいています」「裁量性の確保、これは裁量労働制の根幹をなす要件です。2019年の厚生労働省調査では約9割の労働者が、時間配分、業務遂行に裁量があると回答されていますが、一方で、一部に裁量がなく、濫用があるとの御指摘、これはしっかりと受け止める必要があると思っております」「対象業務の拡大を検討するに当たり、新しい実態調査の結果を踏まえつつ、裁量労働制の裁量性を確保するため、濫用防止措置の具体化の検討を行っていくことが必要だと考えております」と。

・鈴木委員
(略)裁量性の確保は、様々な角度からの議論があり得ると思いますが、例えば一定時間を超えて就労した方に対して適用を外すという仕組み、これは一義的には長時間労働を防止することでの有効な施策と考えますが、加えて、長時間労働になっていると裁量性が失われている状態にあると評価できると思いますので、一定時間を超える裁量労働制適用者を制度から外すという企業の工夫は、裁量性の確保という意味でも参考にすべきではないかと考えております。

それから、労使委員会等における裁量のある・なしを判断する場面で、過半数労働組合があると、そのチェック機能がより働くものだと考えております。本日も春川委員のほうから、労使対等性は容易に確保できないという御指摘もいただいていますが、労使対等性は、ある・なしではなく、やはり制度の導入の是非や対象の範囲について十分話し合いが行われ、また、制度導入後も、御苦労もあるとお話でしたが、適正な運用が行えるような様々な工夫を行いやすくなる、そのような相対的に捉えることは可能ではないかと考えております。いずれにしても、これから行われる厚生労働省の実態調査において、例えば、過半数労働組合のある・なしが、労使委員会の実効性などと関係性があるのかどうかといった分析も踏まえながら、さらに議論を進めたいと思っております。

それから、一定の範囲で非対象業務の従事を企画業務型裁量労働制等において認める場合、同意や同意撤回が法律の趣旨どおりに可能となっているかどうか、改正内容がしっかりと機能しているかとの御指摘が労働側委員からされています。大変重要な御指摘だと思っております。

多少の幅を持って見なければいけませんが、我々の調査によると、企業で1人でも同意しなかった、あるいはその後、同意を撤回したという方がいる企業は約4割ということです。法の趣旨どおりに、同意しやすい、同意撤回しやすいという環境づくりを法的に担保すること自体は難しいテーマだと思いますが、そのような工夫を探っていくことは必要ではないかと思っております。

当然、適正な運用をしている企業の多くでは、制度適用される候補者やその上長の管理職向けに丁寧に社内手引書を作成したり、社内教育・研修にも力を入れていると承知しており、そうした企業の好事例の展開を図っていくということも併せて大切なことではないかと思っております。

労働条件分科会議事録

「働き方改革」の実現にはほど遠い

松田委員(松田惣佑・全国生命保険労働組合連合会中央書記長)は「『働き方改革』の見直しの趣旨は、2017年の労使合意で確認した『過労死等ゼロ』をはじめ、労働時間縮減による働く者の健康確保とともに、長時間労働に依存した企業文化の見直しと生産性の向上が実現できたか否かを検証し、そのさらなる推進のための方策を検討することであると認識しております。客観的なデータを見ますと、過労死などはなくなっていないどころか、脳・心臓疾患及び精神障害の労災請求件数は増加しているのが実情でございます。そうしたことからも、『働き方改革』の実現にはほど遠い状況であると言わざるを得ないと考えております。そのような状況にもかかわらず、この間、使(使用)側から裁量労働制をはじめ、規制緩和を求める意見が相次いでいることは、労(労働)側としては強い違和感を禁じ得ません」と発言。

また「(働き方改革)総点検の調査結果でも、9割が『労働時間を減らしたい』、『このままでよい』と回答しており、労働者のほとんどが緩和を望んでいないことは明らかです。その上で、残る1割の『労働時間を増やしたい』という者についても、大多数が『賃金を増やしたいから』としており、何時間働いても賃金が増えない裁量労働制のニーズは見られないため、その拡充や緩和は行うべきではないと考えております」と。

そして松田委員は「『働き方改革』の実効性を高めるためには、上限規制の段階的な強化、連続勤務規制、勤務間インターバル制度の義務化、『つながらない権利』の法制化こそ進めるべきです。前回も労側から指摘させていただいたとおり、これらの方策につきましては、健康確保の実効性を高めるといった多くのエビデンスが蓄積されております。過労死等ゼロに向けて早急に法改正に取り組むべきであるということは再度強調させていただきます」「政府全体としましてもEBPMを推進していることからすれば、厚労省においても統計法に基づいた労働時間制度等の実態調査のほか、労働者健康安全機構の過労死等防止調査研究センターの研究成果などを踏まえた政策立案が重要であると考えております」「今後の分科会での検討に当たっては、各論点に関わる過労死等防止の調査・研究成果についても示していただきたいと考えております」と。

持続的な賃上げの取組こそ重要

菅村委員(菅村裕子・日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長)は「先ほど『働き方改革』によって収入が減ったとの御発言もございましたけれども、そもそも残業時間に依存した賃金こそが問題であると思っておりまして、残業がなくても生計が維持できる賃金確保のための賃金体系の見直しや持続的な賃上げの取組こそが重要ではないかと考えております」と発言。

・菅村委員
(略)上限規制について、他律的な要因で月45時間・年6回を超える実態があることを念頭に柔軟化すべきという御発言もございましたが、先ほど亀田委員から発言があったとおり、社会全体での適正な取引を確保する観点から事前の調整など様々な工夫が可能ではないのかと思っておりまして、それを労働者の労働時間で調整することはいかがなものかと思っております。労働者の労働時間をバッファーとすべきではないと思っております。

また、裁量労働制につきまして、「育児支援の観点から効果的である」、「短い時間で働いても処遇は確保される」といった御発言もございましたが、裁量労働制は育児支援の制度ではございませんし、短い時間で働いた場合の処遇確保も、労働時間制度にかかわらず処遇を上げればいいだけではないかと思っております。

また、成果で評価されることについても、それは必ずしも裁量労働制自体とは関係ないのではないかと思っておりますし、「自律的に柔軟性を持って働きたい」というニーズについても、仕事の与え方、マネジメントの問題であって、裁量労働制を導入しなければできないものなのかという点には疑問があるということを改めて申し上げておきたいと思います。

「裁量労働制が生産性向上に資する効果については、複合的なものであって、制度適用のみを取り出して効果を評価することは難しい」との御発言もございましたけれども、そうであるならば、なぜ裁量労働制を導入しなければ生産性が上がらないとの主張をされているのか疑問があるということを申し上げておきます。

その上で、「規制改革実施計画(案)」のオンラインによる労働条件明示の方法の見直しについて1点発言しておきたいと思います。

資料№2-1の16ページを見ますと「結論を得次第、速やかに必要な措置を講ずる」とされておりますけれども、他の項目と異なりまして「労働政策審議会において」という文言はございません。そもそも労働条件の明示は、使用者による一方的な決定や変更を防いで紛争を未然に回避する意味で働く者にとって非常に重要であると思っております。その見直しについては、三者構成ではない規制改革推進会議で議論して方向づけられることについて違和感を持っているということを申し上げておきます。

その上で、使側委員の方からも御発言がありましたけれども、情報通信技術が発達している中において、デジタル化を推進しておりますので、オンラインによる明示を促進することは必要であると思っております。ただ、労働条件明示の義務違反率が近年も1割前後で推移しているということ、高年齢者の就業率が高まっている中でもスマートフォンの端末の保有率が低いこともございますし、工場などでは労働者ごとにパソコンが貸与されていないという職場も少なくないといった実態を踏まえまして、業種や職種、年齢にかかわらず確実な明示が保障されることを担保することが必要であるということは付言しておきます。

労働条件分科会議事録

フレックスタイム制にはない仕組み

鈴木委員(鈴木重也・日本経済団体連合会労働法制本部長)は「裁量労働制の成果に応じた処遇は裁量労働制を入れなくても可能ではないかという御指摘がこれまでもあったと思います。仕事の進め方と仕事のやり方、その双方に裁量性を与えて自律的に働くということは、フレックスタイム制にはない仕組みです。自律的に働くことと成果に応じて処遇することは大変親和的ですので、処遇を受ける側の働き手にとっても制度導入は納得性を高める面があると感じております」と労働側の菅村委員意見に反論。

・鈴木委員
(略)労働基準法上は、みなし労働時間制でない場合には、御案内のとおり、結果的に時間に比例した処遇を強制するような側面があるので、成果に応じた処遇ということの徹底は難しいところがございます。

賃金を上げれば良いというご発言もありました。直近のデータで、今年の春季労使交渉で5%を超える賃金引上げが実現しました。これは各社の労使の尽力によるところが大きいと思いますが、全社的な処遇の見直しが行われ、また、賃金原資である労働生産性を上げながらやっていく必要がある中で、裁量労働制適用労働者だけ、さらに成果反映のための処遇原資を確保する、報酬を引上げることが難しい面もある点はぜひ御理解いただきたいと思いますし、処遇については、別途、適正な処遇の確保が大変重要である点は我々もしっかりと受け止めているつもりです。適正な処遇についてどのようなことが考えられるのかについて、今後、さらに議論を深めていきたいと思っています。

それから、生産性の向上が複合的というところについてですが、労働者の委員からも、裁量労働制は運用する上で負担が大きいこと、手間もかかるという御指摘があったかと思います。それでもなお、労使協定で、おそらく1年で締結している企業が多いと想像しますが、課題に工夫し対応しながら運用し続けておられる企業が多いと我々は理解しております。つまり、各企業あるいは各事業場の労使の中で、全体としてよい制度だという評価をされた上で運用され、当然、濫用についてはチェックしながら工夫されていると思いますので、制度の話と運用の話は一旦切り離した議論が重要ではないかと思った次第でございます。

労働条件分科会議事録

以上、厚生労働省が公開したばかりの「労働政策審議会(第210回)労働条件分科会」議事録より抜粋いたしました。

*本日のnote(ノート)記事に関連する記事はマガジン『裁量労働制(対象拡大)議論まとめ』に掲載しています。

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