御徒町エレジー【ひとりあじと娘々のスタラー】
ある土曜日、俺は浦和駅前に立っていた。
恩人のTAKA氏に飲みに誘われたからだ。
浦和飲みのスタートは必ずここから始まる。
立ち飲み「ひとりあじ」だ。
名物社長とのやり取りを過去にYouTubeで公開しているので興味ある方はご覧ください↓
11:00オープンのはずなのに、10:30に店前で仁王立ちで佇む名物社長。
「あ、どうぞ!いらっしゃーい!」
フライングオープンすぎるだろっw

そして11:00ジャストにTAKA氏が到着。
まずは、瓶ビールで乾杯をする。

開口一番、「お前、太ったか?」と…
実家の母親と同じセリフを吐くTAKA氏。
そして、相変わらず、下卑な会話で盛り上がり空になったキンミヤのボトル(六本目)を入れ、社長に挨拶をして退店。

今回のメインは北浦和の伝説の町中華「娘々」に行く事なのだが、ランチタイムど真ん中に行くと当然並ぶので、もう一軒挟もうという事になり、向かった先がこちら。

こちらの「朝挽きレバテキ」が絶品なのだ。
焼き石で、レバーで炙って食べるのだが、これが超絶美味い。

レモンサワーを飲みながら、浦和出身のTAKA氏に「娘々」の思い出を聞く。
部活帰りに食べた名物のスタミナラーメン、略して「スタラー」は当時280円だったそうだ。
「あんなモン、並んで食うもんじゃねぇ!」
そう言いつつも、俺が食いたいと言ったら、仕方ねぇなと連れてってくれるナイスガイ。
現在、原材料高騰で価格は800円らしい。
そもそもなぜ「娘々」なのかと言うと、YouTubeで動画を観た事がきっかけだ。
「娘々」には、なかなかのドラマがある。
後継者不在で存続の危機に陥った「娘々」を、「漫々亭」の丹下マスターが店を救ったのだ。
ただ、マスターは「漫々亭」に戻らなければならず、その後の運営を娘の麻衣さんが継ぐ事になったらしい。
現在はどうなったのか?
ぜひ熱が冷めない内に行ってみたかった。
事前に、AIに作り方を聞いて、自ら「スタカレー」も作ってみた。
味はまずまずだったが、餡の色味が茶色が濃く赤味が足りない。

多分、味は大きく変わらないだろう。
けれど、その背景にある人間ドラマが最高のスパイスとして味わいを増すに違いない。
…と、俺が熱く語る隣で、昔は280円だったとまだボヤくTAKA氏をシカトし、レモンサワーを飲み干す。

2軒目を出て、歩いて北浦和へ向かう。
長らく「娘々」の焼き場にいた大溝さんという方がお店に残ってくれているらしく、その方の作る炒飯もぜひ食べてみたかった。
そして、ほぼ粉になるまで脱水を繰り返したキャベツを使った餡と極限まで薄くした皮で包まれた溶ける餃子。
これはマストで注文である。
そして、14:00。
「娘々」北浦和店へ到着。

並びはニ組だけだ。

店主の麻衣さんが「14:30閉店だけど、大丈夫ですかぁ?」とヒョッコリ顔を出す。
ものすげえ美人である、YouTubeで観たまんまだ。
入り口の食券機で、選ぼうと思ったが先に席を案内される。
「お席でオーダー伺いますぅ。」

厨房を見ると、麻衣さんとレジェンド大溝さんがいらっしゃる!
ふいに口からこぼれる言葉…
「チャ、チャーハン…」
すかさずTAKA氏がさえぎる。
「瓶ビールと、スタラー二つと餃子一つ!」
アアアァァァーーーーーッ!
何て事しやがる、TAKA!
大溝さんが!大溝さんがいるんだぞ!
すかさず口を挟むTAKA氏。
「ここに来てスタラー食べないは愚の骨頂!」
グッ… グウゥゥ…
確かにTAKA氏の言う通りだ、場所も覚えたし次は一人で食いに来ればいい話だ。
トオォォォーン!餃子が来た!

どれどれ…
ヒョイッ、ベチャッ、ボトボト。。。
TAKAがフライングして先に餃子をつまむ。
皮が破れて、小皿に餡がこぼれ出す。
「何だ?ユルいな、この餃子!」
違う!皮が薄いんや!さっき話したやろ!
心の中で絶叫したが、この男に何を言っても聞いちゃいないだろう。
どれどれ、俺もひと口。
うん、うん、確かに口当たりが良く、柔らかい。
だが、俺の苦手な八角の味がする、クセの強い味だ。
YouTubeでも五香粉(ウーシャンフェン)を大量に餡に混ぜていた。
まあ、食べ慣れたら、これはこれでアリなのかもしれない。
続いて到着、スタミナラーメン!

この色味は絶対に間違いない、なぜならオレはスタカレーを作った男だから。
そして、すんげぇいい匂いがする。
当たり前だが、ちゃんとスープをとっているのだ。
まずはスープをひと口啜ってみる。
ウ、ウ、ウマァァァァァァァ〜!!
素人が作ったのとは訳が違う、味はそんなに変わらないだろうと考えていた、浅はかな己に一人バックドロップを喰らわせたい。
醤油清湯にスタミナ餡が溶け込んで、絶妙なトロミとピリ辛が食欲を爆発させるのだ。

ズボボボボッ!ブボッ!
ビョルルルル!ビョルン!
お互いに卑猥なサウンドを鳴らしながら、夢中で麺を啜る。
赤星の中瓶はすでに空だ。
TAKA氏がハイボールを二つオーダー。
もうラストオーダーを過ぎてるが、「コレで最後、最後!」と無理やりねじ込んでいく。
濃いめのハイボールと甘辛く熱々のスタラーがめちゃくちゃ合う。
すでに口の中は火傷でベロンベロンだ。
あれだけ文句を言っていた隣のTAKA氏の様子を見る。

そして、すでに14:30を過ぎた頃。
「ゴメン!炒飯ちょうだい?」
ダメに決まってる、案の定、厨房の麻衣さんに思い切り断られるTAKA。
それにしても、美しいルックスとは裏腹に、店主の麻衣さんは強かった。
我々の隣に座っていた、ハゲたオッさんが、「その餃子オレのじゃねえ?」と先に頼んだ餃子を横取りしようとしていた時も、「オメェのはメインと一緒に持ってくから、大人しくしとけ!」 ◀︎実際には言ってないが、ニュアンス的にはこんな感じ
「ごっそさぁぁぁん!」
元々長居するタイプの店ではないからサッと頼んで、サッと食べて出るのが正解だ。
なので、14:00入店は神のタイミングだったのかもしれない。
ベロベロになったベロで、唇の周りのスタミナ餡の思い出を舐め回しながら思う。
父の想いを受け継いだ娘が仕切る町中華。
これぞ、まさに「娘々」ではないかと。
そして、翌日。
昨日のスタラーを思い出しながら、再び作ったスタミナ餡(ナス入り)がこれだ。

やはり、あの味、トロミ、色味は再現出来ない。
今度は、漫々亭にも行ってみたい。
あの強面のマスターに「馬鹿野郎!」と叱られてみたい。
当然、叱られるのは俺ではない。
TAKA氏が叱られるのを眺めながら食べるチャオ麺はさぞかし絶品だろう。
次回へと続く
